サクリファイス
「あ、こんにちは。あなたが転校生くんちゃんですよね」
そう声をかけて来たのは、とても慈愛に満ち溢れた笑顔の優しそうな美少年だった。
(…よ、良かった。今度こそまともそうな人だ)
「僕は二年の皆方捧と言います。友人と二人でユニットを組んでいます。残念ながらそこまで売れている方ではありませんが」
「ささぐ君ですね。よろしく」
「…僕は名前の通り、他人に奉仕するのが大好きでして、良くボランティア活動をするんです」
「へー、素敵だね。どんな?」
「色々な事をしますが、一番好きなのは、輸血や臓器提供ですね」
「う、うん」
「この国だいぶおかしいのでたまにいるそうなんですが、僕特殊体質で、あらゆる人にあらゆる部位の臓器が適合するんだそうです」
「ほ、ほう」
「そんな訳でギリ死なないレベルまであらゆる血液やら臓器やらを提供しまくるのが、心の底から大好きなんです。そうしている時、まあ実際そういう事は嫌いなのでしませんが絶頂を感じます」
「け、献身的すぎない」
「まあ他の皆の事情通りこういう国な訳で、死にさえしなければいくらでもクローンや再生技術で部位復活できますし、死んじゃっても復活した蓬君みたいな例もいますし」
「ですので僕、もう脳味噌以外のありとあらゆる所を学業と活動中以外提供しまくってるんです」
「…さ、左様でございますか」
「という訳で今日は暇ですので、これからまたあらゆる所を提供してきます。この国相当治安悪いわけで需要はいくらでもありますし。それではまた」
「…い、行ってらっしゃい」
そう言って彼はとても嬉しそうに去っていった。
少し後。
「ああ、あなたが転校生くんちゃんですね」
また表向きは穏やかな、少し長めの黒髪の美少年が現れた。
(…こ、今度の子は、大丈夫だろうか)
「僕も二年の、比良坂はこべと言います。捧君とユニットを組んでいます」
「…は、はい」
「僕も過去に色々ありまして、捧君と同じように奉仕活動をするのが大好きなんです」
「…ど、どんな事をするの」
「色々やりますが、僕は元から呪法の類が得意なので、それを駆使し人々の力になっています」
「そ、それは立派だね」(…今度こそ、まともな子だろうか)
「こう見えて僕も実は結構な年月生きているんですが、一度死んでいまして」
「…あ、あなたもですか」
「僕が死んだ時代には、まださほどクローンや再生の類の技術が発達していなかったので、どうしようもなくて」
「…ど、どうやって蘇ったの」
「まあスズランくんとは別のタイプですが、敬愛するお師匠様が反魂の術で蘇らせて下さいました」
「…よ、良かったね」
「…ただ、その術はいわゆる禁術で、お師匠様は僕の命と引き換えに亡くなってしまいました」
「…た、大変だったね」
「まああの世で幸せにやっているのは夢枕で教えて下さったのでまだ救われたのですが、やはり心苦しく」
「…で、ですよね」
「そんな訳で人一倍、世界のため、人の為に生きたいと思うようになったんです」
「…い、良いと思います」
「あと、まあ陰惨な表現はしたくないのでぼかしますが、僕もかなり理不尽な死に方をしていまして」
「…あ、あなたもやっぱり」
「そんな訳でそういった輩を、日々呪い殺して社会に奉仕しているんです」
「…や、やっぱりそういう奴ですか」
「ええ、一度死んで黄泉返った影響か、さらに呪力が強くなりましたし」
「そんな訳で、僕達のユニット名は、サクリファイスと言います」
「…た、確かに自己犠牲ですね」
「そんな訳で、僕もこれからお仕事へ行ってまいります」
そう、とても穏やかに彼は去って行った。
「…も、もうやだ、速攻退学したい…」




