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実家からの追放

              ★


 ありのままを両親に話した、今回の事件の。

 これまでの人生を振り返っての言葉や、怒りと愛情の怒声もなかった。ただ一言、「達者でな」と言われたっきり、俺は兄弟の帰りを待つことなく、16年間生活してきた実家から荷物を背負い飛び出した。俺は忍者になれなかった、だから俺はもう家族じゃない。


 「さて、寄り道する場所なんかないし、あの桜台の娘のいる家に行こうか、佐助」


 佐助は俺を慰めるかのように小さく鳴いた。こいつにも、申し訳ないことをした。俺が家から追い出されたことで、こいつも巻き添えになったのだから。


 家の玄関を出た、俺の家を眺める。お疲れ様、今まで育ててくれてありがとうという未練を多く残し、俺と佐助は見慣れた道を歩き始めた。


 「寒いなぁ~、佐助。来年から俺達はどうなちゃうのかな」


 などと愛犬との会話で寂しさを紛らわそうとした時に、目の前にあいつが現れた。今度は赤と白のサンタ制服ではなく、マフラーに温かそうなパーカーを着た国谷朝芽の姿が。


 「パーティはどうしたんだよ、つーか何故俺の実家の場所を知っている」


 「私もすぐに帰ったわよ、お爺様からちょっと怒られた。まあ、今回が初めてだったからなのと、子供の方のイレギュラーを考慮して、大目に見て貰ったけど。そして私はサンタよ、家の場所くらいすぐに調べられるわ、サンタネットワークを駆使すればね」


 なんだそれ、まあいい。確かにサンタ相手に『なぜ居場所が分かった!!』なんて愚問だったな。大目に見て貰ったか、羨ましいと思う。俺ら忍者は厳しい、たった一度の失態も許されない。自分だけでなく、関係者全てを危険に晒すからだ。


 「俺は家から追い出されたよ、これで本当に俺は夢を失った。しばらくは桜台の家で仕事だ。そこでもクビになったら、俺は本当に終わりだな」


 「桜台制覇さくらだいせいはちゃんよ」


 「は?」


 「だからあの子の名前、桜台制覇って言うんだって。友達になったから、教えて貰ったんだ、あんたもこれから雇って貰う人の名前くらい覚えておきなさいよ」


 ……そうか、制覇っていうのか、あいつの名前。すげぇな、キラキラネームなんてレベルじゃねぇ。生き様がそのまんまじゃねーか。


 「でさぁ、ちょっと罪悪感があるんだ、私」


 罪悪感、よく分からないな。お前も俺も、ただ純粋に己のすべきことを真っ当しただけだろう。その結果はどうであれ。自分への後悔なら持つべきだと思うが、俺に対しての罪悪感など無用だ。


 「私が邪魔で任務を失敗したんでしょ。あんたは私のせいで夢を諦めることになった。どうしてあんなに違和感あったのに、気付かなかったんだろう。いや、あんたに気遣ってあげられなかったのだろう」


 それこそ無用な気遣いだ。俺が精神力と状況判断能力が無かっただけだ。忍者ならば任務においてのイレギュラーは、当然のごとく把握して戦わなくてはならない。本物のサンタが出現したくらいで気が動転しているくらい、俺は忍者の素質が無かったということである。


 「気にするな、就職先は決まったんだ。俺はまだ露頭に彷徨わなくて済んだ。あのまま任務に失敗して、他の連中のように牢屋に入らなくていい分、助かったんだよ。俺はまだ16だぜ、夢なんてまたこれからの人生で探すさ」


 ……国谷は何も言わない。ただ悲しそうにうつむいている。


 「お前と桜台が友達になったって言うなら、またあの屋敷で会う機会があるかもな。じゃあ、俺はこれで」


 別れの挨拶も満足にせず、気まずさからの解放の為に、国谷の横を通り過ぎようとしたその時だった。腕をきつく締められた、引き留める感じで。


 「待って、あんた…………サンタ資格試験。受けてみない?」


 

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