第34話:敵陣営の無血開城と、大自然へ還る工作員ども
志明がマスターキーを強奪したその瞬間、総統府のメインモニターに映る魏の艦隊データが、緑色の完全掌握ログへと一斉に変転した。
台湾海峡を何千隻もの漆黒の船体で包囲していたステルスドローン艦隊の全防衛システムが、内側から完璧に書き換えられていく。
百万の脳を接続した『紅蓮ネットワーク』が、志明の限界突破した演算によって力づくで押し潰され、逆流したハッキングコードが前線の全戦力を侵食する。
大艦隊を率いていた敵の将軍たちは、自らの旗艦の制御権がコンマ零秒で強奪されたことを知り、顔に青筋を立ててパニックに陥った。
「ば、馬鹿な! 我が帝国の誇る量子防壁が、たった一人の個人の端末に踏み荒らされたというのか!」
「指揮権を戻せ! 戻せないだと!? 報告します! 我が軍の全電子ロックが強制解除、無血開城です……っ!」
(大国だの百万の物量だのとイキがったところで、未来の暗号コードの前にはただの紙クズだ。あんたたちの傲慢な侵略は、ここで終わりだ)
◆ ◆ ◆
【スローモーション細分化:0.2秒】
ハッキングの莫大なエネルギーの波が、台湾海峡の洋上を一瞬にして駆け抜ける。
旗艦の甲板や前線のドローンを操作していた重装甲兵数万人の手元から、最新鋭のアサルトライフルが光の砂となって消滅していく。
【スローモーション細分化:0.5秒】
分子崩壊のまばゆい光の粒子は、そのまま敵兵たちの身体へと容赦なく伝播した。
強固な防弾チョッキ、軍服、頑丈なベルト、果ては下着にいたるすべての衣服セキュリティを量子解体する。
【スローモーション細分化:1.0秒】
太陽に照らされた軍艦の甲板の上に、一物も身につけていない完全な全裸の男たちが数万人、呆然と立ち尽くした。
生暖かい南国の海風をダイレクトに股間に浴びて、敵陣営の威厳は微塵も残らず、涙目で前を隠しながら右往死往する無様な大自然の群れが誕生した。
「ひぃっ!? お、俺の服が! ズボンが光になって消えたぞ! 早く前を隠すものをよこせえええ!」
「おのれ『GHOST』め……! 数万人を面白半分で一斉全裸公開処刑にするなど、どこの悪魔だ!!」
(何度見てもむさい男の全裸艦隊は不要な視覚テロだな。だが、これで魏の軍隊のプライドは地球の底まで叩き潰されたはずだ)
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次回予告:第35話『お前らの反応(ネットの祭り)と、演算オーバーの死神崩壊』
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