番外編 クロの昔の話
僕は生まれた時から、要するに戸籍の無い子だった。
家も身寄りもなく、毎日盗みや食い逃げやかっぱらいでどうにか食いつないでいた。
失敗して捕まった時は、何度も何度もぶたれて投げ捨てられた。
何度も経験を積むうちに上手になって行き、ほとんど失敗しなくなった。
生きていくためには仕方ないけど、普通に食事や買い物してみたかった。
当然だが読み書きも出来るわけなく、言葉も最低限の酷い言葉しか知らなかった。
ちゃんと文字を習って素敵な話を読んで、綺麗な言葉を使ってみたかった。
生まれつきだから仕方ないけど、自分の薄汚れたような色の肌と、真っ黒な髪が嫌いだった。
実際風呂もあまり入れないから、基本的に薄汚れていたし。
毎日お腹いっぱい食べて、暖かいお風呂に入ってみたかった。
そんな風にみじめに暮らしていたある日、その国の組織に保護、もとい拉致された。
それからというもの、ありとあらゆる戦闘教育を叩き込まれ、潰されたり落とされたりはしないものの、相当にえげつない投薬や強化処理を施され、あらゆる武器を与えられ、戦闘兵器に仕立て上げられた。
僕はもともと素質があったのか、かなり早期に相当に優秀な兵隊となった。
陰惨な内容が大半とはいえ、きちんと文字を習え、良質な食事と風呂を提供されたのは嬉しかった。
人を殺すのは嫌だが、きちんと仕事をし認められ、居場所と身分を与えられたのは嬉しかった。
僕は、残酷だけれどもその時幸せだった。
しばらく経ったある日、敵国との激しい戦いの末、僕はその国に捕獲され、兵隊として転用される事となった。




