圭にまた会えて、嬉しくない訳ないんだから
俺はまたあの女に連れられていた。
いつもと違って、未だ意識を戻しては貰えず、けれど、乱暴なこともされなかった。
不気味なくらいに優しく、丁寧に体を拭かれる。……それはもう、隅々まで。
「これであなたともお別れなのね。寂しくなるわねぇ」
俺としては一刻も早くここを出たい。この女とはいたくない。
何か反撃になるようなことを言いたかったが、ちょっとびびって言えなかった。というか意識が戻ってないので話すことすらできなかった。
「それにしても、いい男に買われたわねぇ。あそこも、とっても立派そう」
語尾にハートマークでもついてそうな勢いで、勝手に喋る女奴隷。
圭のあれとか、見たことは、ある。そりゃあ元々は男だったし?銭湯とか、そういうところでは、ねぇ?
でも、今となっては、ちょーっと見たくないかな。
あれが俺のここに入るとか……げふんげふん、期待とかはしていない。女奴隷の調教の結果だとか、思いたくもない。
表面上はぼーっとした顔だけど、水面下では謎の葛藤をしていた。
「まぁ、いいご主人様に、いっぱいかわいがってもらうんだよ?私から言えるのはそのぐらいかしらね」
心の中で首をブンブンと横に振った。
圭に可愛がってもらうなんて、そんなのはごめんだ。
俺は、圭とは親友でありたい。こんな身体になったけれど、それでも親友だといいたい。
あれだけ逃げてたのに、都合がいいなぁ。
後で、ちゃんと謝ろう。あの日のことを謝ろう。
女物の白いパンツと、白いワンピースを着せられながら、そんなことを考えた。
なんて時期が俺にもありました。
俺は圭に抱きかかえられたまま、街を移動している。所謂お姫様抱っこだ。
意識も戻してもらえていない。
さっき助けてやるみたいなこと言ってたよね?
なんで羞恥プレイみたいなことされているんだろうか。
圭はと言えば、すごくご機嫌だ。俺は不機嫌だ。
後で蹴飛ばしてやる。そうしよう。
でも今は、ただただ恥ずかしい。
なんでかわからないけれど、やたらとこっちを見てくる人が多い気がする。
お姫様抱っこが珍しいからだろうか。いや、でも街でお姫様抱っこで歩く人がいれば、俺も見ちゃうな。
俺も命令されているせいで圭にぎゅっとしがみついているから、仲がいいように見えるのだろうか。
意識が無いせいで、顔に出ないのが救いだった。
どこかはわからないけれど、宿屋だろうか。店主のおばちゃんと、ずいぶん親しげだった。よく泊まりにくるのかな。
話も早々に、部屋に連れ込まれる。
「そぉい!」
なんて掛け声の割に、そーっと、割れ物を扱うかのようにベットに寝かされた。
まだ命令は解かれていないので、意識は戻らない。
さっさと解いてくれないかな。話したいこととかいっぱいあった筈なんだけど、まずは一発殴りたい。
……ってぎゃー!スカートめくるな!バカか!バカなのか!?
なんで!?なにしてんのこいつ!?
俺のパンツ見て何が楽しいの!?
っていうかすっっっごく恥ずかしいんですけど!
男の時とか、酒場のお客さんの時には、まぁ恥ずかしかったけれど、こんなに恥ずかしくなかった!
もうわけわかんない!
とりあえず殴る!殴り飛ばす!
圭のあの、満足そうな顔を引っ叩く!
俺は心にそう決めて、目覚める時を待った。
結論から言うと、俺の攻撃は圭には効かなかった。
全力で殴ったけれど、逆に俺の手が痛かった。
なにあの筋肉。男の時の俺よりも強いんじゃないだろうか。たくましいのに魅力を感じるような気がする。
とりあえず溜まっていた鬱憤を晴らすべく、圭に怒鳴りつける。
なんか途中で、勢いに任せて、恥ずかしいことも言った気がする。助けに来てくれて嬉しかったとか。
ポカポカと圭を殴る。……叩く?とにかくそんな感じだ。
しばらくすると、もう疲れた。
こんなに体力なかったかなぁ、俺。
随分と弱っちくなった気がする。
「で、他に言うことはない訳?」
圭がそんなことを言う。
ここだ!ここで、あの日のことを謝ろう。
「助けてくれたことは感謝している……ありがとう」
つい、照れてしまって、違うことを言ってしまった。本当はちゃんと謝りたいのに。どこのツンデレだ。
それと、つけなれないから、首の奴隷具がすごく、煩わしい。
だから、圭に尋ねる。
「で、これはいつ取ってくれるの?」
「何勘違いしてるんだ?」
「え?」
「俺のバトルフェ……じゃなくて、それ、外す気なんかないぞ?」
……え?
なんて言った?
外す気がない?
なんで?どうして?why?
意味がわからない。
じゃあ、俺は、ずっと、圭の奴隷ってこと?
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
なんでどうしてと、圭の肩を掴んで揺らす。
圭は何も言わず、流れに身を任せている。
しばらく揺らすも、疲れて止めた。
それから圭と、話をした。
俺を金貨30枚で買ったこと。ずっと俺を探してくれていたこと。奴隷になっていた俺を見つけて、すぐに買ってくれたこと。
聞きながら、いつのまにか少し泣いていた。
気づかれないように我慢しているけど。この身体になってから、涙腺がゆるい気がする。
その後は圭に質問された。
答えたくないことも聞かれたけれど、奴隷具の前では無力だった。
ざっくりとしか聞かれなかったから、深く答えなくても済んだのが救いだろうか。
話しているうちに、圭の目つきが変わった気がする。
この目は、知ってる。
「うし、じゃあヤるか」
「は?」
なんてとぼけてみたけれど、あれは、盛った雄の目だ。
「は?じゃなくて、奴隷なんだから、ヤらせてもらうだけだけど?」
「何をする気だ!」
ナニなんだろうなぁ。
俺はもう諦めていた。というか、ちょっと怖かった。
俺の知らない圭がそこにいる。
圭は俺を抱きかかえ、ベットの上に押し倒した。
ベットの上に押し倒されて、俺は身を縮こまらせる。
圭が、何かするのが見えた。
それをされたら、俺はーー
「じゃあサツキ、『エッチなこと、しようぜ』?」
もう、逆らえない。
奴隷具に、そういう気分にさせられる。
身体が、期待している。期待することを、頭の中で考えてしまう。
女奴隷にされた、気持ちがいいことを思い出させる。
それを圭にされる。
恥ずかしいけど、嫌ではない。……気がする。
「……はい」
俺は、その日に、初めてを体験して、『女』になった。……いろいろな意味で。




