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749話・時は流れ、万物は流転する

「いでよ! 和哉さん♪」


 エルマが元の世界から生身の和哉を召喚する。

 多元宇宙世界だと、元の世界の彼がいなくなったわけではなく、無限に分岐していく世界線のひとつでしかない。 

 そういえば以前、ヒナちゃんさんが渋谷のハチ公像を勇者自治区に召喚していたけれど、俺がいた時空でハチ公が消えた事実はなかった。


挿絵(By みてみん)


 あらゆる可能性を掌握している彼にとっては「だから何だ」程度の戦術かもしれない。

 とはいえ、一方的だった「ずっと和哉のターン」に、一石を投じた奇策なのは確かだと思った。


「生身の僕を人質にとったところで、僕の世界はびくともしない」


 情報体の和哉はそう言った。


 たとえ、生身の彼を殺害したところで、万能の存在、情報体が消えるわけではない。

 ややこしい話だけれど、無限に分岐していく世界がひとつ生まれたに過ぎない。


「エルマが生身のアンタを召喚した意図は『時空の宮殿』を書き換えるためだ」


 俺がそう告げると、和哉の前髪が揺れ、エルマがニヤリと笑った。


「情報体だろうと♪ そうでなかろうと♪ 和哉さんの本体♪ 『時空の宮殿』を再起動する生体キーとして利用させていただきますわ♪」


「なるほど。元の世界にいた〝僕の本体〟には、ここを作る未来を含めた『あらゆる可能性』を持っている。だから〝起点〟として利用するわけか」 

 

 和哉は納得して、少し笑みを浮かべている。


「これだけの規模の迷宮♪ 『時空の宮殿』というよりも、『もうひとつの世界』のようなモノ♪ そんなモノを生成するためには、起点となる存在が必要でしょう♪」


 術者ではない俺には、エルマの言っている意味は分からない。

 ただ、これが〝魔法の飛び交わない魔法戦〟であることは理解できた。


 ただ、レモリーはしきりと首をかしげていた。


「直行さま、ひとつ疑問なのですが、和哉という方は、その気になれば私たちを一瞬で抹殺できるのでしょう? なのにどうして、エルマさまの召喚を止めたり、われわれの息の根を止めたりしないのでしょうか……?」


 彼女の疑問に対して、和哉は無表情で拍手を送った。


「単純な好奇心だ。まさか元の世界から生身の僕を召喚してくるとは思わなかった……」


 玉座に腰を下ろしていた彼はゆっくりと立ち上がると、腕を組んで右手を頬に当てた。


「実は最初からそれが狙いではなかったのか……?」


「どうかな。ただ結果的に、これで僕の方の問題は解決してしまった。妹と同時代に生身で存在できる」


 俺の問いに対して、和哉はそう答えた。遠い目をしていて、二十歳くらいの外見からは想像できないほどの深い諦念がにじみ出た表情だった。


 確か、『時空の宮殿』を作ったのは1000年前だったという。

 その間、ヒルコは知里になろうと元の世界から13歳の少年少女に『人間のアカシックレコード』を配り、無数の人間がこちらの世界に呼ばれた──。


「……それって直行さん、もしかして知里さんとお兄さんってそういう関係なんでしょうかね♪」


 次の瞬間、下衆顔を浮かべていたエルマの顔面がはじけ飛んだ。


「ぶべらっ」


 短い断末魔を上げて、エルマは息絶えた。


「くだらない想像をするな。生殺与奪は僕にある。生きて帰りたければ口を慎むことだ」


 和哉かパチンと指を鳴らすと、顔面蒼白のエルマが蘇った。

 あまりに突然の死と復活劇に、俺とレモリーは顔を見合わせ、息をのんだ。

 

「僕は心を許せる唯一の肉親である知里を見守りたいだけだ」


 和哉はそう言うと、ふたたび玉座に腰を掛けた。


「滅多なことを言うもんじゃありませんわね直行さん♪ 死んだかと思いましたわ♪」


「実際に死んだんだよ。で、平行世界から生きたエルマを連れてきた。まったく、どうやったら彼に勝てるんだか……。知里さんにでも助けを呼ぶか……」


 俺がそう言いかけたとき、和哉は初めて取り乱したような表情で身を乗り出した。


「知里が……いない? あいつは異空間にヒルコを封じたまま、戻ってきていないのか……」


「ならあたくしが再度♪ 召喚すればいいじゃないですか♪ 『人間のアカシックレコード』が無限入手できる♪ ここなら♪ 無限に人間を召喚できてしまうじゃないですかー♪」


 二度も殺されても調子に乗ることを止めないエルマは、ちょっと大したものなんじゃないかと思った。


 その時だった──。


 突如として、空間を袈裟斬りにしたような斜めの裂け目が出た。

 物理的にはありえないような、奈落やダムホールのような底知れない穴から、這い出てくるのは、巨大な女性の手で、千手観音のように無数に出てくる。


 その中心には、異形の姿をしたヒルコ……そして知里が融合した怪物が顔をのぞかせる。


「うぁぁァァァ──!! オ兄ィチャァァァン……!!」 


 『時空の宮殿』の異空間をぶち破って、知里を取り込んだヒルコがあらわれた──。

次回予告

※本編とはまったく関係ありません。


エルマ「このお話がアップロードされた26年3月20日は春分の日♪」


知里「昼と夜の長さが等しくなる日だって言われてるけど、実際は昼の方が少し長いみたいじゃん」


小夜子「えー、どうしてー?」


直行「昔の日本では太陰暦で『暮れ六つ』とか言ってたから、今の24時制の方がより厳密なんだな」


エルマ「日本の場合は春分の日の昼の長さは平均12時間7分、夜の長さは平均11時間53分ですわね♪」


知里「まあ、時間なんてものは相対的なモノで、楽しいことをしている時間はあっという間に溶けるし、嫌なことをしてる時間はめちゃ長く感じるモノだからね」


エルマ「次回の更新は3月27日を予定していますわ♪ 『焼き土下座5秒は1時間?』お楽しみに♪」

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― 新着の感想 ―
これは…… かなり怖い絵面になりそう……( ゜Д゜)
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