本当の自分
「えっと……サンタ資格試験?」
「そうそう、あんた。忍者になれなかったなら、サンタになればいいじゃない。きっと似合うと思うよ。丁度、この時期に応募があるんだ」
応募って、サンタって資格試験でなるものだったの!?
いや、確かに俺は他人の家にアポなしで、土足で踏み荒らすという点では、サンタと忍者は同じ穴の貉だと言えるが、俺のこの十年間近くの努力が生きる絶好の仕事だとは思うが。
俺が目指した夢は、サンタではなく忍者だ。確かにその夢は儚くも無残に散ったが、叶わぬ夢になったからといって、すぐさま手の平を返すのは、良心が痛むというか、プライドが邪魔すると言うか。
「俺にサンタなんて無理だよ。俺は確かに不法侵入だけは得意だけど、トラブル時の対処とかに才能が無いことは前回で分かっただろう。深読みし過ぎて、自爆したりもするし。俺に子供達に夢を届ける仕事なんてやる資格はない」
「だから今から、その資格を得る為に試験を受けるんじゃない。大丈夫だよ、あんたのその気色の悪いロリコンパワーさえあれば、乗り越えられる!!」
「俺は本当はロリコンじゃないんだ、あれはお前を騙す為の演技だったんだよ。本当は別に小さな女の子とか、とくに興味がないんだ」
「いや、そんなことはない。例え演技のつもりだったかもしれないけど、それでもあんたは完璧に変態として様になっていた。あれはきっと心のどこかに、あなたの本心があったからよ。あなたは自分で気付いていないだけ、きっと世間の柵に囚われて、本当の自分を封印しているのよ」
いや、冷静に自分に自問自答してみたが、やっぱり俺はロリコンじゃない。
「本当の自分に目覚める為に、あなたはサンタになって、夜空に舞う希望のサンタになるの。これ、応募用紙」
無理矢理、手に紙を握らされた。俺がロリコンかどうかはともかく、このまま桜台の忠犬として生きるより、何か俺にしかない個性を保つのは、重要かもしれない。このまま現実に項垂れているより、前を向いて夢を追い掛ける方がよっぽどマシだ。
「分かった、受けてくるよ。合格するか分からないけど、俺に適性があるかどうか分からないけど、取り敢えず挑戦だけはする。でも、ロリコンじゃないってとこだけは、譲らないけどな」
国谷はにっこり笑った。自分の思い通りの展開になったのが嬉しいのか、それとも純粋に俺のことを応援してくれているのか。疑いすぎる性格の俺には正直、分からない。だが、俺はそんな正体不明の笑顔が普通に嬉しかった。
一話終わり




