別れ
ここは、ナクオマイウ島にあるアグロマウス村。その村にある一軒のぼろい家があった。この家には母と子の親子が住んでいた。
金髪に青い目を持つ少年がベットに寝ている、金髪に青い目の女性を見ていた。少年の名は『ウザル=カイム』。女性は、カイムの母で名を『アグセイリン』と言った。
アグセイリンがウザル=カイムに、苦しそうに「あなたの祖父から指輪を渡されました。村長に預けてあるので、村長から『聖雷の指輪』を貰いなさい。」と言うと眠るように亡くなった。
カイムは「お母さん!」と嘆いた。
母が亡くなり2日後。ウザル=カイムは、村長宅に呼ばれた。白髪の村長『アイゼンバルク』が、ウザル=カイムに『聖雷の指輪』を渡した。すると、村長が、「お前は来月で18歳じゃな!お前がこの村に来て16年。月日が立つのは早いのう。
お前の付けてるネックレスはアグセイナリンから貰ったものじゃな!それには、獅子の紋章が付いているだろ。」と言った。カイムは、ネックレスを手に取りみつめた。村長はさらに、話を続けた。
「それは、タンベス王国四大騎士家の一つ『ウンエンス家』の本家の人間が着ける紋章だそうだ。お前は知らないだろうが、この島は、昔タンベス王国が統治していたのじゃ。これは、昔この村に来たウンエンス家9代当主『コロンナンス』に聞いたのじゃ。
コロンナンは、今から、41年前の春にこの村へやって来た。彼はこの村で、当時19歳だったお前の祖母『コルナ』に一目ぼれした。そして、39年前の秋、『アグセイリン』が生まれた。村の人には、コロンナンスは自分がウンエンス本家の後継者であることを内緒にしていた。
38年前の春。コロンナンスが3年間の任期を終えて第8騎士群本部へ帰る時、コロンナンスはコルナに自分がウンエンス家の後継者であることを告げ、一緒に来るように言ったそうだ。しかし、彼女は1歳になる娘と一緒にこの村に残ることを決めた。彼女が言うには、その子に貴族の争いに加えたくなかったそうだ。
ふたりの別れから8年の月日が流れた。そう今から、30年前の冬。寒い日の朝だった。コリナが亡くなった。死因は、当時逸っていた感染病で名を『喉肺炎病』て言ったかな。その当時、人口約300人のこの村でも、コリナも含めて28人が亡くなった。ほとんどは、50歳以上の年寄りだった。コリナは、当時29歳。早すぎる死じゃった。
当時まだ9歳だったアグセイリンは母親に死なれて独りになってしまった。彼女は私が世話をして育てたんだ。
コリナが亡くなったことを知ったコロンナンは、すぐに使者をこの村に送って来た。使者は、この国の首都『タンベス』にあるウンエンス本家に彼女を引き取りたいと言った。次期当主の筆頭候補であるコロンナンには、アグセイリン以外の子供が1人も産まれず、養子を1人取っていたそうだ。アグセイリンは、首都に行くことにした。
そして今から19年前、『グマラマ帝国』の世界占領作戦が開始されたと風の噂で伝わって来た。当時、村長をしていた『エルディラ』は、ここは辺境だから大丈夫だと考えていた!村の人達も同意見だった。
アグセイリンが村を離れて14年後。今から16年前、暑い夏だった。そんな夏に旅人がこの村にやって来た。それは、23歳になるアグセイリンと1歳のお前、そしてお供の女性2人の4人組であった。アグセイリンが1歳のお前を連れているのを見た時、わしや村人達は、とても驚いていたぞ。
アグセイリンは、「今から、6週間前。タンベス王国にグマラマ帝国が侵略をはじめました。数年前より対策を考えていたタンベス王国は、すぐに国民たちを疎開させました。
疎開には、2週間掛かりました。国民達の疎開が終わると父は、私に疎開するようにいってきました。
そして、タンベス城が今から2週間ほど前に全面包囲されました。父はこの子を助けるために、この村に帰るように言いました。このことを予測していた国の人々は、脱出用の通路を8本掘ってあったのでその一つを使い脱出しました。
この子の父親は、『グマラマ帝国』に殺されました。私の父は王女と一緒にレジスタンスを組みました。他の親族はほとんど死ました。本家の血筋を引く人間は、私とこの子、父・父の弟『ルリマナン』だけです。そして、直系の男児であるこの子がウンエンス家10代当主筆頭候補です。しかし、このことは秘密にしてください。」と言った。今、渡した指輪はその時アグセイリンから預かったものじゃ!
その時、一緒に来たお供の女の1人はこの村に来て3年くらいで亡くなった。もう一人は、村の教会にいる『エスティ』さんじゃ。彼女に聞けばもっと詳しいことを知っているじゃろう。
そして今では、お前さんも知ってるようにグマラマ帝国が世界の8割までを支配している。彼らは、世界一の大国となったのだ。世界の各国ことごとく帝国に壊滅された。
そして、旧タンベス王国王女達は、レジスタンス『風の歌声』を結成したそうだ。
もし彼らのところに行きたいなら、イクン町長に手紙を書いてやろう。すぐになくてもいいから、よく考えるじゃよ!」と村長は言った。