サンタの心構え
「じゃあ説明するけど、その前にあなたはサンタが一体どんな仕事をするのかちゃんと把握している?」
そりゃあ、夜中にトナカイを引き連れて橇の上に玩具の白い袋を持って、煙突から他人の家に潜り込んで、子供が用意している靴下の中に玩具を入れて。また煙突から出てを繰り返す作業。
「子供達に玩具を配り歩く仕事だろ」
そういえばサンタの必要経費、つまりは購入代金やトナカイの一年間のエサ代、服にも実際は金が掛かってそうだ。子供達から調達している訳は無いはずなので、一体どこから資金を調達しているのだろうか。
「…………まさか面接でそう言うつもりじゃないよね」
……それを想定しろと先に言って欲しい。だが確かに俺には試験管からの『さんたの仕事は何か』と言う質問を正確に答えを知らない、これは考えておいた方が良さそうだな。
「じゃあ模範解答を教えてくれよ。お前ならサンタの仕事は何かという質問に対し、どう答えるんだ?」
「そりゃあ、子供達に夢を送り届ける仕事ですって答える」
絶対に不採用だろ、そんな事言う奴。聞かれた質問に対してなんて曖昧な受け答えなんだ、何の要点も付いてないじゃないか。俺ならそんな奴は即効で不採用にする。
「馬鹿にしているのか。そんなふざけた台詞で合格する訳がないだろ」
「でも私はこれで合格したよ」
試験官の合格判定の基準がさっぱり分からない、よほど面接以外の試験内容の評価が高かったのだろうか。にしては前回の容量を見ていると、こいつが実技をそんなに高評価に取れるとは思えないのだが。
「大事なのはサンタとしての気概だよ。いかに自分がサンタであるというプライドを持っているかってことだね」
そんなことは重要じゃない、大切なのは技術だ。いかにサンタに必要な素質と能力を身に着けているかだ。面接だってそれを測る為の一環のはず。下らない精神論や、何の効果の無い気合いなど、そんな余計な物は無いに限る。
待てよ、俺は忍者の存在をサンタと被せてしまっているのではないか。俺はこの歳になるまで両親や周りの環境から忍者の極意を習ってきた。だから俺の頭の中には、忍者的な考え方しか残ってないのもしれない。
俺が目指しているのは、忍者ではなくサンタだ。無料で玩具を配り渡る慈善事業爺様団体だ。こんな一般常識から外れた殺し屋の発想では、優しさの塊とも言うべきサンタクロースになれるはずがない。
俺が間違っているのか……。
「教えてくれ、面接のテクニックとか、都合の良い言い回しとかじゃなくて、その……サンタであるべき人間の心の在り方を」
そうだ、俺はサンタだ、サンタになるんだ。今までの忍者の心構えは取っ払わなくてはならない。でなければ、サンタとしての一歩をいつまでも踏み出せない。




