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異世界詐欺師のなんちゃって経営術【SS置き場】  作者: 宮地拓海


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【書籍二巻購入特典風SS】お揃いの制服~ジネットと二人、昼下がりの採寸~

「ヤシロさん。少しお体を貸していただけませんか?」

 ある晴れた昼下がり。相も変わらず人のいない陽だまり亭で、ジネットがそんなことを言ってきた。手には、細長い紐が握られている。

「…………エッチ」

「ふなっ!? そ、そういう意味合いではないですよ!?」

「なら、ジネット。少しの間おっぱいを貸してくれ」

「懺悔してください!」

「ほら見ろ、そういう意味合いに受け取られるだろう、こういう言い方をすると」

「ぶ、部位を限定するからですよっ」

 握った細い紐をぐにぐにと曲げ伸ばしして、頬をぷっくり膨らませて抗議してくる。

 まぁ、話くらいは聞いてやるか。

「体を貸すってのは、肉体労働か?」

「いえ、サイズを測らせてほしいんです」

「…………エッチ」

「で、ですからっ、そういう意味ではないですってば!」

「よし、ジネット! サイズを測らせてくれ!」

「懺悔してください!」

 なんだよもう。自分も同じこと言ってるくせにさぁ……

 ぷりぷりと怒るジネットだが、こいつの怒りは紅茶に落とした砂糖のようにあっという間に融解して、二秒も持続しないのだ。

 そもそも、怒りという感情があるのかすら疑わしい。

 すぐに復活したにこにこ顔が俺を見て、遠足前の小学生のようにきらきらと輝きを放ち始める。

「ヤシロさんのお洋服を作りたいんです」

「…………エッチ」

「そんな服じゃないですっ!」

 しかし、逆の立場に立って考えてみれば……俺がジネットに服を作るとしたら、九分九厘卑猥な目的でデザインするからなぁ。

「弄ってみたい布でも倉庫から出てきたのか?」

「いえ、そうではなくて。まぁ……趣味という部分も多分に含んではいますけれど」

 その部分は否定せず、ちょっと照れ笑いを浮かべて誤魔化す。ジネットは裁縫が好きなのだ。特に、パンツの改造が。

「俺、フリルのパンツを穿く趣味はないぞ?」

「パン……し、下着じゃないです!」

 パンツと言うのが恥ずかしかったらしく、慌てて言い直したジネット。

 口にするのも恥ずかしいようなものを身に着けているのか、こいつは。なら穿かなきゃいいのに!

「制服を作りたいんです」

「制服? 俺のか?」

「はい。ヤシロさんがマグダさんの制服を作ってくださったじゃないですか。わたしとお揃いのデザインで。それがとても可愛くて、なんだか嬉しかったんです」

 お揃いが嬉しいという感覚は、ジネットだからこそだろう。制服は、統一感を出すことによって店の品格を上げるためのアイテムなのだが。

「それで、ヤシロさんも、お揃いの制服があればいいなと思いまして」

「ごめん……ミニスカはちょっと」

「スカートじゃないですよ!?」

 俺が作ったマグダの制服は、ジネットの服を基調としつつマグダに似合うようにカスタマイズされている。マグダにはロングよりもミニが似合うと思ってミニスカートにしてあるのだ。

「それよりも、お前の制服のミニスカバージョンを作ろう! うん、そうしよう!」

「わ、わたしは、そういうのは、ちょっと……」

「膝上150センチ」

「何も着てないじゃないですか!? 上過ぎますよ、それは!」

 それが、何か問題でも?

 あ、拝観料を設定しなくてはいけなくなるのか……そうしたら料金所を作らなきゃいけなくなるし……確かに、すぐには無理か。よし、時間をかけて説得しよう。

「わたしの服は、今はいいですので、ヤシロさんの服を作らせてください」

「まぁ、作ってくれるってんなら……」

 本当は制服とか凄く面倒くさくて嫌なのだが……

「では、手を広げて立ってください」

 言われるままに、両手を軽く広げて真っ直ぐに立つ。

 ジネットは、手に持った細いロープを使い、俺の肩から袖口、背中の広さ、高さ、足の長さなどをテキパキと採寸していく。

 ……なんか、照れるんだが。

「なぁ、ジネット」

「はい」

「おっぱいが当たらないのだが?」

「当たりませんよ!?」

 おかしいじゃないか! こんなに接近しているのに、ドジっ娘のジネットが「あ、足が滑りました!」って倒れてこないとか、倒れた拍子に顔におっぱいがぶつかってこないとか、「おいおい、窒息しちゃうだろう、はっはっはっ!」とか、そういうのがないとかおかしくないか!?

「この世界にラッキースケベの神様はいないのか!?」

「どこの世界にもいませんよ、そんな神様は!?」

 なんてことだ……来る世界を間違えたかもしれん。やり直しを要求したい。

「も、もう! 変なことばかり言っていると、シスターに言って叱ってもらいますよ?」

 ベルティーナに叱られるのは…………ちょっと、やだな。

「だってよぉ、こんな近くをうろうろするからよぉ」

「サイズを測っているだけですよ。変な意味なんてありません。さぁ、最後は胸周りを測りますね」

「おう! 測りっこだ!」

「わたしのは測りませんよ!? ……もう、ちゃんとしてください」

 頬を膨らませ、俺の鼻をちょんと指で押す。

 なんでかご褒美をもらった。俺はいいことをしたのだろうか? ん? ご褒美だよな、今の?

「じゃあ、測りますから腕をもう少し上げてください」

 言われて、両腕を少し持ち上げて伸ばす。

 ちょうど、「さぁ! ボクの胸に飛び込んでおいでっ!」みたいな格好だ。

 その胸に、ジネットがそっと歩み寄り、ロープを持った腕を俺の背後へと回そうとして…………顔が爆発した。いや、爆発したかの如く一瞬で真っ赤に染まった。

「はぅっ!? ち、違います! こ、これは、採寸で……決して抱きつこうとしているわけではなくてっ!」

 などと、言い訳をするから余計にやましいことのように思えてくるのだが…………

「あ、あのっ、す、すぐにっ! すぐに測ってしまいますからっ!」

 だが、胸周りを測るには、俺の両脇の下から腕を通し、背中にぐるっとロープを渡す必要があるわけで、当然、その間体は急接近するし、俺はずっと「さぁ! ボクの胸に飛び込んでおいでっ!」状態だ。

「にゃぅうっ!」

 ジネットが、鳴いた。

「も、もう! ヤシロさんが、たくさん……いっぱいいっぱい変なこと言うからですよ! もう、もう! 懺悔してくださいっ!」

 限界まで顔を深紅に染め、ジネットは逃げるように厨房へと駆け込んでしまった。

 結局、採寸は出来ずじまい。俺の制服はお預けとなりそうだ。


 しかし、残念だな…………背中に腕を回すくらいに接近すれば、確実に当たったのにな、あの巨大なウェポン……悔やまれる。


「あぁ…………無駄に汗かいた」


 もっとも、今そんなことをされたら……厨房に逃げ込んでいたのは俺の方かもしれないけどな。







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