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台無し



僕は考え過ぎなのだろうか。



流れに身を任せるのが正解なのか。



帰宅してからものすごい勢いで落ち着かない。


今日という日は一生分のトラブルが起こったのではないか?


登校中の電車内で滝川さんがぶっ飛んできて、昼食を一緒に、そして廊下で密着、連絡先交換からの鬼のようなLINE、からのカラオケでの大事件。


コレは…アカンでしょ。



でも。




今、物凄い虚無感。


色々あったから疲れているのかな、そうだと良いけど多分違うんだろう。


なんやかんやで充実したからだろう。



彼女とかいた事ないけど、いたらこんな感じなのだろうか…?


いや、滝川さんが特殊なだけで普通はそうじゃないだろう。


物理的(?)に配信する元気なくなっちゃった…。




きっと僕がちゃんと滝川さんの事を好きだと思った頃には、滝川さんは僕に興味なくなっているんだろうな。


根拠なんてないけど、あの人は一時の感情に前振りをする生き物だと思い。


明日はまーちゃんと話そう、そして一本早い電車で登校しよう、変な事にはならないだろう。




布団に入ってから意外と寝つきが良かった。


本当に今日は、色々あった、あり過ぎた。








早朝の空気は、とても良い。


こんなに早起きしたのなんて中学の修学旅行以来だ。

でもあれから一年経ってないのかな?


小鳥がチュンチュン、カラスがカアカア、実に騒がしいけど、悪くない。






(おお…!)


一本早いだけで何故電車内はこんなにガラガラなんだ…!


朝早い部活の連中と、何人かのサラリーマンくらいしかいないじゃないか…。


いつもならギリギリ座れるか座れないかくらいなのに、こんなに伸び伸びと座れるなんて…!!



(最高か?最高なのか?)



むふーーっと満足なため息が出る。


別に早く登校する意味はないのだけれどなんかごちゃごちゃしなくて済む、それだけで今は良い。


発進する電車も心なしか、速度が速い気がする(そんなわけない)




コツコツ…コッコッコッ…!


靴の音が近づいてくる


動いてる車内でよく歩けるものだ。

車掌さんかな?



(ん?)


昨日も全く同じ事を思った、昨日の場合、その正体は滝川さんだったのだが、今日は一本早い電車だからそんな事はあり得ないと思い、音のする方をチラリと見…



「ええっ!?」


とうとう僕にも幻覚が見えているのだろうかと思ったのは一瞬だった。



「滝川さん!?なんで!?」


「えへへ〜おはようございます〜」


満面の笑みの滝川さんだった。


一方の僕は心臓バクバク。

冗談でも笑えない。


当然のように僕の真隣に座った。


密着した。


「た、た…滝川さん?なんでこんな時間に…??」


「ん〜…?なんとなく、三田さんに会える気がしたので〜」


「気持ち悪っ」


「ひどいです〜…」


「気持ち悪いって言うか、ホラーだよ…」


「ひどいです〜…」


そう言いながら僕の肩に頭を乗せる。


「あーあ、台無しだ」


「何がですか〜?」


「オメーのせいだろーが…!」


コツンと滝川さんの頭を小突く。


「えへへ…」


なんで嬉しそうなのだ。


滝川さんは僕の肩に頭を乗せたまま、


ご機嫌そうに揺れている。


朝からテンションがおかしい。


テンポを崩された僕もだけど。


「本当は〜昨日のが楽しすぎて眠れなかったので〜こんな時間に来ちゃいました〜」


「ええ〜…眠くないの…?」


「眠いです〜」


「じゃあなんでそんな元気なの」


「三田さん見つけたので〜」


「犬?」


「わんっ!」


(うっ…可愛い…)


胸がズキンとする。


(こういうところが本当に…!)


心をかき乱される。


ただの迷惑女だと思えないから余計に厄介。厄介過ぎる。


なんというか、男の本能が乱される。


「三田さんがいつもの時間だったとしても滝川、駅で待っていましたけど〜」


(どの道今日は逃げ場ねえじゃん)


僕の束の間の朝はこうして



終わった。




(そもそも早く学校着いたとてやる事ないんだよな…)




いつもより人が少ない通学路。


朝練組の掛け声が遠くから聞こえる。


「…平和だ」


「平和ですね〜」


(君のせいで魔界だけどね)


校門が見えてくる。


まだ登校ラッシュ前。


生徒もまばらだ。


「うわ、学校静か…」


「滝川、この時間好きかもです〜」


「分かる」


普段は人混みでごちゃごちゃしてる昇降口も、


今日はかなり余裕がある。


靴を履き替える。


「……」


ふと横を見る。


滝川さんが僕を見ていた。


「何」


「なんか、変な感じです〜」


「何が」


「まだ朝なのに、もういっぱい一緒にいるので〜」


「……」


確かに。


「三田さん〜教室行く前に自販機行きません〜?」


「え、何故?」


「眠いので〜」


「便利だなその理由」


「せっかく早く学校に着いたので〜まだ一緒にいたいです〜」


「なんだそれ」


「愛です〜」


「ぶん殴るぞ」


「え?良いんですか〜?」


(殴って欲しいのか?)


ふにゃふにゃ笑いながら、


滝川さんは僕の制服の袖を軽く引っ張る。


「ほら〜」


「…はいはい」


結局、


僕はそのまま自販機コーナーへ連行されるのだった。






ガコン、という音と共に、


エナジードリンクが落ちる。

ちょいと高価なものだから普段ならあまり手をつけないけど滝川さんの奢りだから…。






滝川さんは透明なボトルの水を取り出す。


本当に水好きだなこの人。


ベンチへ腰掛ける。


朝の空気はまだ少し冷たい。


「……」


プシュ、と缶を開ける。


この独特な酸っぱい匂い…。


「三田さん〜」


「何さ?」


「ネックレス、付けてますね〜」


「……」


胸元をちらっと見られる。


制服の下。


見えない位置にあるはずなのに。


「見えないでしょ」


「滝川には見えています〜」


「怖いなぁ…」


でも、ちゃんと付けて来てしまった自分も悪い。


外そうか少し迷った。


でもなんとなくそのまま来てしまった。


「三田さんも滝川に何かください〜」


「…」


なんだコイツ。


「それならアザをあげようか?」


「え〜?でもアザなんて治ったら消えちゃいます〜」


こっちは100%冗談だけど、それに対してなんちゅーサイコな答えだ。


「消えないやつが良いです〜」


「怖い怖い怖い」



滝川さんはベンチの背もたれに体を預けながら、


じーっとこっちを見ている。


「三田さんの持ち物が欲しいです〜」


「物取りかよ…」


「お揃いとかが良いです〜」


「女子か」


「女子です〜」


「そうだった」


エナドリを一口飲む。


酸っぱい。


眠気に直接ぶん殴ってくる味がする。


「何かないんですか〜?滝川に渡せるもの〜」


「なんだこの物欲大魔神…」


深いため息が出る…。


その時、ふとリュックの横ポケットに指が当たった。


「あ」


ゴソゴソと漁る。


「?」


取り出したのはマスコット。


手足が生えて茶色い山みたいな形、火口からは溶岩が噴き出ている。


変態みたいなイヤらしい目。


ニヤついた口。


草履を履いている。


どう見てもキモい。


挿絵(By みてみん)


「…なにそれです〜?」


「へんたい山」


「へんたい山〜?」


「ゲーセンで間違えて取れたやつ」


ちょっと前にゲームセンター行った時、何故か取れた。


いや、取れてしまった。



いまだに意味が分からない。


「捨てるのもなんか負けた気がしてリュックに入れっぱなしだった」


滝川さんはじーっと見つめる。


「……」


「いる?」


半分冗談で言った。


こんなもん欲しがる人類はいないと思う。


でも。


「ほしいです〜」


いた。



即答だった。


「えっ」


「ください〜」


両手を差し出している。


「いや、こんなんで良いの…?」


「三田さんの持ってたやつですよね〜?」


「まあ…そうだけど」


「じゃあ宝物です〜」


「ハードル低すぎない?」


滝川さんは両手でへんたい山を受け取る。


そして、ふにゃ〜っと笑った。


「かわいいです〜」


「嘘つけ」


「ちょっと三田さんに似てます〜」


「悪口じゃねーか!」


滝川さんはもう完全に気に入ったらしく、


自分の派手な鳳凰のリュックに付け始める。


高級感あるリュックにへんたい山。


致命的に合っていない。


「うわ、台無し…」


「良いんです〜」


カチッ。


金具が閉まる。


滝川さんはリュックを抱えて満足そうに頬を擦り寄せた。


「ふふっ〜♪」


へんたい山、こんな罰ゲームみたいなモノでこんな嬉しそうに出来るなら、


この人、多分、本当に僕なら何でも良いんだろうなって思った。


                    つづく

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