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第8話

 カーテンの隙間から入る朝日と、頬に感じた朝の冷たい空気で目が覚めた。


「…あ、れっ?」


 見覚えのない天井に、大きくふわふわで質の良い、お布団と天蓋付きベッド?

 

「あっ、そうか私は…」


 リオン君とセジールお嬢様を見たくなくて、村を出て相乗り荷車に乗り、遠くまで来たんだ。

お金も無くなり偶然見つけた、入るなと書かれた森で眠り…優しいライオンさんに助けられた。


 ライオンさんは?

 

 隣に居るはずの彼を触ろうと、手を伸ばして昨日の熱を探したけど、隣は誰も居ず冷んやりしていた。


「あれっ…いない」


 ベッドから起き上がり彼を探した。

 

 静かな部屋の中。

 沢山本が並んだ本棚。

 大きな天蓋付きベッド、クローゼットに大きな革張りの椅子。

 書類が積み重ねられた机。

 部屋の入り口の扉が少し開いていた。

 

 もしかして「出ておいで」と、彼が言っているかな?

 開いている扉から、漂ってくる美味しい匂いに、ぐーっとお腹が鳴った。


「そうだ…私」


 昨日夕方に、相乗り荷車を降りてから、何も食べていない。

 この美味しい香りはライオンさんが、キッチンで朝食の支度をしているのかな?

 

 ライオンさんに昨日のお礼を言わないと、ベッドから出ようと、掛け布団をどかした。


!?


「あっ、ああーっ!?」


 こっ、この下着をライオンさんは見た?

 

「いやぁっ!」

 

 私は布団を頭から被った。


「嘘…嘘よ」


 何も持たず村から出た、だから旅先では、毎日ちゃんと洗った。

でもこれ…家を出る時に身に付けた、履き慣れて穴を布で縫った、使用感ありのヨレヨレ…下着。


「恥ずかしい!」


 叫んだ後、足音も無くコンコンと部屋の扉が鳴り「何かあった?」とライオンさんの声が、開いた扉からした。


「はぁ、ひっ」

「大丈夫?何かあった?」


 大きな声を上げたから、ライオンさん来ちゃった。

 もうこれは、見られたくない。


「だっ、だ、大丈夫です」


「ほんと、大丈夫?」


「はい……あの、ライオンさん。何か…着るもの無いですか?」


「ああ、着るものか。ベッドの俺の方の枕元を見て…女性物がないから、俺のシャツで悪いけどそれを着てくれ…」


 ライオンさんの枕元には、綺麗に畳んだ、シャツが置いてあった。


「ありがとうございます」


「うん。朝食をキッチンに用意したから、着替えたらおいで、一緒に食べよう」


「はい」


 枕元に置いてあるシャツを手に取り、ベッドから降り、彼のシャツに手を通した。


「大きい、シャツの袖から手が出ない」


 それにいい香りがした。

この香りって昨日の夜、ライオンさんからしていた、石鹸の香りだ。


 シャツの袖を捲り朝食に行こうと、扉から顔を出して、キョロキョロと外を覗いた。


「大きなお屋敷…」


 格子付きの窓。

 汚れがない真っ白な壁に、大きなシャンデリア、初めて見るものばかりだわ。

 出るのが少し怖く感じたけど…空腹には勝てず、廊下に足を踏み出した。


 長い廊下を歩きキッチンを探す。

1番奥に扉がなく、レンガがアーケード状に積まれた、入り口を見つけた。


「キッチンはここかな?」


 と、中を覗く。

 真っ白な壁、床はレンガ作りの大きなキッチンだ。

 キッチンの真ん中には4人掛けのテーブル。

 ライオンさんは料理をするのか、レンガで作られたコンロに、作業代の上にはたくさんの調味料。

 食器棚には色取り取りのお皿が並んでいた。


 そのコンロの前では、料理をする大きな、彼の背中が見えた。

 金色のたてがみに、もふもふな耳、ズボンから出た尻尾。

 どこからどう見ても彼はライオンさん。


 動くたびに揺れる、彼のたてがみが綺麗で、中に入ることも忘れて見入った。


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