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第五話 しようきんし

(作者註:あくまでも架空のお話です。実在するあんな国やこんな国とは、一切関係ありません)

 それは、となりの大国の一方的な通告から始まった。

「漢字は我が国固有の文化遺産であるアル。しかるに、貴国は我が国に無断でこれを使用しているアル。これは文化の略奪りゃくだつに他ならないアル。貴国はただちに漢字の使用をやめるか、しからずんば、漢字の使用料を支払うべきであるアル」

 無論、政府は不当な要求であるとしてこれを拒絶した。

 すると、予想どおり、隣の大国は貿易を制限したり、大使館のまわりで大規模なデモを行ったりと、様々な圧力をかけてきた。

 政府は大きな海の向こう側の大国に仲裁を頼んだが、集団的自衛権の適用外であると断られた。

 一方、国内ではこれを機に、なるべく漢字を使わないようにしようという運動が巻き起こった。かねてから漢字制限を主張していた一部の国語学者たちは、もろ手を挙げてこの運動を歓迎した。その結果、新聞の記事は次のようになってしまった。

《さんじゅうにちみめい、ちゅうおうくにちょうめでおきたかさいは、じゅうきょごむねをぜんしょうし、げんざいなおえんしょうちゅう》

《さくやのきょじんたいはんしんは、ぎゃくてんさよならまんるいほんるいだで、きょじんぐんしょうり》

《おおてぎんこうにたいし、ろうどうきじゅんかんとくしょより、ふばらいざんぎょうかいぜんめいれいだされる》

 新聞を読んで、頭痛やめまいを起こす者が続出した。

 もちろん、新聞以外の出版物も徐々に漢字不使用のものが増えてきた。週刊誌などは、おろかにもカタカナさえ使用しなくなった。

《すくーぷ、あのおおものえんかかしゅとあいどるぐるーぷせんたーがしんみつこうさい、か》

 政府としても、これ以上国内が混乱するのを放置するわけにもいかず、隣の大国と妥協点を探る交渉を繰り返した。その結果、巨額の使用料を毎年支払うことで、なんとか折り合いがついた。

 政府も国民も安堵あんどに胸をなでおろしていたとき、今度は南方の大国から通告が来た。

「ナマステ。数字のゼロは我が民族固有の文化だヨ。よって、貴国はゼロの使用料を支払うべきだヨ」

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