どう思っているかなんて、まだわからないから
目が覚める。下腹部にすごく違和感があった。
思い出せば、顔が赤くなる。ケイのが俺の中に入ってたんだよなぁ……。
ケイの顔を見る。すやすやと寝息を立てて寝ている。なんか、かわいい。
ぎゅっと抱き着いて、目を瞑る。なんか安心する。
そのまま、眠ってしまおう。だってまだ疲れてるし。眠たいし。ぎゅってしてたら安心するし。
次に起きた時は、ケイはいなかった。
……恥ずかしい。恥ずかしい!恥ずかしい!
なんでケイにぎゅって抱きついてるの!?
なんで裸のまま寝てるの!?
とにかく隠れたい一心で、シーツに包まる。
ケイが何かを持って部屋に入る音がする。多分、体を拭くための水とかだろうか。お腹を触れば、べたべたして気持ち悪かった。
ケイの呼ぶ声が聞こえる。
なんでか、今は見られたくない。裸も、真っ赤にしたこの顔も。
「ほら、身体拭くからそれ取れって」
ケイに無理やりシーツを取られそうになる。
顔の部分だけ見えてしまった。
真っ赤な顔が、ケイに見られる。
「……自分でやるからでてけ!」
蹴ってやった。ケイは動じない。
やれやれといった感じに、ケイは部屋から出て行った。
急いで身体を拭く。お湯が暖かく、気持ちがいい。
深呼吸して、気持ちを落ち着ける。
なんで、なんで、ケイのことを考えると、ドキドキする。
心まで女の子になってしまったのだろうか。
いや、きっと、ヤってしまったという事実に、勘違いしているだけだ。
いそいそとワンピースを着直す。
はは、女の子の服も着慣れたもんだな。
「……もういいよ」
扉の向こうのケイを呼ぶ。
入ってきて早々に、俺を抱きかかえて、ベットに座り、俺を膝の上に置いた。
後ろからぎゅっと抱き着いてくる。
……嫌じゃない。と思ってる自分がいる。
ケイが何を考えているかわからない。
俺のこと、どう思っているんだろうか。
「……なんでこんなことするんだよ」
そんな風に聞いてみる。
ケイは罰だと言った。
ケイから逃げた罰だと。
俺が、女の子になった、この身体を受け入れるまで、続く罰だと、そう言った。
それまで、たくさんかわいがって、いちゃいちゃすると言った。
俺は、何も言わなかった。言えなかった。
……ちょっと期待してるなんて、言えなかった。
次の日から、一人称を、『私』に変えられた。次の日?いや、もうちょっと前からか。昨晩もお盛んでしたね。
慣れないし、恥ずかしいから、なるべく自分のことを呼ばないようにした。
完全には無理だけど。
ケイと一緒に買い物をする。主に、私の服やなんかだ。
下着屋さんの近くで、ライラさんという人に出会った。
なんでもギルドの受付嬢をやっている人らしい。
なんか、こっちの世界に来てから、人見知りというか対人恐怖症というか、そういう感じになった気がする。ケイ以外に、敬語が抜けない。
ほぼ間違いなく、あの女奴隷のせいだろうけどな。ちくしょう。
それはそれとして、その初めて会った女性と、一緒に胸のサイズを測っている。
測り方も教えてくれると言って、ライラさんは、自分の服を脱いで、実際にやって見せてくれた。
……Aの70。これは、誰にも言わない。
その後に、私の胸も測ってもらう。
「それにしても、サツキちゃん、おっぱい大っきいよねぇ、……うらやましい」
ボソッと喋ったの聞こえてますって。
私自身は大きくて良いことなかったけれど。やらしい目で見られてばっかりだし。
サイズがわかった途端に、ライラさんが大声で叫ぶ。
その声に、ケイがやってくる。
ライラさんは平然と顔だけでして、ケイと話す。
それよりも服着て!ケイに見られるから!後、私のサイズ勝手にバラすのはやめて!
「ちょっとライラさん、早く服着てっ」
思ったよりも大声になってしまった。
あれ、今のってケイにも聞こえてた……?ごめん、ライラさん。
それで、買ったブラを着けてもらう。
本当は着けたくなかったけれど、着けたら胸が安定した。なんだろうか、この安心感。
ふと思う。白いワンピースって、ブラつけてなかったら、乳首も透けて見えちゃうんじゃないだろうか。
うん、ブラって大事なんだな。今日から、ちゃんと着けよう。
その後は、一緒に服を選んだ。
女の子の服って、男物と違っていろんな種類があって楽しい。
そりゃあ、着るのはまだちょっと抵抗あるけれど、一回来てるんだし、選ぶのとはまた話が違うしね。
ライラさんとお互いの服を選び会う。
あれもいいけど、これも捨てがたい。
このスカートがかわいい、こっちのチュニックも気になる。
そんな風に、何時間も、ずっと服を選びあった。ずっと話してるうちに、敬語も抜けてきた。
ケイはなんか、壁に寄りかかって、器用に寝てた。待たせてごめんね。でも、まだまだかかる。
ライラさんがこっそり話しかけてきた。
「サツキちゃんは、ケイ君のことどう思ってるのかな?」
「うぇ!?ど、どうって……」
どう、思ってるんだろう。
まだ、わからない。
「奴隷だから、嫌なのに、無理やり一緒にいるんじゃないかなって、おねーさんは不安だったり」
ライラさんが何歳かは聞いていないから知らないけれど、多分そう歳は離れていないと思う。……見た目のせいで年下に思われてるんだろうな。
ってそうじゃなくて。
嫌ってことはない。親友だし。
でも、親友だからってだけじゃ……ないのかも?
「嫌、じゃないよ。ケイとは、一緒にいたいから一緒にいる。もちろん、奴隷になっちゃってるからってのもあるけどね」
そんな風に、私は返した。
ライラさんは、安心したような顔をして、そっか、とだけ言った。
服を買った後、ライラさんは他に用があるらしくて、お別れすることになった。
こそっと、ケイに聞こえないように、私に耳打ちしてきた。
「それじゃあ、デートの邪魔してごめんね。後は頑張ってね」
「ちがっ!違うから!」
せっかくケイに聞こえないようにライラさんが話してくれたのに、大声をあげてしまった。
だって、デートって。そんなんじゃない、し。
私は顔を紅潮させる。
ケイが私に尋ねてくる。
「なぁ、ライラさんになんて言われたんだ?」
「……なんでもないっ」
私は、誤魔化すことにした。
何を言われたのかも、自分の気持ちも。
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