詳細事項からの悲劇
投稿が上手くできない!なぜだ。
橙色の照明に照らされた店内、静まり返ったこの場に人影が3人。いよいよもってこの国に起きたことの大まかな事が明らかになる。ギリアムが、ごほんと一度咳払いをした。
ギリアムが人差し指と親指で自身のごつい顎を挟むような動作をし『アンネルの大異変』の話が再び始まった。
「先ほどヨルンが言った通り病院から異変が起きた。朝の7時過ぎた頃だったな。俺は自宅のマンションで出勤準備をテレビ見ながらやっていたんだ。あそこのお天気アナが可愛いんだよ。そこでだ、意味不明なテロップが流れたんだ。『国民の皆様、大至急身の安全を確保できる所へ避難してください。』とかいう趣旨のテロップがな。全く意味が分からなかったのだが。そうこう考えてるとテレビのスタジオも騒然となってな、かわいいお天気アナが退場して、ベテランニュースキャスターっぽいのが出てきたわけだ。そこから緊急ニュースへと切り替わったんだ。『アンネル大学病院で謎の爆発事故』というワードを耳にしたのだが、ここから1キロもない距離で爆発音が聞こえないはずがないと思い。ベランダから外を見てみたんだ。因みに俺のマンションは最上階で遠くがよく見えて景色が奇麗なんだぜ」
真面目な顔から腑抜け顔に。忙しなく表情を変える。ギリアムの言っている事は理解できたのだが、話が長い上に余分なところが大量にある気がする。しかし、テレビ局の混乱具合を鑑みると自然災害とかの緊急ニュースみたいなものだろうか?いきなり病院が大爆発したら事故とかテロそういうのを疑うだろうし、完全に予想であるが、都市の発展具合を見るにそういうテロリスト関係は見受けられそうになさそうだ。真っ先に事故を予想するであろう事から爆発事故と言う事は正しいだろう。
割とどうでもいい思考が混じっている気がする。僕も彼に感化されてしまったのだろうか。
「ギリアムのおっさんはな、話が長い上に自慢話とどうでもいい話が絡むからめんどくせぇんだ」
僕の心の声を代弁をしたような声がした。しかしヨルンよ、君の話は短すぎて伝わらないのだよ。
「誰がおっさんだ!まだ俺は三十二歳だ!十七歳の若造め!悪い口はそれか?缶詰ぶち込んで黙らせてやろうか?」
「ギリアム、まだ説明の途中だろう?この子を待たせるのはどうかと思うがな」
いつの間にか片手に片手に缶詰を持ち、鬼の形相になったギリアムに臆することもなく流した。常人なら動けない程の殺気を発していたギリアムであったが、忌々しそうにヨルンを睨み、僕へと視線を戻した。ちょっといろいろ漏れそうになった。
「後で覚えておけよ…。で、だ。お?なんでじょ…ユキさんが固まっているんだ?」
「…!?…何でもありません。お話を続けてもらえませんでしょうか?」
「んん?まぁいい、でだ、マンションの正面に病院があるんだが、カーテンと窓を開けてベランダに出たんだ。そしたら病院から真っ赤な火柱が上がってやがるんだよ。そりゃもう完全に柱だよ。音も無く天高く柱が聳えてるんだよ。正直あれが大爆発なんて言えるかどうかわからないだろうがな。」
なるべく自然な動きで尚且つ二人に感づかれまい様にと、軽くお股を確認する。
あ、やっぱり……通り道が短くなってる分ちょっと…うん。黙っておこう。悲鳴上げなかっただけでも成長したきがするよ…あの顔が超怖い…。
さて火柱か、僕が出てきたところなのかは知らないが場所が場所だ。自分が出てきたかもしれない場所なのだ。『僕が出てきたらそうなりました☆』なんて言ってみたら殺されるだろう。増してやこの状況、召還された代償という事も考えられる。真実味のある件なので言わない。不確定要素ともなっているので、それは自分にとっては不利益となる。なので言えない。
「野次馬魂?というのかね。外に飛び出し病院付近まで走っていったさ。いざ到着してみると俺と同じように野次馬がたくさんいたさ。そこに偶然隣の部屋ばあさんが犬と散歩しててな。話を聞いたら爆発音なんて聞いてないって話だったんだ。歳も歳だしボケたのかなと思ったんだが。その後…その後に地獄をみたんだ。なんというかな、最悪だった。」
彼の筋肉の塊のような体が一瞬ぶるりと震えたような気がした。地獄と言われて思い出すことは最初に見たあの犬とトカゲの事だが、それは事が起きて時間が経過した後の事だ。大混乱の幕開きは想像を絶するであろう事は軽く予想できる。
「隣人のばあさんが自分の飼い犬に食われるところをな。細かい所は省くが首と中身ぶちまけてたな。」
うわぁ、省いてないよ!詳細すぎるぐらい直接的に具体的な死因ではないですか。ううむ、なかなかにヘビーな話である。
「とりあえずこれが第一異変、突発的に動物達が狂暴化、異質化する。異質化した奴らがトカゲやら犬やら鳥やら…大量過ぎてよくわからない。少なくとも人間は新鮮な肉としか見えてない様子であったぞ。半日は怒声やら悲鳴が町中に響いていたんだが…ネットニュースを見た限り2時間あまりで都市国家としての機能は完全停止したらしい。警察・軍隊もこの平和な日常で鈍っていたんだろうな」
確かに警察犬もといさっきのでかい犬が現れたら国家の犬さんもイチコロだろう。
それにしても第一異変で動物ときたら第二は…
「次に第二異変だ。3日から6日にかけてじっくりと変質していったよ。見てのとおり俺たちの体の事だ。俺たちは運がよかったんだ。異質化先が人型であったことだな。人型になれなかった奴らは知性が残っていればよかったものの、完全に野生化して暴れまわっているのが現状だ。元に戻す方法は今のところ不明だ。」
そうか、2回目の爆発みたいなものはなかったようだな。と言う事は僕は2カ月もあそこで寝ていたのか。俄に信じたくない話である。
「第三異変だ。こいつが今確認されているもので最後だ。それは国単位での変質化だ。」
まだ続くのか、国単位?どういうことだ。生物間でしか変質は起こっていないようだが。質問するには自分の知識が少なすぎる。おとなしく聞き手に徹することにする。
「国の一部に異空間が出来た。現代風に言うとダンジョンとでもいうのかね?そういう場所が今確認しているだけで40か所ある。もちろんこの町にもある。」
あー、またファンタジーな展開になってきたよ。この町にもあるって物騒じゃないか?ダンジョンっと一言聞くと魔物の巣窟となっているっというのが僕の考えだ。そのダンジョンから魔物が出てくるのではないのか?これはゲームやらマンガの知識だから間違っている可能性が高いのであるのだが。
「だが、ネットワーク情報網が生きていた時の話だからな。今は管理するものが居なくてどうなっているかは不明なのだ。ユキさんも若そうだからネットは利用していたと思うのだが?」
「ネットの無い環境に私は居たので存じません。」
僕はなにも間違ったことは言っていない。この世界のネットなんて知らないし、触ったこともない。
だからそんな『田舎臭いなこいつ』的な目で見ないでくれ。仮に僕がホントに超箱入り娘だったらどうするんだ!ものすごく失礼な感じがするのだが、弁解が必要のようだ。
「私の家ではネットという野蛮な物はお父様が許さなかったのです。」
思いっきり嘘なんだけどね。
ヨルンはどこが野蛮なのかわかってい居ない様子であったが、ギリアムの方は思い当たる節があるようで納得したようだ。この世界のネットという物にも真偽不明の情報、誹謗中傷など、一部の人間からしたら野蛮だと思われる書き込みがあるようだ。
「ところで、ダンジョンがこの町にもあると言っていましたが、ダンジョンから魔物があふれるようなことは無いのですか?」
「今のところその様子は見られない。ダンジョン入り口を見張っているものが居るのだが縦横5mの大きな両開き扉が開きっぱなしで何も出てこないという報告が上がっている。さらに付け加えるに中に入ると薄暗い洞窟だと聞いた。何もない空間から化物がわいてくるという情報と外に出ると化物は追ってこないという話らしい。俺の知っていることはこのぐらいだな。」
ふぅ、と一息をついてるところ不意に誰かのお腹が鳴った。そう、僕のお腹だ。空気を呼んでくれよ…。
「そういえば寝てばかりでユキさんは何も食べていなかったな。」
お腹が鳴ったことを笑うこともせず冷静にヨルンが指摘した。頭がすこし足りないと思っていたのだが、そういうところで笑ったりしないところは好感が持てる。
「どれ、俺が何か作るかね。任せろ、この店の店主だったんだ。保存食と日持ちする物しか無いのだが調味料はしっかりあるから安心してくれ。」
ギリアムにありがとうと一言伝えると厨房へと消えた。ヨルンと二人きりだ。何か気まずい。
「そういえばなんであんなところに居たんだ?外は危ないって知らなかったのか?」
「あの病院でずっと寝ていたものですから…。目が覚めたらあんなことになっていました。」
ヨルンが目を丸くして驚いている。大体ホントの事しか言ってないよ?たぶん。
…そんなことより男物でいいから下着がほしい、やっぱりちょっと気になる。そんな状況ではないとわかっているのだけれど少し不快感があるのだ。
「ヨルンさん、お願いがあるのですが…」
僕は使える武器は何でも使うぞ。相手が男でもな。
上目遣いで申し訳なさそうにヨルンにお願いしてみる。
「!?な、なんですか?」
いきなり敬語になってるね。顔赤いよ~面白いね!っじゃない。
「お料理が完成するまで多少時間があると思いますので、その前にお風呂に入りたいのですが、浴場はこのお店にないですよね…?」
「一応この店は泊まり込みも出来るようにスタッフ用のシャワー室がある。それより、その…替えはないのだろう?」
多少言い淀みながら言葉をひねり出したヨルンであったが、僕は心は男だ淀む必要ない。むしろ期待と不安と超期待が沸いているのはこの僕である事が判るまい。ぬふふ
「男性用の下着でも構いませんので、お貸しいただけますか?」
ヨルンの体がぴくりと動いた。いい反応。顔が赤いぞ、さっきよりもかわいいねぇ。…?アレ?かわいい?
普段は同性に向かってそんな感情を抱かないのに。あれ?なんか僕やばい?
違う方向で混乱してしまったユキであった。
―――――— ヨルン視点 —————
「男性用の下着でも構いませんので、お貸しいただけますか?」
確かにユキさんは男のモノを身に着けている。何も抵抗はないのであろう。
しかし、どうだか。知り合って間もない相手に下着貸せなんぞ。この子大丈夫なのか?
それも自分の言ったことに恥ずかしかったのかして混乱してるよ。見た目は可愛いのに何かが変だな。
……とりあえず、下着の予備はある。
「えっと、下着の予備はある事はあるのだが、それは俺のなんだが平気なのか?」
「あっ…えっと…へ、平気です。にゃにも問題はないですよ?」
平気じゃなさそうだが、本人が問題ないと言っているので大丈夫だろう。
む、立ち上がるのか。さっきまで足元が覚束ない様子だったのだがだ丈夫だろうか?
「大丈夫か?背中使うか?」
少し過保護化もしれないがここで怪我でもしたらおっさんに怒られる。
しかし、彼女は慌てて立ち上がり何かを隠すように下半身を隠した。
なぜか悲しい気持ちもするが…まぁ、危ない所なんてこの店は無いわけだから壁伝えで歩けば何も問題は無いはずだ。
「ちょっとバスタオルと下着持ってくるよ。」
「あっ、出来れば…ズボンもお願いしていいですか…?」
下着に関してはサイズフリーの物で何とか彼女でも穿けるであろう。
だがズボンも在ると言えば在るのであるが、この店の服である。男性物なのは別に問題はないだろうが。体格差が有るものだ。前の体形の物でもサイズが普通よりも一回り大きい。太っていたわけでもないのだがガタイが良い方だったのだ。ダボダボの服を着せる趣味は俺にはない。
なぜその服を着ていないのかと言うと、自分の体が巨大化したからだ。
そう、その服がとても窮屈なのだ。自分でもわかるほどのギリギリ感で少し筋肉を隆起させたらはじけ飛びそうなのだ。
唯一着れた物が自室にあったサイズが大きすぎて着れなかったスーツである。服のサイズはネット通販ではわからないものだと痛感したものだ。安いからと言うのは絶対ダメである。
話がそれてしまったが制服は女性ものが在った。小中大揃ておりスカートにフリルが付いていて、俗に言うメイド服に近い物を感じる。そちらの方が彼女には合うはずである。決して見たいわけではない。
「ズボンは無いが、女性スタッフ用の一式が倉庫に在った気がするからシャワー浴びている間に脱衣室に掛けておく」
「うえっ!?あ、はい、ありがとう…ございます…」
とても残念そうな顔をしているな、そんなに男装が好きなのか?
それにしても、なんだろう何かがかみ合わないのだ。
外見は美少女という言葉をそのままにした外見、ミディアムロングの外に軽く跳ねている艶のある黒髪、きめの細かい傷一つない白い肌、血のように赤い虹彩を持つ大きい目。
尻尾と耳といい漫画から飛び出してきたかのような出来具合だ。不謹慎かもしれないが、見てくれに関しては彼女が当たりクジを引いたのではないだろうか?
しかし、身長はどうにも残念な感じであるがな。身長は自動販売機の一番上がギリギリ届くかどうかでありムネはたい…そんなことばかり考えているから俺はダメなんだな…。
「何か今悪いことを考えていませんでした?」
「…!?大丈夫だ。それよりもうすぐシャワー室だ後15分ぐらいで出来ると思うからさっさと行きなよ」
半眼の上目遣いで彼女は睨んできた。身長差がある為上目遣いなのは仕方がないことなのだ。
俺がスケベな顔をしていたのかと思い自分の頬を両の手で叩いて、それ以上の言及を避けるためにもシャワー室へと促した。
彼女は怪訝そうな顔をしながらも慎重な足取りでドアノブへ手をかけて脱衣所へと入っていった。
心が読めるのか?そういう種族なのか?あの上目遣いなかなかの破壊力だ。身長が高くて助かったって初めて思ったね。割と本気でな。
結城もといユキちゃんは自分の姿をしっかり見ていません。
ので、無意識に男性を魅了していきます。
魔法?まだ当分先ですの。