お爺様の部屋
決意を胸に廊下へ飛び出した俺だったが……やはりサンタの理事会が、俺にとって良くないの事態を招いていた。サンタクロースの格好をした若い男が三人ほど、俺の部屋の前に立っていたのだ。ヤルセナイという顔をしている。目的は俺の捕獲だろう。
「霧隠三太君だね。試験官の者だ、少し我々と同行して貰えないだろうか」
「はい……」
やはり俺が疑われている……奴らの判断は俺が犯人という決断だったか。まあ一番にそんな真似をしそうなのは俺だろうからな。一次試験は掟破りな猿芸で乗り切り、二次試験中は不安に挙動不審。更には試験官の一人とパイプがある。
「お爺様が今から君とお話があるそうだ。面接試験を前倒しで君だけは今日からするという意向になったらしい。準備が出来次第に我々に声を掛けてくれないか?」
前倒し……俺を試験管を騙してカンニングをした卑怯者として、公開処刑する算段ではないのか? どういう意味だ? 面接試験を俺だけ今日するなど……そんな真似が許されるのか?
「何を考えているんですか? どうして私だけ前倒しになるんです? ちゃんと意味を説明して下さい」
「それは出来ないよ。私たちが聞きたいくらいなんだ。お爺様は試験結果は明日に発表する。優劣には絶対に影響しない。試験も真面目にする。そんな言葉を並べるだけで、具体的な理由や、今この会場で起こっている異常現象への対処などは、全くおっしゃらないんです」
これは……俺とタイマンで嘘つきかどうか、炙り出そうとする話か。確かにカウンセラーの専門家なら有効な手段だ。想定外の事態に、孤立した状態の完成。極度の緊張感、それらをプレッシャーとして押し付けて、虚偽を抉り取る。俺を犯人だと睨んでいるなら、これ以上にない良い作戦だ。
しかし、俺は残念ながら犯人じゃない。この一連の不正行為の犯人はあの爪研ぎ眼鏡だ。どうしてそれを分かってくれないのだ。このままじゃ、三次試験でもアフロやその場に居合わせた試験官が危ない。今度は頭痛や吐き気じゃ済まないかもしれないんだぞ。
「……分かりました。今からでも大丈夫です。試験を初めて下さい」
試験官たちは顔を見合わせると、俺の覚悟を察してくれたのか、そのままお爺様のいる部屋へと案内してくれた。少々、予定より早いが……最終決戦だ。
「お爺様。受験生を連れてまいりました。霧隠三太君です」
「おぉ、入って貰ってくれ」
中に入ると、そこにはまるで雪山にひっそりと暮らす木こりの家のような部屋だった。今までの近代的な世界観は消え去り、そこには木製の一世代古いような部造りになっている。あったかい暖炉がある、おそらくこの部屋は機械的な暖房器具が使われていない。洋式の椅子や机。その上にはツリーの飾りつけに使うであろう飾り物が。下は絨毯で覆われ、ソファー、ベッドがある。子供の玩具もいくつか床に散乱しており、積み木や木製の機関車、絵の具なんてものもある。




