【150話後感想返信】リカルド、ヤシロに『スゲェ』と言わせたい
――四十一区、領主の館
メドラ「リカルド、いるかい?」
リカルド「なんの用だ? 俺は忙しいんだ。手短に頼むぞ」
メドラ「さっき四十二区で占いの本を買ったんだよ。あんたの運勢も占ってやるよ」
リカルド「いらんわっ! 忙しいと言っているだろう! 用がないなら帰れ!」
メドラ「まぁまぁ、そう言わずに……おっ! あんた、今週は交渉事は控えた方がいいね。口が災いを生むそうだよ」
リカルド「ふん! 占いなどバカらしい。そんなもんを信じるなど……お前は、女か!?」
メドラ「…………女なんだが?」(物々しい殺気)
リカルド「…………すまん。失念していた」
メドラ「口が生んだ災いを、体で清算してみるかい……?」(悪鬼羅刹のごとき表情)
リカルド「その占いはよく当たるようだな……続けてくれ」
メドラ「そうかい? それじゃあ、今日は早起きをするといいことがあるよ」
リカルド「今更言われても手遅れだろう!?」
メドラ「ラッキーフラワーは食虫植物」
リカルド「ラッキー感ゼロだな!?」
メドラ「ラッキーカラーは無色」
リカルド「色を言えよ!?」
メドラ「ラッキー先祖は四代前のお爺さん」
リカルド「それをどうしろというんだ!?」
メドラ「ラッキーパーソンは口の上手い同世代の同性」
リカルド「…………(ピクッ)」
メドラ「おや、これはダーリンのことじゃないのかい?」
リカルド「……ふん。あの男に会ったからといって幸せになれるとも思えん。やはり当てにならんな、占いなど」
メドラ「その人に会って『すげぇ』って思わせないと、今後いかなる交渉も決裂し、不幸のどん底に叩き落とされるだろう……だってさ」
リカルド「…………なんで、最後だけそんな怖い感じになってんだ? 途中まで物凄くおふざけ感満載だったのに」
メドラ「あんた、忙しいって言ってたが、この後何かあるのかい?」
リカルド「これから行商ギルドとの交渉があるんだ。肉の価格を上げてもらう」
メドラ「あぁ…………決裂するね」
リカルド「バッ、バカやろう! 占いごときで決めつけるな! 縁起悪いだろうが!」
メドラ「……あんたも結構、信心深いんだねぇ」
――陽だまり亭
ヤシロ「……で、なんの用だよ、リカルド」
リカルド「俺はな、八歳で狩りに出て、大イノシシを仕留めたことがある」
ヤシロ「…………へぇ」
リカルド「どうだ!? 『スゲェ』だろう!?」
ヤシロ「別に……俺なんか、八歳の頃に銭湯の女湯で大おっぱいに挟まれたことがあるぞ。『キャ~、かわいい~、お姉さんが頭洗ってあげるね~』って。どうだ、スゲェだろう!?」
ウッセ「すげぇ!?」
リカルド「黙れ、支部長! ……そんなもの、全然凄くないぞ、オオバヤシロ」
ヤシロ「無理すんな。羨ましいんだろ?」
リカルド「笑止! 俺はな、リンゴを素手で握り潰せるんだぞ! 『スゲェ』だろ!?」
ヤシロ「はい、みんな~、せ~の!」
――マグダ、ウッセ、デリアが一斉にリンゴを握り潰す
ヤシロ「……で?」
リカルド「くっ…………な、なら、これを見ろ! (懐からナイフを取り出し)こいつは、バオクリエアで作られた超一流のナイフだ!」
エステラ「凄いっ! ちょっと見せて!」(リカルドのナイフを奪い取る)
リカルド「えぇい! テメェに凄いと言われても意味がないんだよ! 返せ、ナイフマニア!」
ヤシロ「なぁ……お前、何がしたいんだよ?」
リカルド「……う、うるさい! これもみんな、四十一区のためなんだ! 俺を『スゲェ』と思え!」
ヤシロ「……いや、うん……今のお前……スゲェバカっぽい」
リカルド「誰がバカだ!? 失敬な! ……だが……『スゲェ』と言わせた……これで、交渉は上手くいくのか!?」
アッスント「おや、リカルド様。こちらにおいででしたか」
リカルド「おぉ、アッスントか。ちょうどいい。たった今用事が済んだところだ。さぁ、交渉に入ろうか」
アッスント「……勝手に時間を変更しておいて、何もなしというのは…………ちょっと礼儀に欠けると、私はそのように思うのですが…………いかがでしょう?」
リカルド「…………これは……交渉決裂の匂いがスゲェする…………」
ヤシロ「あ~ぁ。アッスントとの約束破るとか……アッスント、時間にはスゲェうるさいのによぉ」
リカルド「……くっ! オオバヤシロ!」
ヤシロ「なんだよ?」
リカルド「役立たずめっ!」
ヤシロ「言いがかりも甚だしいな!?」
アッスント「……さぁ、リカルド様。一応、お話だけは伺いましょう……色よいお返事が出来るかどうかは、保証いたしかねますけどもねぇ……」
リカルド「いや、待て。これにはわけがあるのだ。悪いのは八割オオバヤシロなんだ」
アッスント「はいはい。ではその辺も含めて、あちらで、『ゆっくりと』お伺いしましょう」
リカルド「く……いいだろう」
――アッスントとリカルド、出ていく
ヤシロ「結局何しに来たんだよ、あいつは……スゲェ、意味分かんねぇ」




