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何歳までサンタクロースを信じていたかね

 誰なんだ、こいつは。その辺の試験官とは決定的に何か違う。どうか優しさで満ち溢れた何かを感じる。狂気とも捉えられるし、恩赦とも感じ取れる。


 「いいや……ちょっと違うな。あなたは確かに誰かを愛している。それは限りなく仲間意識に近い……いや、忠誠心かな。まるで使役される事が極上の喜びと感じている。だが、あなたの『子供が好き』はまるで個人を特定しているようだ。確かに幼女好きには変わらないでしょうが、サンタクロースに要求されている物ではない」


 細かい……俺が奴の心理を読み取るどころか、完全に気持ちが大公開ではないか。もう手に取るように把握されていると言っても過言ではない。


 「いや、もっと純粋に雑念があるな。今の自分の脱却。まるで過去を捨て去る気持ちですね。サンタクロースになる事で第二の人生を歩みだそうとしている。だが、それはサンタクロースでなくてはならない理由ではない。最後に縋ったのがこの場所というだけ」


 完全にバレている。もう駄目だ。この人に向かって嘘が効かない。面接試験では上等手段である『嘘でも話せる』という長所が消え去ったと言ってもいい。これから発する俺の言葉にどれほどの意味があるだろうか。奴には全てお見通しなのだから。


 いや、だからこそ……俺が不正行為の犯人だと言及してこないのか。俺が犯人じゃないと明確に分かっているから。こいつの目の前に嘘は効かない。これであの爪研ぎ野郎も撃沈だな。だが……このままじゃアフロに先を越される。


 「いや、一番の原因は君がまだ子供だという事だ」


 「そんな、この試験に年齢制限なんて無いはずじゃ」


 あの国谷朝芽は俺と同い年であり、俺より三年前にこの試験を合格している。奴が俺よりも精神年齢的に劣っているとも思えない。どうやって奴の言葉を納得すればいい?


 「君はサンタクロースを何歳まで信じていたかね?」


 「えぇ?」


 「さあ面接試験の最中じゃぞ。君は何歳までサンタクロースを信じていたかね」


 信じていたも何も、俺は本物のサンタクロースを目撃してしまっている。これはもうサンタはいると確信せざるを得ない程に。何を今更、そんな質問を。いや、子供の頃の話か。そうだな、明確な時間は思い出せないが、おそらく俺は…。


 「初めから信じていませんでした。サンタの存在を」


 多くの人がそうじゃないのだろうか? 造作の物語ではサンタを信じている奴は多いが、実際にサンタを信じている子供などいない。だって、親がサンタの格好に扮する家族などは稀だ。日本は無信教の国であり、クリスマスを真意にイベントとして決行している家庭がどれほどある? せいぜい若いカップルがイチャつく要因でしかないじゃないか。俺だって去年まで毎年の12月24日など、必死に修行を夜中までしていた。


 「そうじゃ……最近の子供はワシらを信じない。夢がない、信じる気持ちがない。だから郵便が来ない。だからプレゼントが受け取れない。そんあ子供をわしらは『子供』とは呼ばない」


 じゃあ俺は……。

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