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良い流れだけど…



僕は配信者

僕は配信者

僕は配信者

僕は配信者…



心の中で念仏のように唱える


じゃないと持たない気がした。


1日が、やたらと長く感じる。





滝川さんには


「また放課後です〜」


と一瞬肩をくっつけられた。



教室に戻っても全然気が入らなかった。



そもそも朝からとんでもないインパクトの出来事が起こったし、どうにか押さえつけていたけどやっぱり

「変」だ。




どうしようもないくらいの「良い感じ」に違和感を感じずにはいられない。


上手くいき過ぎている、話にしても出来過ぎている。



(そっか、僕はラノベの世界に異世界転生したのか!?)


そう、そう思えば妙に納得がいく。



題するのであれば、配信者が現実世界で可愛い女の子と良い感じに!?


みたいなタイトルだろうか。



もはや口角が緩んでしまう。

どうしようもない。



良いのかな、コレ…。




黒板も教科書もノートも、もはや目に映らない。




放課後




あの約束。


避けられないイベントが頭に浮かぶ。


「……」


心臓が、少しだけ重くなる。


楽しみなのか怖いのか、自分でも分からないまま。







移動教室で廊下を歩いていても、何人の生徒をすり抜けてもどこか僕は変だった。


結論から言うと僕は滝川さんの事で頭がいっぱいだった。




そりゃそうだよ、誰だってそうなるって。




突然



胸の辺りに衝撃が走った。


いや、突然なんかじゃない、目視で確認したからだ。



向こうから歩いてくる滝川さんが。




1人で俯きながらファイルを大事そうに抱えている。




目が離せなかった。



ふと、


滝川さんの顔が、上がる。


視線が、合う。


一瞬。


「……あ」


向こうも、気づいた顔。


次の瞬間、


ぱっと表情が明るくなる。


「三田さ〜ん!」


声が、少し弾む。


そのまま、


まっすぐこっちに駆けてくる。


(あー…この青春みたいなシチュ、我ながら眩し過ぎて見てられないよ…)


「えへへ〜見つけちゃいました〜」


僕にピトリと、身を寄せてくる。


「うっ!?」


この子はなんの意識もしていないのだろうか、本当に距離の詰め方が謎すぎる。


普通に僕の心臓が持たないんだけど。


「三田さん、次は移動教室ですね〜?」


「うん、理科の授業」


「三田さん、あの〜…」


「何?」


「滝川と連絡先を交換するとかそういう流れとかって〜大丈夫だったりしますかね〜?」


「ん?」


なんだその変な日本語は…。


それに連絡先を交換って…?



「…なんでそんな遠回しなの」


「え〜?」


きょとん、とする。


「普通に連絡先交換しませんかでいいじゃない」


「それだと〜」


少しだけ視線を逸らす。


「断られた時に〜悲しいので〜…」


「……」


(あ、滝川さんもそこ気にするんだ)


「だから〜」


またこっちを見る。


「大丈夫そうかどうか確認してから〜にしようかなって〜」


「段取り踏みすぎでしょ」


「慎重派です〜」


どこがだよ。


距離感バグってる人間の台詞じゃないだろ。


「……」



(そもそも断る訳ないじゃん)



「…いいよ」


「ほんとですか〜?」


ぱっと、顔が明るくなる。


「うん」


「やった〜」


嬉しそうに、スマホを取り出す。


その動きが、少しだけ慌てていて。


「はい〜」


画面を差し出される。


QRコード。


「……」


自分のスマホを取り出す。


手が、少しだけぎこちない。


読み取る。


「…登録したよ」


「確認しますね〜」


画面を覗き込んで、


「あ、来ていました〜」


ふにゃっと笑う。


「えへへ〜」


やけに満足そう。


「これで〜」


スマホを大事そうに持ちながら、


「これでいつでもお話できますね〜」


「…学校で会えるでしょ」


「それはそれ、これはこれです〜」


「どう違うの」


「全然違います〜」


ふわっとした回答。


でも、


「……」


さっきより、少しだけ距離が近く感じたのは、気のせいじゃない気がした。



「三田さん〜」


「なに」


「授業中に連絡してもいいですか〜?」


「ダメだよ、ちゃんと授業受けなきゃ」


「え〜?授業中はスマホでゲームしたり動画観たりしないんですか〜?」


(するけど…


って言うか意外と滝川さんって不真面目なんだな…)


「滝川、男の人と連絡先交換したの初めてです〜」


「えっ嘘でしょ」


「本当です〜滝川、ガード堅いので〜」


「いや、だって滝川さん、自分から連絡先聞いてきたじゃん…」


「三田さんだからです〜」



(グエエ…!

なんで平気でそんなズルい事を言うんだよ…)


「これで三田さんとしっかり繋がれましたね〜?滝川、嬉しいです〜」


「嬉しい…か?」


「嬉しいです〜!滝川達、クラス違いますし、我慢出来ないです…せめてスマホで繋がっていたくて〜…」


「うっ…!」


またまた破壊力のある言葉をツラツラと…。


なんでそんなに勘違いするようなセリフを多用するんだこの人は。



ん?というか…。



少し声を落として


「いや、滝川さん僕の配信者としての顔知ってるじゃん…?一応繋がってはいる…よね?」


「それとこれとは別です〜アレは他の人もいますし、滝川だけを構ってくれる訳じゃないですから〜」


「うん…まあ、配信だからね、固定の視聴者さんもいれば新規の人もチラホラと…」


「仲の良い女性の人とかいるんですか〜?」


「うん、いるね」


滝川さんが首をガクリと落とす。


「……不快です〜…」


「え、不快…?不快って言った…?」


「不快って言いました〜…滝川、とてもヤキモチです」


「それはどういう意味で…」


「三田さんが他の女性に時間を割いてると思うと、とってもや〜な気持ちになります〜…滝川だってせっかく仲良くなったのに〜…」


「そうは言っても配信って老若男女問わず様々な人と関わるからさ…」


事実、元々そういうモノだし。


「滝川さんも昨日僕の枠にコラボした時にすごい好評だったじゃん、枠も盛り上がったし、滝川さんも配信やれば良いと思う」


「三田さん以外どうでも良いです〜…」


(クソッ!!さっきからそういう、独占欲みたいなので僕を削ってくるぞこの人…!!


僕そういうのに弱いのに…!ときめいちゃうって!)


というか…。


「滝川さん、急がないとお互いに授業に遅れちゃう」


「あー…では、滝川、行きますね〜三田さん、またです〜」


「うん…」


滝川さんはフリフリと手を振って小走り気味に去っていった。


僕も急がなきゃ。





滝川さんの連絡先を手に入れて僕のスマホの戦闘力が格段に上がった気がした。




                    つづく


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