表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
245/259

第11話「悪夢の式典」 - 4

※生成AIで作った画像を挿絵に使っています。その為一貫していない部分がありますが雰囲気モノとしてご容赦ください。

建国記念式典の舞台は混乱と絶望に包まれていた。


教皇と枢機卿たちは倒れ、国王テオドールと王妃レオノーラも今にも襲われようとしている。舞台には混沌とした戦場の熱気が漂い、血と汗、焼けた金属の臭いが鼻を突く。崩壊寸前の戦場で、勇敢な者たちがそれぞれの持ち場で必死に戦っていた。


舞台右手から辛うじて逃れたマリア伯爵は、トーマスに連れられて舞台下にいた。伯爵は事態を冷静に見つめながら、次の一手を模索していた。


「とにかくテオドールと王妃を逃さねば……」


その時、舞台右側で閃光が走った。鋭い雷鳴が轟き、眩い光が戦場を切り裂く。


挿絵(By みてみん)


それはエリック公爵の薙刀「雷断」の一撃だった。


薙刀から放たれた雷が村人の両腕を切り落とし、次の瞬間、鋭い斬撃が首を飛ばす。巨大な体が音を立てて倒れ込むと、ようやく1人目の村人が地に伏した。


「今だ!」


トーマスは舞台へと駆け上がる。


彼の目の前には、スカーレットの亡骸にすがりつき泣きじゃくる妹アンナがいた。


「離して、トーマス! スカーレット様が!!」


アンナは涙で頬を濡らしながら叫ぶ。


「立て! お前はまだ生きてるんだ!」


冷静な声がアンナの体を突き動かすように響く。トーマスは抵抗する妹を引きずるように舞台から退避させた。


トーマスがアンナを連れ下がると、入れ替わるように聖騎士たちが舞台に突入する。彼らはエリックとヴィンセントに加勢し、村人たちを包囲する形で攻撃を仕掛ける。


右方の戦線は徐々に優勢を取り戻しつつあった。


一方、舞台左階段からもペネロペ副団長率いる別の聖騎士団が駆け上がった。

彼らは村人たちの後方に回り込み、近衛騎士団を襲う敵に斬りかかる。


「国王たちから引き剥がせ!」


ペネロペは鋭く叫び、攻撃を仕掛けるが、村人たちはそれを気にも留めず、目の前の近衛騎士たちに容赦ない攻撃を浴びせ続ける。


その視線は、なおもその向こうにいる国王と王妃を執拗に追っていた。


近衛騎士団の戦列のすぐ隣では、タリーサ小隊が必死に応戦していた。


3対3の苦しい戦いに、タリーサたちは精一杯持ちこたえている。


「倒そうとするな! 時間を稼ぐんだ!」


タリーサが鋭く叫ぶ中、聖騎士団の精鋭であるバーニー、アイバン、ドミニクが加勢してきた。彼らは村人たちの背後を突き、タリーサたちの戦列を支援する形で挟撃態勢を取る。


6対3となり、村人たちを少しずつ近衛騎士団から引き剥がし始めた。


そのすぐ後ろでは、グレース聖騎士団長が1人の村人と激しい攻防を繰り広げている。


他の村人とは明らかに異なる素早い動きで、グレースの剣撃を器用にかわし、逆に猛反撃を繰り出してくる。


「…この男…ただの化け物ではない」


グレースは隙を突かれそうになるたびに身を引き、再び剣を構え直した。その太い腕が振り下ろされるたびに、紙一重でかわしていく。


彼女はこの村人に完全に足止めされていた。


それに気づいたタリーサは突如目の前の敵から離れ、振り向きざまに剣を大上段から振り下ろした。


「隙ありっ!」


鋭い一撃が、グレースと対峙する村人の肩口から深々と食い込み、血しぶきが舞う。


予想外の方向からのタリーサの攻撃で体勢を崩した村人に、グレースが間髪入れずに追撃する。


「終わりだ!」


鋭い斬撃が村人を水平に断ち切り、2人目の村人が地面に崩れ落ちた。


グレースは剣を一振りして血を払うと、すぐに次の行動を起こす。


「王妃! こちらへ!」


王妃がグレースに手を取られるのと、近衛騎士団の最後の1人が村人の巨拳に殴り飛ばされたのは同時だった。


「ぐあっ!」


吹き飛ばされた騎士の体は舞台の壁に叩きつけられ、そこにいた国王テオドールの体を巻き込んだ。押しつぶされるような形で壁と騎士の間に挟まれた国王は、みぞおちを強打し、苦痛の声を漏らした。


「うっ……!」


テオドール王の顔が苦悶に歪み、胃液を吐きながら地面に崩れ落ちる。


「ああっ! テオ様!!」


グレースは叫ぶ王妃を強く引き寄せ、その場から一刻も早く離そうとする。王妃と入れ替わるようにして、タリーサが前に踏み込んだ。


「これ以上やらせるかっ!」


タリーサの剣が唸りを上げる。渾身の力を込めた一撃が、国王に追撃しようとする村人を切り裂いた。


「グオオオオッ!」


村人は斬られてなおもその場に留まり、狂気の咆哮を上げながら姿勢を立て直す。村人の赤い瞳が再び国王に向けられる。動けないテオドール王の体が狙われる中――。


ビュン!


鋭い音を立てて放たれた矢が、村人の目に突き刺さった。


「ギャアアアア!!!」


矢を受けた村人は苦悶の叫びを上げ、その場に膝をつく。舞台斜め前の建物から矢を放ったエルフの弓使いが姿を見せた。


「エレサル!」


タリーサが声を上げるが、彼女は応じることなく次の矢を引く。その矢は吟遊詩人ソフィアの奏でるバンドネオンの音色に導かれて正確に飛び、タリーサの前にいたもう1人の村人の目を射抜いた。


と同時に、エルフの修道僧タラナーが巨躯を駆けて左階段から舞台に上がる。エレサルの矢に怯む村人たちをすり抜けて意識を失った国王テオドールを抱き上げた。


「団長、このまま前へ」


タラナーの作戦は、混戦続く左方ではなく右方の階段からの退避だった。エリック、ヴィンセントの活躍で右方は村人たちを押さえ込めている。


グレースもこれに合わせて王妃を誘導する。


その時、昏睡状態にあるアビゲイル枢機卿の口元がわずかに動いたように見えた。


「……っ……」


それに応じるように、エリック公爵と対峙する村人たちの体が突然真っ赤に染まり、筋肉がさらに膨張する。


「グゴゴゴゴ……!!!」


「まずい……!」


エリックは雷断を構え直すが、その力を得た村人たちの猛烈な攻撃に防戦一方に追い込まれる。


ヴィンセント侯爵も何度も剣を振るうが、村人たちの圧倒的な力の前に後退せざるを得なかった。


その防衛線を突破した村人の1人が、聖職者たちを舞台から降ろそうとしている聖騎士に襲いかかった。


「うわああああっ!!」


その聖騎士は強烈なアッパーカットを食らって宙に打ち上げられた。首が不自然に折れたまま地面に叩きつけられる。


すぐさま他の聖騎士たちが応戦し、舞台右方も混戦状態となってしまった。


その光景に、タラナーたちの足が止まる。国王と王妃を舞台から逃がす策は、再び暗礁に乗り上げた。


(続く)

ここまで読んでいただきありがとうございます!

「面白そう」「続きが気になる」と感じましたら、『ブックマーク』と広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にしていただけますと嬉しいです!

皆様の応援が作者のモチベーションとなりますので、是非協力よろしくお願いいたします!


★あとがき★

式典舞台での激戦が続きます。ようやっとエリック公爵の実力を示すことができました。


次回、決着します。良い形かは別として・・・

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ