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第13話 白き騎士と紅き怪物

 山を下りる最中に俺たちはいろいろなことを話した。


 俺とリカルメがここではない別の世界からきたこと。リカルメがバイヤードの元幹部だったこと。俺が世界を救うために戦ったヒーローであることなどなど。



「リーカー! ダメじゃない! 人に迷惑かける組織の幹部やってたなんて!」



 いやいやいや、迷惑で済む話ではない。

 今どき世界征服を目論む悪の組織だぞ。


 リカルメが過去に犯した悪行はなるべくぼかして話したからって、そんな軽い説教で済ますんじゃないよ。



「こ、こらレヴァンテイン! なんてことアテナに話すのよ! ち、違うから! 私はバイヤードの組織を裏切り、こいつと一緒に組織と戦ったダークヒーローで……」


「だったらこの場で『ゼドリーFACK YOU!』って言ってみな。ダークヒーローなら言えるだろ?」


「う……言えないです。私は悪の組織の幹部です」


「でも、今は違うんだよね? 悪の盗賊から私を助け出してくれたんだもん。前の世界で何があったとしても、今のリカは私のヒーローだよ」


「アテナ!」



 リカルメがアテナに抱き着いた。やれやれ、隙を見てはいちゃいちゃしやがってこいつら。

 しかし、この二人がイチャつけるのも山を下りるまでのわずかな間だけ。そっと見守ってやろう。


 アテナはアタトス村に戻り、俺とリカルメはあてのない旅に出る。そう決めたのだ。

 無論アテナは強く反対した。自分が頑張って村のみんなを説得する。必死になってそう言った。アテナにとってもリカルメはかけがえのない存在だったということだろう。


 だけど、リカルメは思いつきで俺と旅に出ることを望んだわけではないらしく、強い意志でアテナの提案を断った。



「それにしても、やけに俺たちの話をすんなり受け入れるんだな。普通異世界から来た、なんておかしな話信じないだろ」


「だって、リカもイヌイコータさんも、初めて会った時この世界を知らなすぎでしたし。イヌイコータさんなんて、こっちの世界にはないヒーローの力で無双してたじゃないですか」


「まあ、それもそうだな」



 確かにレヴァンテインの力はこっちの世界じゃあまりにも浮きすぎている。別の国から来ただけで同じ世界の住人だ、なんて言われた方が信じられないかもしれない。



「なあ、今度はこっちの世界ことを教えてくれよ。バイヤードがこっちにもいることはわかったが、こっちのバイヤードはどんな存在なんだ?」


「あ、それ私も聞きたい。昨日まで私以外のバイヤードがこの世界にいるなんて知らなかったし」


「いいですよ。といっても、私もそこまで詳しいことは知りませんが……」



 リカルメはいったんアテナから離れておとなしく話を聞く姿勢に入る。



「この世界で最初にバイヤードが発見されたのはおよそ一年前です。王都近くの街道に突如白い光と共に現れました。そして、その最初の一体を皮切りに、たくさんのバイヤードが各地で出現するようになりました。ただ、バイヤードはどの個体も凄まじい戦闘能力を持っており、どこの国の騎士団も対応に追われてる状態だと聞きます。それに擬態能力のせいでどこに潜んでるのかもわからない。厄介な化け物です……。あっ、リカは別だよ。落ち込まないで」



 種族を悪く言われてヘコむリカルメをアテナがフォローしてる。

 聞きたいって言ったのはお前だろうが。



「そして私もうわさで聞いた程度なんですが、先日また新たなバイヤードが黒い光と共に出現したらしいです」


「黒い光? バイヤードは白い光と共に現れるって言ったばっかりじゃないか」


「それが個体によってバラバラで、最初の方は白い光のが多かったんですけど、数か月後には赤い光や緑の光、最近は黄色い光が多かったです。それで、黒い光のバイヤードなんですけど、身体の色は光と真逆で、全身真っ白なバイヤードだったらしいんです」



 ……え?



「ゴアクリート王国の騎士団が討伐に向かったらしいんですけど、その白いバイヤードは手から出す謎のエネルギー弾で遠距離から騎士団を壊滅に追い込んだそうです」


「それって……」



 白い身体、強力なエネルギー弾、そんな特徴を持つバイヤードなんて奴しかいない。

 俺が一年かけて殲滅したバイヤードの親玉。


 首領(ドン)ゼドリー。

 奴もまた、この世界に来ていたのか。



「そのバイヤード、どこに現れたんだ?」


「確か……ウルズの泉付近だったと思います。魔界ヘルヘイムに通じる深き泉。あの辺りは魔物も沸きやすいのでバイヤードが出てきてもおかしくはないですね」



 今の話を聞いて確信した。

 一年前は白い光、先日ゼドリーが現れたときは黒い光。


 一年前、俺は初期形態である白のゲネシスフォームを多用していた。

 先日ゼドリーと戦った時は黒のラグナロクフォームを使用していた。


 光。レヴァンテインの必殺技、ディメンションバニッシュが発動するときも、そのフォームの色に対応した光が生じる。

 ゲネシスなら白、ガンドルなら緑、ラグナロクなら黒だ。


 最初にバイヤードが現れたのは一年前。俺が初めてレヴァンテインに変身し、バイヤードを倒したのも一年前。

 今まで遭遇したバイヤード四体はすべて俺が倒したはずのバイヤードたちばかりだった。


 そうか、そういうことか。


 バイヤードはこの異世界、もとい死後の世界と現世に共通する生物なんかじゃない。

 この死後の世界に存在するバイヤードは、すべて現世で俺が倒してきたバイヤードだ。


 でも、もしそうだとすれば、俺はまた戦わなければいけないのか?

 一年かけてようやく絶滅させたバイヤードと?



「ウルズの泉……ね」



 リカルメは、小さくつぶやいた。





 村の入り口に到着した。

 俺の視界に映るのは、昨日ディストラクションスラッシュで破壊した見張り台と、俺たちに敵意の視線を向ける村人たち。武器を構える者も何人か見受けられる。


 きっと彼らの目には、俺たちがアテナを人質に連れた悪党二人にでも見えているのだろう。

 これは、アテナとの別れを惜しんでいる暇はなさそうだな。



「どの面さげて戻ってきやがった! 早くアテナを解放しやがれ!」


「みなさん違うんです! 二人は私を山賊から助けてくれて……」


「バイヤード共め! 退治してやる!」



 共って。リカルメはともかく俺はバイヤードじゃないんだが。

 まあ、口論するだけ気力の無駄遣いってものか。ここは大人しく立ち去ろう。



「彼女に危害を加える気はないから安心してくれ。俺たちはすぐにここから――」


「動くな! アテナの命は私たちが預かっている! 返してほしければ私たちの要求を聞け!」



 俺の声明はリカルメの叫びによって中断された。



「え?」


「は?」



 はあぁ!? 何考えてるんだこのバカ!

 俺が穏便にことを進めようとしていたになんで割って入ってくる!?



「やはりリカは化け物だったのか……! なにが望みだ!」



 ご丁寧に右腕だけ擬態を解除して怪人アピールも怠っていない。



「ちょ、ちょっとリカ!? 急に何を言い出すの!?」


「リカルメ、余計なことを言うな! これ以上関係を拗らせてどうするんだ!」


「いいから、黙ってて二人とも」



 リカルメは真剣な表情を浮かべている。冗談や酔狂でこんなことを言ってるわけじゃないらしい。


 あまりの剣幕に俺もアテナも黙るしかなかった。

 こんな雰囲気のリカルメ、現役で幹部をやっていた頃以来だ。


「昨日私が村に戻ってきた時、村はすでに山賊に荒らされ見る影もなかった。しかも、山賊は魔法もろくに使えない雑魚ばかり。恥ずかしくないのあんたたち?」


「な、なんだと!? 俺たちが苦戦したのはお前らバイヤードのせいじゃないか! 山賊程度の相手なら軽くあしらってやる!」


「そうだそうだ! お前らバイヤードさえいなければこの村は平和そのものだったんだ!」


「バイヤードさえいなければ? まずその前提が間違っている! いい加減に気づけ劣等種ども!」



 リカルメは怪人化した右腕を正面に向け、雷撃を放つ。俺はリカルメの殺人衝動を心配したが、どうやら狙いは村の入り口にそびえたった大木のようだ。


 車が追突しても折れなさそうな立派な大木は、リカルメの紅い雷撃によりあっさりと消し炭になった。

 村人たちは圧倒的な戦力差の前に口をつぐんだ。



「これがバイヤードの力だ。そして、私はこの世界に数多く存在するバイヤードのたった一体にすぎない。貴様たちがどんなに私たちの存在を忌み嫌おうと、この世界からバイヤードがいなくなるわけじゃない!」



 ……なるほどな。リカルメの言いたいことが少しわかってきた。

 どれ、俺もちょっと口添えしてやるか。



「俺たちが消えたとしても、またアテナを狙ってバイヤード、あるいはそれに準ずる強者がこの村を襲うかもしれない。そうなった時、たった一体のバイヤードに苦戦したお前たちがアテナを守ることなんてできるのか?」


「そ、それは……」


「私の要求はただ一つ! この先、どんな脅威が村を襲おうとも、アテナの安全は絶対に保証しろ! もしまたアテナが攫われることでもあれば、私がアテナを攫い返す! そして二度とこの村には返さない!」


「リカ……!」


「皆の衆、下がりなさい。ここから代表である儂が相手をしよう」



 村人をかき分けて村長が俺たちの前に現れた。



「村長、危険です! 今の攻撃を見たでしょう!」


「おぬしらは今の攻撃しか見ておらんのか。少しは苦楽を共にした同じ村民、リカの姿を思い出せ」


「そのリカを食ったのがあの化け物だ! 奴はリカに化けてるだけのただのバイヤードだ!」


「もしそうだとしたら、あのようにアテナを思いやる言葉は出てこない。リカよ、これは儂の想像じゃが、おぬしはこの村に訪れた時にはすでにバイヤードだったのではないか?」



 村長はリカルメを恐れることなく傍まで近寄りそう言った。リカは思わず腕を人間態に戻す。



「お、おじいちゃんは私を信じてくれるの?」


「もちろんじゃ。しかし、昨日は村の危機だったとはいえおぬしに罪を被せてしまった。申し訳ないことをした」


「ううん、しょうがないよ。わ、わたしが化け物なのは、ほんとだもん」



 リカルメの目から涙が零れる。


 リカルメはこの村に半年以上も暮らしていたんだ。アテナ以外の人物と交流があってもおかしくはない。特に村長はリカルメの好物まで知っていた。

 この村でアテナの次に親しい人物だったに違いない。



「儂はおぬしを再び村に受け入れたいと思っておる。しかし、おぬしの正体が村に知れ渡ってしまった以上、おぬしを恐れる村人も少なくない」


「わかってるよ。私はこの村にいちゃいけない存在、すぐにここからは立ち去る。でも約束して、私がいなくても、絶対にアテナを守って見せるって」


「ああ、おぬしの言う通りこの村は弱い。魔界に通ずるウルズの泉から遠く離れた村ゆえ、魔物も弱く平和な場所じゃからな。しかし、これからはどんなことが起ころうとも、どんな輩が現れようとも、この村の平和は守って見せる。この村の村長としてできる限りのことをしよう」


「……ありがとう」



 リカルメと村長の会話を聞き、村人たちは手に持った武器をおろす。全員、とはいかなくてもほとんどの村人は理解しているはずだ。


 リカという存在はこの村の敵なんかじゃないと。



「それじゃ、お別れだねアテナ。一緒に暮らせて楽しかった」


「私もよ、リカ。あなたのことは忘れない。村の人たちの誤解は解いておくから寂しくなったらいつでも帰ってきてね」


「もう、また子ども扱いして」


「ごめんごめん。あ、そうだ」



 アテナはリカルメに手のひらサイズの袋を手渡す。不思議そうに袋を開けようとするリカルメの手をアテナが止める。



「これはお守り。この先の旅できっとリカを助けてくれるよ」


「アテナ……ありがとう。大事にするね」



 アテナは今度は俺の方を向き小さく頭を下げた。



「イヌイコータさんもありがとうございました。この三日間で二度も助けて頂いて」


「先に助けられたのはこっちだよ。ボロボロの身体を癒してもらった。ありがとう」



 そういえば怪我のお礼はまだキチンと言えてなかったな。

 別れる前に感謝を伝えることができてよかった。



「そうだ、これ返すよ。誕生日プレゼントなのに勝手に持ち出して悪かった」



 俺はアテナに黒い剣を差し出す。しかし、アテナはそれを受け取らなかった。



「それはイヌイコータさんが使ってください」


「いいのか?」


「はい、先ほどの戦いを見て思いました。これは貴方が使うべき剣だと」



 俺は黒い剣を見る。

 こいつはレヴァンテインと相性がいい。この先これがあればきっと役に立つ。



「ありがとう。これを使って、より多くの人々を守ると誓うよ」



 さて、名残惜しいけどいつまでも長居していられない。

 旅立ちの時だ。



「行くぞ。リカルメ」


「わかってるわよ。じゃあいってきます、アテナ。私たちずっと親友だよ!」


「うん、いってらっしゃい。帰り、待ってるから」



 俺たちはアタトス村に別れを告げた。

 リカルメは途中何回もアテナの方を振り向いたが、足は止めなかった。

 やがて村が見えなくなり、リカルメも振り返るのをやめた。



「さて、ひとまずは王都を目指しましょうか。日が沈む前に街道を抜けるわよ」


「…………」


「な、なによそんなジロジロみて。私の顔になにかついてる?」


「いや、てっきりアテナがいない寂しさから泣き出すものかと思って」


「あんたまで私のことなんだと思ってるのよ……」


「メンタル弱いバイヤードのザコ幹部」


「なんですって!?」



 リカルメは拳を握り、ポカポカと俺を叩きはじめた。

 雷も怪人態も使わないあたり、本気で俺に敵意が無いように見える。



「そういえば、ひとまず王都という言い方をしたな。最終的な目的地でもあるのか?」


「ええ、あるわよ。あんたは?」


「ある。というかさっき出来た」


「奇遇ね、私もよ」


「言ってみろ」


「ウルズの泉」



 やっぱりか。アテナの話に出てきた魔界ヘルヘイムに通じる泉。

 バイヤードの首領、ゼドリーが出現した場所。



「奇遇だな。俺もそこを目指す予定だったんだ」


「へえ、何しに行くの?」


「ゼドリーを倒しに行く。お前は何しに行くんだ?」


「ゼドリー様に会いに行く。今度はこの世界を征服してやるわ」



 これも予想通り。リカルメはバイヤードの中で一番ゼドリーに対する忠誠心が高い怪人だった。

 そんなリカルメがゼドリーが生きていると知りじっとしていられるわけもない。きっと、村を追い出されなくても、自分の意思で村を出ていたに違いない。



「道のりは一緒でも、目的は真逆ってわけだ」


「そうね。なんならここで倒しておく?」


「いや、今のところレイバックルの充電ができるのはお前だけだ。協力を拒まない限り生かしてやる。そっちこそ、いずれゼドリーを倒す俺を殺しておかなくていいのか?」


「いずれは殺すわ。でも、悔しいけど今の私だけじゃこの世界を生き残るほどの力はない。私を命がけで守るというなら、ゼドリー様と再会するまで生かしておいてあげる」



 利害の一致、というわけか。

 いいだろう。泉につくまでの協力関係だ。



「わかった。手を貸してやる」


「いい返事ね。じゃあこっちもご褒美をあげるわ。浩太(こうた)、ベルト出しなさい」


「ああ、…………あぁ!? 浩太!?」



 いきなり下の名前を呼ばれたからビックリした。

 なんだこいついきなり。気でも触れたか!?



「これから一緒に旅するのにレヴァンテインなんていちいち呼んでられないじゃない。それにこの世界にはあんたが殺したバイヤードがうじゃうじゃいるのよ。レヴァンテインなんて呼び方してたらそいつらの神経を無駄に逆撫ですることになるわ」


「それはそうだけど」


「なんなら、あたしのこともこれからはリカって呼んでいいわよ」


「えぇ……」


「な、なによその嫌そうな顔!? 昔は普通にリカって呼んでたじゃない!」


「それはお前が自分の正体を偽ってスパイしてた時の話だろ。……でも、まあいいか。この世界にリカルメの名前を知ってるやつがいないとも限らないしな。うかつに幹部名で呼んで、変なトラブルに巻き込まれるのも御免だ」


「決まりね。それよりほら、さっさとベルト貸しなさいよ」



 俺はレイバックルを腰から外し、リカルメ……いや、リカに手渡した。

 しかし、一応持ち逃げされたり、壊されたりしないよう警戒はしておく。


 俺たちは信頼の上に成り立つ関係じゃないからな。


 しばらく歩きながらバチバチと放電し続けた後、リカは俺にベルトを返還した。



《----The remaining battery 100%----》



 ちゃんと充電できてるみたいだな。これでしばらくは戦える。


 礼を言おうと思ったが、あくまでも利害関係だけで一緒にいる身だ。

 調子に乗らせないためにもここは黙っておこう。


 リカルメ・バイヤードは悪の怪人だ。

 俺はまだ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()





 しばらく歩いていると、街道が二つに分かれた。

 看板に文字が書いてあるのだが、なんて書いてあるのか読めない。どうやら神様の統一言語というのは文字には適用されないらしい。



「リカ、どっちに行けば王都に着くんだ?」


「え、知らないわよ。あんたが知ってるんじゃないの?」



 ……え?

 何か俺の耳がとんでもない言葉を聞いた気がした。



「ちょっと待て! お前、まずは王都へとかなんとか言ってたよな!? なんで場所知らないんだよ!」


「私は昨日正体がバレて、今日旅立ちを決意したのよ! 道のりなんか調べてる暇あるわけないじゃない!」


「そんなこと言ったら俺は三日前にこの世界に来たばかりだ! ……そうだ! お前半年以上もこの世界いるんだから文字くらい読めるよな? この看板なんて書いてあるんだ?」


「え? …………えぇーっと、『痴漢に注意!』かしら…………?」



 冷や汗をかきながら、文字を読む素振りを見せるリカ。

 ダメだ。こいつ頭脳までザコルメだ。



「こんなファンタジー世界に痴漢なんているか! いたとしてそんなこといちいち看板に書くか!」


「なによ! しょうがないじゃない! 村でスローライフ送る分には文字なんて読む必要なかったのよ!」



 ダメだ。間違ったやつに協力申し込んじまった。

 こんなのでこれからどうやって生きていけば……。



「おい、てめーら。そこを動くな」



 後ろから声が聞こえて振り向くと、毛皮を被った半裸の男たち20人ほどが立っていた。なんだ、また山賊か。

 バイヤード三人衆の仇でも討ちにきたのだろうか?



「ちょっと今それどころじゃないから後にしてくれるか?」


「そうよ、空気読みなさいよ」


「黙れ。てめーらのせいで俺たちは壊滅同然だ。せめててめーらを道連れにしてやる」



 山賊は剣を構え俺たちに刃を向ける。その剣には赤い宝玉が嵌められていた。どうやらこいつは魔法が使えるらしい。


 でも、俺たちの敵ではないな。



「そうだ、リカ。こいつらに道案内させるのはどうだ? いくらならず者とはいえ王都の場所くらい知ってるだろ」


「いい考えね浩太。じゃ、ひと暴れしますか」


「なにごちゃごちゃ言ってやがる! お前ら! やっちまえ!」



 山賊たちが一斉に俺たちに襲い掛かる。

 俺はレイバックルを装着し、リカは身体から紅い稲妻を放出した。



「変身!」


「擬態解除!」



 その日、人間界(ミズガルド)には一つの噂が広がった。


 白き騎士と紅き怪物。奇妙な組み合わせの二人が一緒に旅をしていると。



【第一章 完】

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