男だったけど、今は女の子で奴隷だから
前回に引き続き、気分の悪くなる内容にお気をつけください。
「あの盗賊も酷いわねぇ、売りに出すというのに、殴りつけるなんて」
俺は今、奴隷の女に治療を受けている。名前は知らない。向こうも俺のことを、銀髪から銀ちゃんと呼んでいるから気にしないことにした。
変化したことといえば、服は捨てられたのか、代わりに麻袋を被せたようなものを着せられていたこと、首輪の先に鎖がついたものをつけられていることだろうか。
この治療を受ける前に、走って逃げ出そうとした。そうすると、意識とは裏腹に、身体がだらんと動かなくなって、そのまま運ばれてしまった。
この首輪自体が、奴隷に命令を与える道具ーー奴隷具と言うらしいーーになっているそうだ。
そのせいで、脱走できないようになっている。
俺にできるのは、誰とも分からない主人になる人物を待つことだけらしい。
「ねぇ、あなた、セックスはしたことあるの?」
俺は思わず吹き出した。
あまりにも直球すぎる質問だった。
「お、俺はそんなことしたことない!」
思わず素で返してしまった。
思えばこれがいけなかったかもしれない。
「ふーん、そっか、そう言う喋り方、するのね」
奴隷の女はニタリと笑った。
俺は何が気に入ったのかわからず、その不気味な笑いに恐怖した。
「ふふっ、楽しみだわ、ご主人様に報告しなくちゃ。怪我は大丈夫かしら」
不気味な女の問いかけに、俺はコクコクと頷いた。
それを見た女は、俺の首輪に繋がれた鎖を引っ張り、歩き始めた。
首輪が引っ張られる。女の足取りが、俺よりも早い。俺が足を止めれば、首が絞まって苦しくなる。だから、小走りで急いでついていく。
それを見た女は、満足そうな顔をする。
足取りがさらに早くなる。
それ以上早くなったら、走らないと、でも、足がもつれて、転んでーー
「痛い!痛い!痛い!」
俺は転んでしまい、引きずられてしまう。
首が締まる。それを抑えるために首輪に手をかける。引きずられたままだと、足だけじゃ立てない。身体ごと、引きずられる。
女は歩くのをやめて、こちらに近づいてきた。
「あらあら、転んじゃったのね。治療が必要かしらね」
俺は女が近づいてきたことが怖かった。
またさっきみたいに、引きずられるかもしれないという恐怖が、俺の脳に焼きついている。
女は、ボソッと、こう言った。
「逃げようとしたり、男の子みたいな言葉を使ってみなさい。さっきみたいな、ううん、さっきよりも酷い目に会うかもしれないわね」
あははははと女は笑う。
俺はいつの間にか泣いていた。
痛くて泣いたんじゃなくて、怖くて泣いていた。
俺が俺でなくなるような、そんな恐怖を感じていた。
1日のうちほとんどの時間を、檻の中で過ごす。
食事も檻の中で。
檻の中には俺しかいない。
近くに別の檻があって、そのなかに他の奴隷もいるようだったけど、誰も話したりしようという気はなかった。
俺も、話そうとは思わなかった。
勝手に話したりして、またあの女に何かされるのかと、考えただけで怖かった。
自分で勝手に恐怖して、檻の中でガタガタ震えて過ごしていた。
ある一定の時間になると、女が俺を檻から出して、奴隷館のいろんな部屋に連れ出す。
キッチンだったり、リビングだったり、ベットの上だったり。
そこで、女の奴隷としての知識を身につけさせようという、いわゆる調教だった。
料理だったり洗濯だったり、そういったことを主に身につけさせようということだったが、そこは俺には女子力のチートスキルがある。
なので、そういったことは普通にできるのである。
ただ、うっかり男言葉を使ってしまった時が酷かった。
男言葉を使ってしまうと、お仕置きをされる。
例えば、手足を縛られた状態で、トイレに行かせてもらえずそのまま、とか、色々見えてしまっている恥ずかしい格好で、他の奴隷の前を歩かされたりなど、思い出しただけでも、恥ずかしい思いをさせられた。
それが嫌で、しだいに言葉遣いが、女の子のそれになっていくのが、自分でもわかった。
それから、男性の悦ばせ方も教え込まれた。
まず、自身の感じるところの開発から始まり、女に身体中弄ばれた。
胸や、あそこなど、執拗に責められた。
それだけならまだよかったかもしれない。
男性のそれを模したおもちゃを、舐める、咥える、挟む、など、いろいろなことを仕込まれた。
この時には、あまり深く考えないようにしていた。
考えると、俺が俺じゃなくなる気がして、それが怖かった。
奴隷になって2週間が経った。
俺は今日も檻の中にいる。
カツンカツンと足音が聞こえる。
あぁ、女が、今日からお前も商品として売られるって言ってたっけ。そのせいなのだろうか、意識を奪われ、ただボーッとしている。内面に意識はあるけれど、身体は言うことを聞いてはくれない。
知らない男に買われるのだろうか。嫌だけど、もうどうしようもない。
奴隷商の声が聞こえる。
誰かの声も聞こえる。
ボーッとしているせいで、顔がよく見えない。
何か話をしているのが聞こえる。
最後に、俺の檻の前で、ハッキリとした声が聞こえた。
「皐月。今そこから出してやるからな」
会わす顔がなくて会えなかった、だけどずっと会いたかった、親友が、そこにいた。
サツキちゃんかわいそう!と思った方は、是非作者を罵ってください。
感想、等々お待ちしております。




