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サイドB-63 マーマン装置襲撃と

「それしか方法はないが...ヒューマンたちの守備隊がいたらどうする?」

「破壊した装置は全部で2ヶ所ある。手薄そうなところを選んで襲う」


以前マーマンたちが装置破壊を断念したのは、ヒューマンたちが警備隊を配置し始めたからであった。

その時とくらべて自分たちの戦力もいまは少なく、偵察がメインの部隊だ。

だが守備する相手の戦力にも限界はあろう。

修理が終わって安心したヒューマン側が、無人で放置している設置場所もあるのでは、とハフは想像した。


ハフ、ホロ、ヘレの三人はそれぞれの海中スクーターに乗り込むと、以前襲撃した障壁発生装置の場所まで急行した。

陸上に上がる際、若干持っている魔法スキルで足の先を変異させる。

同時にエラ呼吸から肺呼吸へと変化させるのだが、この一連の動作には10分程度のインターバルが必要だ。

水陸どちらでも生活できるのは、この魔法スキルで体の一部を作り変えることができるおかげであったが、まったくの時間ロスなしにそれをこなすことは難しかった。


三人の装備は背負った直刀と、弾数は少ないが魔力を込めることによりホーリーレイ(聖光線)を打ち出せる銃のような武器だった。

魔法という手段があるため、火薬がまだ発明されてないこの世界では、このような武器は珍しい。

北斗がこれを見たのなら、レーザーガンと喜んだであろうマーマンオリジナルの武器だった。


さらに一番体格が良いヘレは荷物として魔力による爆破装置も数個運んでいた。

これも魔力を暴走させて爆破させるもので、おなじくマーマンたちのオリジナル武器だ。

これ一つで建物までは無理だが、例の障壁発生装置とその周辺機器ぐらいは破壊できる。


「ハフ、変だぞ」


戦闘を行くホロが、後ろも振り向かず小声で伝える。


「どうした?」

「前に装置が設置されていた小屋がなくなっている」


三人が潜む森の奥、崖の上で少し場所がひらけた場所に、以前その小屋はあった。

それが今ではただの森になっている。


「似たような場所が多い。間違えていないか?」

「いや、あの大きく曲がって生えている木には見覚えがある。特徴的だったんでよく覚えている。間違いないはずだ」

「だとしたら、この場所から別に移したのか?」

「そうだとしても、建物まで撤去する必要があるか?」


ホロのいうことももっともである。

装置を移動するだけなら、あのような石造りの建物を完全に痕跡なく壊す必要はない。

空っぽになった建物にもダミーとして置いておくメリットがあると感じた。


「幸い敵の気配はない。もう少しよってみてよう」


三人は背中の剣をぬき、光銃で警戒しながらも、建物の元あったところに近づいた。

と、その場所まであと20メートルというところで、唐突に建物が出現した。


「なんだ? あっぐ」


一瞬でかわった景色に驚いた先頭のホロは、体にしびれるような衝撃が走るのを感じた。

悲鳴を上げ倒れる。


「ホロ!」


ヘレが声を上げた瞬間、同じように雷に打たれたように痙攣して、倒れ込んでしまう。

ハフは本能的に横に転がり、二人を行動不能にしたディー・エッグFの雷撃をよけた。


急に見えだしたのは建物だけではなかった。

人型の盾を持った木人が5体、建物前に配置されているのを、ハフは回避しながら確認する。

同時にふらふらと空中に浮いている卵大の物体にも気が付いた。


光銃で空中の卵のようなものに銃撃を加えるも、高速であっさりとかわされる。

卵型のものは、ハフと同じような、いやもっと長い線でのホーリーレイで、ハフの周辺を薙ぎ払っていく。

なんとか避けつつ攻撃を防げる場所に移動しようとするも、球はハフをとらえようと右に左に移動してはうってくる。


「くそ」


球はそのうちふたつから三つに増え、隠れる確度がなくなったため、ハフはやむなく二人を残して後退する。

すると球からの攻撃がやんだ。

しばらく様子をみたが追撃はなく、どうやら深追いはしないようだと確信する。


ここまで離れると建物はまた姿を消し、珠たちも見えなくなる。

ヘレの横たわっている姿は見えるが、ホロの倒れた姿見えない。

ホロはここから確認する限り、痙攣したままで死んではいないようだ。


(疑似映像か。ふたりとも殺されてはいないようだが、圧倒的だぞ...む)


唐突に姿だけ確認した木人が二体、盾を構えつつ出現する。

なにか建物の中からひょっこり現れた趣だ。

遠方から観察すると、単純な人型ではないことがわかる。

盾を持っているにもかかわらず、それ以外の手が数本確認できた。

どの手も剣は持っていないようだが、棒嬢の武器は確認できた。


その巨大な木人の一体は手にはホロをつかんでいた。

もう一体もヘレの体を持ち上げ、武器を取り上げた。

木人は取り上げた武器を自身の背中から生えている手の鉄の棒で破壊すると、興味がなくなったように建物からもう少し離れて二人を放置した。

もう二人には目もくれず、建物の方に向かうと、来た時と同様書き消すように姿をけした。


その後しばらく様子をうかがっていたが、相手に追跡する意思はないらしく、30分程度でうめきながらもホロとヘレが動き出した。


「ふたりとも、こっちだ」


首筋をさすりながらも、ふたりはハフのいるところまで後退した。


「急に建物が現れやがった、とおもったら体に激痛がはしった」

「攻撃の相手をみたが、見たこともない魔道具だった。お前たちはそれの電撃にやられたんだ。それは他に威力が持続するホーリーレイを放っていた。俺たちが持っている光銃とは比べ物にならない威力と持続性だった」

「武器と魔道破裂玉がこわされた」


とヘレは、折れた剣とつぶされた光銃、こしに3個装着していて、いまは見る影もない破壊用の魔道具を二人に見せた。


「おそらくゴーレムと魔道具だが、防衛だけが目的のようだ。しばらく観察していたがこちらにはこなかった」

「ああ、俺たちも殺されず放置されただけだからな。コケにされてるようで悔しいが、実際手も足も出なかった」

「どうする?ハフよ」


ハフは考えをめぐらませる。

破壊しなければ帰れないのだから、方針はかわらない。


「当初の予定通り、他の手薄そうなところを探して壊す。ただ景色を変化させる魔道具か何かがあることはわかったので、それを基準に今後はもっと慎重に行動する。どのみち武器や破壊する手段がいまはない。一旦拠点にもどる」

「わかった」


それしか選択肢が彼らにはなかった。

だが、もし修理の済んだ場所すべてに同じような防已網がはられていたらという恐れもあった。

ハフとしてはそうでないことを祈るしかなかった。


★★★


マルティたちの作業は順調にすすんでいた。

施設が自然停止した拠点はひとつ、破壊された拠点は2ヶ所なので、それが終わった時点でカラツシティを守る魔法防御壁は閉じたことになる。

あとは、10拠点でそれぞれ衛兵が20人ずつ詰めている地点を回って、装置の検証と防衛用にゴーレムたちを配置して大部分の兵士をカラツシティに返す手はずをするだけだった。


修理はほぼ軽微な修復だけだったので簡単だったのだが、ゴーレムたちを配置して3名を残して街に帰還してくれという指示に、兵士たちからの反論が出たのだ。

まあ、これは領主のファビオ男爵からの命令ではなくて、マルティが後付けで都市が手薄になっていて襲撃を受けたので、という理由で伝えた内容だったからだ。


「協力してくれる貴殿を信頼しないわけではないが、そういう命令は受けていない。ゆえに承諾しかねる」


と、もっとも当たり前な理由での拒否であった。

そのまま放置してもよかったのだが、そうするとゴーレムを配置した地点の守備が否定されることや、逆にカラツシティの守備の点でまたマルティたちに負担が回ってきそうで、それは避けたかった。

できることなら、いま出払っている衛兵たちがカラツシティに戻って、ある程度の守備力を復活させ、後光の憂いをなくして首都ネオハカタに向かいたい。


「命令がなく動けない理由はわかりますが、マーマンたちの残存兵力がわかっていないので、またあのようなシティへの襲撃があるやもしれず、そのためにも都市に戻ってもらえないですか?」

「その理屈から言うと、ここについても同じことが言える。むしろマルティ殿にはシティ防衛に協力いただきたい」


だからそれはしたくないとは言えない。


「わかりました。じゃあ試してみませんか?このゴーレムと魔道具の力を」


マルティは木人ゴーレム1体と、ディー・エッグFとの模擬戦を提案した。


「壊せるものなら壊してもらってかまいません。みなさんに壊せるものなら。ただ、そうでなければ帰還のこと再検討お願いします」


このセリフは衛兵たちのプライドを刺激した。


「ほぉー、たかがゴーレム1体とそのような小さい魔道具にわれらが遅れをとると貴殿は言われるのか?よかろう、おい」


隊長の号令のもと、兵士たちがゴーレムとディー・エッグFを取り囲んだ。


「破壊されても文句はなしだ。止めるなら今だぞ」

「はい、壊した剣や防具は僕が修繕しますし、ケガもポーションや仲間の魔法で対応できますので」


マルティはわざとたきつける。

『神眼』でこちらの圧勝は確定しているし、痛い思いをしてもらってここで前例をしっかり作って、他の9ヶ所ですんなり話が通るようにしたかった。


さすが訓練された人だちあって、マーマンたちよりは連携も個々の力量も上だったが、6本腕のゴーレムの特異で素早い動きと、ディー・エッグの予測不可のジグザク飛行から間断なく繰り出されるホーリーレイは防いだり避けたりがやっとだったうえに、時々繰り出される暗黒空間で味方同士の位置もわからなくなり動けくなったところに雷撃をうけてたおれるものが続出した。

終わってみれば1分もかからず兵士たちは地面に転がっていた。


何人かの剣は折れ、盾も深くへこんでいた。

うめいてはいるが、電撃でのしびれと打撲程度で、大けがしたものはいないようだ。


すぐさまマルティは剣や盾の修復、それも前とは比べ物にならない密度や鋭利さをともなわせて、一方ミヤビとカスミにはヒールで打撲やしびれを復活させた。


「えーと、本番の守護はあと追加で4体おなじ木人ゴーレムの配置と、ディー・エッグFでの隠蔽をします。ちなみに本来ディー・エッグFは10体で動くんですが、いまは3体しか動かしていませんでした。隊長さん、考え直してもらえないでしょうか?」


ごねられるかと心配したが、剣と防具を新品同様に復活させたのが功をえんしたのか、しぶしぶだが受け入れてくれた。


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