いつまでもいつまでも、ずっといちゃいちゃしていたいから
リンゴーン、リンゴーン。
教会の鐘の音が、リンデルの街に響き渡る。
その日の教会は、いつもと様子が違っていた。
バタバタと準備に追われるシスター達。手伝えないのが申し訳ない。
おめかしをして集まってきた知り合いの冒険者や街の人々。まだ挨拶もできていない。
何故か大勢いるアリュウスデルトの王族に、リシティアの皇女殿下。彼らのせいで警護体制が尋常じゃないことになっている。
トントンと、私のいる控え室にノックの音が聞こえる。
「サツキー。入ってもいいかー」
ケイの声だ。きっと私の様子を見にきたんだと思う。
「入っちゃダメー!」
「うおっ!?リディア、頼むから入れてくれよ」
「ダメったらダメー!」
ケイが控え室に入るのを必死に阻止するリディア。なんとなく、微笑ましい。
「ケイ、本番までどんなドレスか秘密だから、入ったらダメだよ」
「ちぇ、わかったよ」
そう言うと、ケイはどこへ行くのか歩いてドアの前から立ち去った。
なんせ今日は特別な日、特別なドレスだから。本当のギリギリまで、ケイにも秘密だ。
リシティア皇国からの帰りの日に、私はケイにプロポーズされた。答えはもちろんオッケー。
女の子になったといっても、ケイ以外にこの身体を自由にさせるつもりなんて毛頭ない。だから答えなんてわかりきったことだった。
それからはトントン拍子だった。
まずリシティアに一緒に行っていたメンバーに報告し、そこから教会のメンバー、アリュウスデルトの王様、リシティアの皇女殿下、エトセトラエトセトラ。
これまで知り合ったたくさんの人たちに、私たちの結婚の話は伝わっていく。
特に張り切ったのがエリザさん。
会場の設営からドレスのデザインまで、ほぼ全ての作業に関わっていた。なんで裏方に回るとこんなにも有能なんだろうなぁ。
「サツキちゃん?準備はできまして?」
「うん、大丈夫だよ」
私はエリザさんに向かって軽く微笑んだ。
エリザさんも、微笑み返してくれる。
「そろそろ時間なので。はい、ヴェールをかぶせて、完成ですわ」
純白のウエディングドレスに身を包んだ私を、エリザさんが会場までエスコートする。後ろからリディアがドレスの裾を持ってくれている。ブライズメイドというやつだ。
入り口に立って、深呼吸をする。
「緊張します?」
「それは、もちろん。なるべくこじんまりとした式が良かったのに、王様とか皇女殿下まで来ちゃうんだもの」
「それほど、サツキちゃんが魅力的だということですわ」
ドアの向こうから、新婦の入場ですという声が聞こえた。
「では、いってらっしゃいな」
「うん、ありがとう、エリザさん」
言葉を交わして、私は一歩、また一歩と足を進めていく。
横目で客席を見れば、王様や皇女殿下、ドラゴンのサファイアに、孤児院の子どもたち、教会のシスターたち、街の冒険者まで、たくさんの人が、私たちを祝福しに来てくれていた。
歩いて行った先で、立ち止まる。
そこにはケイが立っていた。
「……綺麗だ」
「本当?だったら、嬉しいな」
にっこりと笑顔を作る私。ケイはどこか照れていた。
指輪の交換や、誓いの挨拶など、粛々と式は進んでいく。
そして、
「それでは、誓いのキスを」
と言われ、ケイと顔を見合わせた。
「サツキ、お前のこと、絶対に幸せにするから」
「うん……こんなことをしてくれた責任、とってもらわないとね」
わざとらしく、首についたチョーカーを見せてみる。
それにはケイも苦笑いだ。
クスッと笑ってから、私は目をつむった。
数秒遅れて、ケイの唇が、私の唇に当たる。
ひゅーひゅーと歓声が聞こえる。照れるから、あんまり騒がないでほしい。
この異世界に来て、いろんなことがあった。
いきなり元の姿と全然違う女の子になって。
ケイと喧嘩して別れて。再開したと思ったら奴隷にされて。
いちゃいちゃして過ごしていたら、ドラゴンに襲われて。
ケイの無事を祈っていたら、聖女だなんて呼ばれて教会や孤児院を作って。
本当にたくさんのことがあった。
これからもいろいろなことが起こるかもしれない。
けれど、
「ケイが一緒なら、私はそれだけで幸せだよ」
「ああ、俺もだ」
2人一緒なら、大丈夫。
「ケイ」
「なんだ?」
「これからも、ずーっと、いちゃいちゃしようね」
「もちろんだ!」




