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第11話「悪夢の式典」 - 5

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

タリーサたちは5人もの凶暴化した村人たちを相手に熾烈な戦いを繰り広げていた。


異常な力を発揮する村人たちに苦戦しながらも、徐々に舞台左方の戦局は変わりつつある。


挿絵(By みてみん)


タリーサの剣には目に見える変化が現れていた。彼女の周囲には、戦場の喧騒とは相反するような穏やかなオーラが漂い始め、剣速は鋭さを増し、青白い光が全身を包み込むように広がっていく。


その猛攻に、王妃を守りつつ戦況を見守るグレースが息を呑んだ。


「なんだ…あの剣速…」


タリーサは迷いのない動きで村人たちの間を駆け抜け、その剣が再び光を放った。


「うああああああ!!!」


2人の村人が断末魔の叫びを上げ、青白い閃光と共に地に崩れ落ちる。


凶暴化した村人たちが完全に動かなくなったその瞬間――。


「はあっ……はあっ……」


タリーサは剣を握りしめたまま、肩で息をする。


目の前の荒れ果てた戦場の光景が霞むように見えた。意識が一瞬、喧騒から離れ、ぼんやりとした感覚が広がる。しかし、その余韻も束の間、響き渡る叫び声と金属の音が彼女を現実へと引き戻した。


(アビゲイル……お前がこれを引き起こしたのだろう?)


心の奥底で確信が芽生えていた。倒れた者たち、荒れ狂う村人たち――すべてが、あの冷酷な枢機卿の計画通り。


(今お前が気を失っていると信じるほど、私は甘くない……待っていろ…)


タリーサは赤く輝く瞳を持つ3人の村人たちに視線を向けた。彼らは荒れた息を吐きながら、ペネロペたち聖騎士に拳を振り下ろしている。


タリーサは剣を構え直し、ペネロペたちに加わった。

その時、彼女の意識の奥に不意に響くものがあった。


(舞台左方の者たち、聞こえているな? 作戦を伝える…)


それはエルフの魔法使いロレンディスの念波だった。タリーサたちは互いに視線を交わす。


「3、2、1、今だ!」


ロレンディスの合図が響くと、タリーサたちは一斉に村人たちから離れる。


その瞬間、舞台前の建物に陣取っていた王宮魔道士たちの、詠唱が響き渡った。


「風雷の神オーリングリよ、轟く槌をこの地に放て!轟雷の嵐!」


バリバリバリッ!!!


放たれた雷撃は轟音と共に空気を裂き、閃光が村人たちを飲み込んだ。

青白い稲妻が幾重にも重なり、村人たちを覆い尽くす。雷光は空気を焦がし、村人たちの巨体がその場で黒煙を上げながら崩れていった。


「グアアァァァ……!」


苦しげな叫びと共に、最後の村人が完全に沈黙する。全身が炭化した彼らは、地面に崩れ落ち、静寂が訪れた。


左方の戦場はついに制圧された。


◇ ◇ ◇


舞台右方では、全身が赤黒く膨れ上がった村人たちが荒れ狂い、未だその猛攻は止まることを知らなかった。


3体の巨体を前に、エリックとヴィンセントの2人は激戦を続けていたが、数の不利に次第に押され始める。


エリックの薙刀「雷断」が稲妻を走らせる。鋭い刃が一瞬村人の巨体を照らし、肩口を正確に捉えた。しかし、肉に深く食い込んだ刃にもかかわらず、村人は一切怯まず咆哮を上げる。


「くっ……!」


次の瞬間、村人の拳が雷断の柄を打ちつけた。強烈な衝撃がエリックの腕を通じて伝わり、彼の体は数歩後退を余儀なくされる。


一方、ヴィンセントは村人の攻撃を冷静にかわしながら、反撃の機会を狙っていた。狙いは、どんなに強靭な肉体でも破壊すれば動きを鈍らせる関節だ。


「どんなに強靭な肉体でもここを断ち切れば!」


鋭い一撃が村人の腕を裂き、動きを鈍らせたかに見えた。しかし、村人は痛みを完全に無視して再び拳を振り上げる。予想外の動きにヴィンセントが一瞬遅れた。


「なにっ!?」


彼が剣を振り直した瞬間、村人が振り上げた腕が剣を弾き飛ばした。鉄の音が甲高く響き、勢いに押されたヴィンセントはその場に倒れ込む。

その間に、もう1体の村人が猛然と走り抜け、枢機卿たちを避難させている騎士たちのもとへ突進する。


「しまった……逃げろ!!」


ヴィンセントの叫びが舞台に響くが、巨体の突進は止まらない。地面を揺らすような足音が次第に大きくなる。村人の目は赤く光り、その視線は騎士と彼が抱えるアビゲイルに向けられていた。


左方を制圧したタリーサが駆けつけるが、距離は遠すぎた。


「くっ……間に合わない!」


騎士は反射的にアビゲイルを守るべく身を捻り、体を盾にする。


次の瞬間―。


荒れ狂う村人の巨大な手刀が騎士の腹部に深々と突き刺さった。鈍い音が舞台全体に響く。アビゲイルの体をも貫いた村人の指先から真っ赤な血が滴り落ちる。


「がぁ……っ……!!」


騎士が血を吐いて崩れ落ちる。


村人の手が引き抜かれると同時に、アビゲイルの意識が激痛で蘇った。


目を見開き、視線の先にいるのは駆けつけてきたタリーサだった。


「……っ……」


アビゲイルは何かを言いかけたように見えた。


唖然としたような、微かに笑ったような、判然としない表情のまま、彼女は力を失い、血の海へと崩れ落ちた。


「な、なんで…」


タリーサはその場に立ち尽くした。

アビゲイルの最期を目の当たりにした衝撃で、動くことができなかった。


◇ ◇ ◇


戦闘は終結に向かう。


グレースとペネロペが駆け寄り、エリックとヴィンセントに加勢する。全員が息を合わせて最後の3体の村人たちに総攻撃を仕掛けた。


「ここで終わらせる!」


グレースの叫びが響く。彼女は全身に力を込め、剣を高く振り上げると、一閃のもとに最も凶暴化していた村人を斬り伏せた。


「グオオォォォッ……」


断末魔の咆哮と共に村人の巨体が地面に崩れ落ち、静寂が訪れた。


「……終わったか」


エリック公爵が疲れ切った表情でその場に座り込む。その周囲にはようやく静寂が戻り、戦場にはわずかな風の音だけが漂っていた。


晴れやかな祝祭の場であった舞台は、今や血に染まり、多くの命が失われた場所となっていた。その痛ましい光景の中、タリーサは一人呆然として立ち尽くしていた。


この凄惨な事件を生んだ張本人がアビゲイルであるはずだった。それなのに、その彼女自身も目の前で命を落とした。


一体何が起きているのか。


答えを探そうにも、目の前に広がるのは死と混乱だけだった。

何もかもが分からないまま、建国記念式典は血と涙の中で幕を閉じた。


(第11話 完)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

建国記念式典は凄惨な光景と化し、多くの人と共にそれを仕掛けたはずのアビゲイルも死にました。

戦闘の描写を1万字も書くには全然実力不足だったと感じた第11話でした・・・


次話、事件から2週間。ベレンニア王国はまだまだ平静を取り戻せてはいません。

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