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サイドC-30 ホクトの提案

「提案というのは、それほど複雑なものではありません。要点は5つです。この用紙にまとめてあります」


ホクトは交渉相手となる4人に用意した用紙を配る。

スイレンはその用紙の質の良さにも少し驚いた。

書いてある内容をなぞるようにホクトが補足しながら説明する。


「ひとつ、現在『カメヤマシャチュウ』商会が御国に対して行っている自主的な輸出を基本的に取りやめる。今後は御国からの依頼、公人個人を含めてのによりのみ行い、搬送頻度も月2回を限度とする。なお現在御国に在住させているゴーレムおよび馬車はすべて退去する」


「ふたつ、フィオナ王国が自作できるよう米の苗1万株と育成方法の伝授を無償にて行う。苗の供給および作付け方法の伝授は『カメヤマシャチュウ』商会を通して行う」


「みっつ、御国に『カメヤマシャチュウ』商会の大規模支店を設置することを許可していただく。設置場所は御国のダンジョンのある町とする。また支店支配人はこちらの指定する人物とし、商売に関する規制はもうけないものとする。御国には利益の50パーセントを税金として納める」


「よっつ、『カメヤマシャチュウ』商会を設置する町の整備に、商会が自主的に参加することを容認する」


「いつつ、御国にあるダンジョンのひとつを、ファーラーンダンジョンと同様にわれらが実質支配することを黙認する」


ホクトの説明がおわり、長い沈黙の後、スイレンがまず口火をきった。


「よっつめの件がよくわからないのですが、具体的にどういうことを想定されていますか?」

「これはですね、主に外壁の整備のことですね。ファーラーンもそうなのですが、この町の外殻も僕らの仲間でそういうのが得意なものがおりまして、彼に作る参加権が欲しいということです。計画の提案と、承認後の建造ですね。これは商会の保全のためにも行うことですので、無償で対応します。そのほうが予算が立たないとかそういう理由なしにタイムリーに提案できますでしょ」

「む、無償ですか...」


つぎにうなっていたアインが口を開く。


「ほとんどの提案は、現在の問題を解決できる提案ばかりで、しかも我が国にとって有利な点が多い。それは良いのだが2点だけ気にかかる。ひとつは五つ目の提案だ。黙認というのは、つまりここと同じことを我が国でも行い、それを秘密にしてほしいということでよろしいかな?あと、黒船に関する条項がひとつもないが、あれについてはなにかその...我が国への提供とか考慮されとるのだろうか?」

「ご明察です。ダンジョンについては、ここまでの規模でできるかどうかは別として、改造をしてみたいと思います。その結果取れるものの販路としての『カメヤマシャチュウ』支店だと思ってください。もちろん御国にも利点があります。ガガ殿ならご存じかとおもいますが、改造したのは最下層だけではありません。ダンジョンの浅い層も、冒険者たちが比較的安全に儲けられるような仕組みに変えております。冒険者たちの利益は、そのままその周辺の利益につながります。当然噂をききつけて、冒険者たちも増えてくると思います。そうするとますます町が発展するという仕組みです。利益は『カメヤマシャチュウ』に留まりません。加えるなら商会の利益の半分は御国におさめるので、まあひとつの商会の税などたかが知れていますが、それでも何もない今よりは資金的に潤うものともおもいます。で、黒船についてですが...」


ここで、ホクトは少し考えるのに時間を置く。


「あれのことを聞かれるとは思っておりませんでしたので...その、お譲りすることは難しいです」

「なぜ?」

「それは御国が私共に感じた脅威と同じ理由です。あれで御国への侵略をご心配されていたとおもいますが、裏を返せばこちらも同じことが言えます。あれの積載量と移動速度を考慮しますと、御国がノースランド連邦国に侵略しやすくなるのは否めません。よってお譲りは難しいです」

「しかし」

「まあお待ちください。その情報をもとめてまた諜報戦とか始まっても、双方余りいい思いはしないでしょう。代わりといっては何ですが、あれと同じ魔力炉と推進システムを搭載した小型船をお譲りすることは可能です。当然無償というわけにはまいりませんが。それをもとに研究なされるのは、こちらとしてはおとめできません。どうでしょうか?」


目の前の人たちが悪人とはおもわないが、それでも国というものを抱えている人たちは100パーセント善意の人と思うほど、ホクトもお人よしではない。

今の問いかけで彼らが『黒船』と呼ぶあれを、国家として手に入れたいのは理解した。

他国より技術的に優位にたとうとするのは、自然の思考だと思うし、しょうがない部分は往々にしてある。

なので渡すのは危険極まりないことも理解している。


かといって完全拒否をしてしまっては、余計に意固地になる可能性もあるので、ガス抜きも必要である。

渡すのは最先端の魔力炉ではなく、サーマルス・ロード王国オリジナルの効率4割程度の魔力炉のものとしようと思う。

あれならこちらの最先端ではないし、なにより魔法式が複雑怪奇で、解析には相当年数かかるだろうこともわかっている。

いや数十年かも。


「うむ、お主の言い分はもっともだ。そのわけていただける船については見積もりをくれ。国で検討する」

「はいもちろんです。それ以外の件についてもご検討ください。すぐに回答される必要はありませんので。お持ち帰りいただけることが今日の目的ですので」

「あー、ちょっといいか?」


会合をしめくくろうとしたホクトをそれまで黙っていたガガがとめた。


「はい、何でしょうか?」

「おまえらがいう我が国のダンジョンというのは、目星をつけているのか?」


真剣な面持ちでガガがまっすぐホクトをみる。


「いえ、フィオナ王国には未踏破のダンジョンが3つあることだけ知っていて、どこにどのくらいの規模のものがあるかなどとは知りません。お話がすすんでご承認いただけてから、そちらから提案されたダンジョンをと思っておりました」


ほんとうに北斗はその情報を持っていなかったが、ダンジョンならどこでもよいので、あまり真剣には考えていなかった。


「そうか、ならばそれはフィオナ王国南部にあるイスティポール・ダンジョンにしてくれないか?」

「ルクレール候、それはさすがに」


スイレン嬢がすかさず遮る。

アイン伯もなぜか厳しい顔をしている。


「僕たちはどこでも構いませんが、なにかそちらで問題があるのではないですか?」

「あります。ルクレール侯爵、それは独善すぎです。仮に第5項目が承認されたとして、すでに場所も確定事項では後々いさかいになりましょう。各諸侯の意見もききませんと」

「いや、こういうのはここにきている特権だろ?なあホクトよ。それを条件に追加してくれれば、この話は王国に帰って俺がかならず通して見せる。だから追記してくれんか?」

「ルクレール候!」


最後のはスイレンの悲鳴だった。


「ご本人たちを目の前にして失礼ですが、この方たちはいまだ素性がしれませぬ。第5項目については慎重に議論する必要があります。ただもしこのファーラーンの町のように発展することが確定できるのであれば、ほかのダンジョンを抱える二候も黙ってはおりませぬ。それを承知でおっしゃっておりますか?」

「どういう事ですか?」

「いやまあ...」

「イスティポール・ダンジョンは、ガガが納めるルクレール領にあるんどすわ」


それまで黙ってだされたシフォンケーキを食べていた、ほかのメンバーは手も付けていなかったが、プラティアがあきれたようにつぶやく。


「つまりガガはんは、自分ところの領地にあんさんらを利用するつもりなんどすわ」

「こらこら、人聞きわるいぞ」

「そうどすか?ホンマのことでっしゃろ。でもなホクトはん、裏を返せばガガはんが聞こえは悪うてもお宅らの実績や実力を理解して認めてるっちゅうことですわ。このシフォンケーキの美味しさと同じように、ちいともそれができんと疑ってないっちゅうことどすわ」


プラティアのことばに、まあ、そうだなと頭を掻くガガであった。


「だったらなおさらのこと、他の二候が抗議されますぞ、ガガ殿。やはりダンジョン選定はあとのほうがよいと思いますぞ」


アイン宰相のセリフに、無理かと天を仰ぐガガであった。

ただ、どちらにしてもフィオナ王国が、第5項目についても受け入れられる雰囲気が出来上がっているのが、聞いていたアリス姫には不思議だった。


「なら、うちからも要望や。そのダンジョン制覇にうちら『レッドサンダー』もしくはうちだけでも同行を必須とすること。聞いてくれへんかったら、このダンジョンについてあることないこと含めて言いふらしまっせ」

「あっ、自分だけとか、プラティアずりーぞ!そこは『レッドサンダー』に限定しろ」

「うるさいトカゲ、あたいはカスミねえさんと是が非でもご一緒したいんや!」


テツガとプラティアの度付き漫才が始まったおかげで、場がある意味なごんでしまった。

そんな様子をみながら、ホクトは一応交渉は成立したのかな?と自問するばかりであった。


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