第13話「復讐の連鎖」 - 4
※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。
◇グレース・オーリンダール編
灰色の石壁に囲まれた薄暗い牢獄の中、グレースは膝を抱えて座っていた。外から差し込むわずかな光が、錆びた鉄格子に影を落としている。その静寂の中で、彼女の心は何度も同じ問いを繰り返していた。
「私に剣を持つ資格なんてあるんだろうか……」
手のひらを見下ろす。かつて多くの人を守るために剣を握ったその手が、今は重い罪の記憶を背負って震えていた。
17年前、自分の未熟さが尊敬する先輩ラルフを斬らせ、黒幕アビゲイルを守る結果となった。そして今回、タリーサの制止も聞かずに怒りの感情に任せてアビゲイルを葬った。
「過ちを重ねただけじゃないか」と彼女は自嘲気味に笑った。
「こんな私が聖騎士団の団長だったなんて、笑い話にもならないな……」
牢獄の番兵は、訪問者が来ても必ず追い返してきた。だが今日は、様子が違った。遠くから、豪快な足音が近づいてくる。それとともに、兵士たちの慌てた声が響く。
「お待ちください!ここから先は―」
「うるさい!どけ!」
重い鉄扉が勢いよく開け放たれる音が響いた。
「姫様、ようやく会えました!」
牢の前に現れたのは、かつての副団長、ペネロペだった。乱れた黒髪を無造作に束ね、胸を張った堂々たる立ち姿は以前と変わらない。
グレースはその顔を見上げて、小さく笑った。
「ペネロペか……お前たちオーリンダール家の者には、本当に申し訳ないことをした。実家はさぞ怒り心頭だろうな」
ペネロペは一瞬だけ目を伏せたが、すぐに豪快な笑顔を浮かべた。
「はは、ご領主様はグレース様を勘当すると仰ってるそうですよ」
「そうか……」
グレースは視線を落とし、かすかに溜息をつく。その肩の沈み込むような様子に、ペネロペは少しだけ声を落として続けた。
「でもね、姫様が団長を降りましたので、私も一介の団員に降りました。これで対等です」
「お前まで団員になったのか?」
「はい、それに――」
ペネロペは急に真剣な顔つきになり、声を潜めるように話した。
「マリア伯爵の計らいで、姫様は近日中に釈放されますよ」
「余計なことを……」
グレースの顔がわずかに歪む。だが、ペネロペはそれを気にする様子もなく話を続けた。
「釈放されても行くところも無いですしね」
「やけに嬉しそうだな」
グレースが目を細めて問いかけると、ペネロペはにやりと笑った。
「実はグレース様の次の行き先は決まっています」
「行き先?」
「ヴィンセント侯爵が東側国境で聖騎士団の分隊を指揮することになりまして。グレース様をぜひ招致したいと!」
グレースは眉をひそめた。
「ヴィンセント侯爵が?」
ヴィンセント・ヴァリンドール侯爵は建国記念式典で会ったグレースにすっかり一目惚れし、今回の越権とも言えるスカウトが起きている。だが、それを知らない彼女はただ首をかしげた。
「なんか嫌な予感がする。丁重にお断りしてくれ」
ペネロペの顔が途端に困った表情になる。
「え……姫様、それは困ります」
「なんでお前が困るんだ?」
「それは……」
ペネロペが言葉を濁すと、グレースの目がじっと彼女を見据えた。
「お前、何か隠してるだろ?」
その問いに、ペネロペは乾いた笑いを漏らしながら目を逸らす。
「まぁ、いろいろありますが……とりあえず外の空気でも吸ってください。釈放まであと数日ですよ!」
そう言って、ペネロペは牢から一歩下がり、再び大きな笑顔を見せた。その背中が去りゆく音が遠ざかると、牢内は再び静寂に包まれた。
グレースは小さく首を振り、再び膝を抱えながら呟いた。
「また聖騎士として剣を握って…いいのか…?」
その答えはまだ見えなかった。それでも、牢獄の外で待つ現実は容赦なく彼女を前へと進ませるだろう。
(続く)
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★あとがき★
グレースは重い後悔を抱えて生きていくことになりました。しかし彼女を信頼するペネロペほか多くの部下がいます。いつか立ち直り生きる道を見つけてくれるでしょう。
次回、明日はトーマスとアンナのその後です。




