適正
「話戻るけど、明日の予定の話をしてたんだよね?」
滝川さんは「はっ!」っと目を見開く。
そうだった!と言わんばりの顔。
「じゃあ…やっぱり三田さんのお家に行きたいです〜…お家デートです〜…」
「あら?」
「やりたいです〜」
「なッ…!?」
「三田さんと〜」
やっぱり脳内ドピンクじゃないか!!
ストレート過ぎるだろ!!
「三田さ〜ん…?」
え、なんで「どうしましたか〜?」みたいな顔出来るの?
「…これ、ブレーキとかじゃなくてさ、やっぱり僕達、そういうのは早いと思うんだよ…」
「…エースコンタクトをやるのがですか〜…?」
「あらら?」
思わず変な声が出た。
滝川さんはきょとんとしている。
「エースコンタクトやるのに早いとかあります〜?」
「……」
「?」
危ねえ。
完全に僕の脳みそが汚れていた。
「いや、その…」
「三田さん、何想像しました〜?」
「何もしてない」
「しましたね〜?」
滝川さんの口元がにやぁ〜っとする。
「顔真っ赤です〜♡」
「うるさい」
「エッチな事考えてました〜?」
「滝川さんが変な言い方するからだろ!!」
「滝川、お家デートで一緒にゲームしたいって意味で言ったんですけど〜?」
「罠じゃん!!君が言葉足らず過ぎるよ!!君が悪いよ!!!!」
滝川さんは口を抑えて「くっくっくっ…」と肩を振るわせる。
「ムキになっちゃって〜♡」
「なんだ…このっ!」
滝川さんの頭をコツンと小突く
「あうっ…」
舐めんじゃねーぞ??
「…でも〜気持ち良い事もしちゃいます〜」
「!?」
まだ喋るのか?
これは…なんだろう。
コレも罠か?
「なんだと思います〜?」
「え〜っと…??」
「答えは耳かきです」
即答えを出された。
「答え出すの早えよ!もうちっと考えさせろよ!!!!」
滝川さんはまた肩を震わせている。
絶対楽しんでる。
「三田さん、さっきから全部そっち方向に変換してます〜♡」
「君の言い方が悪いんだよ!!」
「被害者面です〜」
「うるせえ加害者」
「でも耳かきって気持ち良いじゃないですか〜」
「まあ、それは分かる」
「滝川、人にやるの好きです〜」
「へぇ」
自分でばかりやるもんだと思っていたけど。
確かにそういう耳かきするような動画流行ってたな。
滝川さんは
「動かないでくださいね〜」
と言いながら僕の頬に手を添える。
「ん?」
「お耳に触りますよ〜」
「えっ」
滝川さんの指が
「スリスリ…」
と僕の耳の縁をゆっくりと、なぞる。
「わっわっ…!」
一瞬で全身に鳥肌が立った、ような気がした。
「おぉ〜」
滝川さんの目がちょっと輝く。
「三田さん、弱いです〜?」
「弱いっていうか急すぎるんだよ!!」
「スリスリ…」
「うわっ、待っ…!」
耳ってこんな敏感になる?
なんか変にくすぐったいし、ぞわっとするし。
「反応かわいいです〜♪」
「うるさい…!」
滝川さんは楽しそうに笑いながら今度は耳たぶを軽く摘む。
「……」
「あれ?耳たぶはあんまりですか〜?」
「うん、全然気持ち良くない」
「ふ〜ん?」
あれ?滝川さんのこのニヤけ。
「…じゃあさっきのは気持ち良かったんですね〜?」
ああ、しまった。
「いや、その…」
「じゃあ〜…コレはどうですか〜?」
まだなんかやるのかよ、良い加減に…
「ズボッ…」
「のわっ!?」
滝川さんの指先が耳の入口に少しだけ入ってきた。
反射的に肩が跳ねる。
「わっ、わっ、ちょ…!」
耳の奥がぞわっとして、
変なくすぐったさが一気に背中まで走った。
「おぉ〜〜〜♡」
滝川さんの目が輝く。
「三田さん、耳の穴弱いです〜!!」
この感覚は…??
思い出した、耳鼻科健診だ、あの時に耳に入れる金属のクチバシみたいなやつ、あれはヒヤッとして変な感じだったけど、確かに気持ちが良かった…。
滝川さんは面白がるみたいにこちらを覗き込む。
「耳かき適性、高いですね〜」
「そんな適性ないでしょ…!」
「絶対寝かせられます〜♡」
滝川さんはけらけら笑いながらようやく指を離した。
耳に残った感覚だけ妙に生々しい。
コレ、ずっとやられたら本当に寝ちゃいそう。
毎日やられたら快眠間違いなしだろう。
「…滝川さんの前で寝るの怖いんだけど」
「安心してください〜滝川、寝顔見てにやにやするだけです〜♡」
「……」
本当に油断ならない。
でも、さっきまでの重苦しい空気よりはずっとマシだった。
滝川さんも楽しそうだし。
「……」
「?」
「まあ、エースコンタクトやるくらいなら別に良いけど」
負ける自信しかないけど。
「!!」
「ただし健全にね」
「耳かきも健全です〜」
「穴に棒突っ込む時点で完全に健全と言えるかね?」
「三田さんって結構エッチなんですね〜…」
「……」
滝川さんの頬を軽くつねる。
「ふみゃみゃ〜…!!」
なんだその擬音。
可愛いと思ってしまったけど。
「あと〜…」
「まだ言うか!?」
「いっぱい可愛がって欲しいです!」
話の流れ的に変な意味に捉えちゃうよ。
犬プレイの事ね。
いや、犬プレイも普通にヤバいんだけど。
滝川さんは期待に満ちた目でこちらを見ている。
キラキラしてる。
「三田さ〜ん…」
「わかったよ…」
「!!」
「5分くらいなら…」
「きゅぅ〜ん…」
露骨にしょんぼりする。
「……」
本気で犬やっているんだものな、もうそのモードの時の彼女に疑問は持たない。
こうやってふざけながら歩いてる時間は嫌いじゃなかった。
滝川さんは危なっかしいし、距離感もバグってるし、変な事ばっかり言う。
けど、楽しそうに笑うからつい付き合ってしまう。
「三田さん〜」
「ん?」
「明日楽しみです〜♪」
「…そうね」
「えへへ〜♡」
つづく




