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しもつけそう。  作者: 白菜
第五話 出かけよう、そうしよう
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隠し事

 乙女にとって、烏山の事は誰にも話したくない事だ。

 それは勿論、丘夏にも。

 何故なら乙女にとって烏山とは忌み嫌う対象でしかないからだ。

 聖の言う通り乙女は昔、烏山の人間だった。

 だが乙女は烏山が嫌いだった。幼い頃からずっとずっと嫌いだった。

 烏山である事が恥じるまでに嫌いだった。

 だから乙女は烏山であった事を隠した。

 絶対に誰にも知られたくない事だったから。

 そのはずだった。




「でも……丘夏なら、いい」

「え?」

「話す。烏山について丘夏に話す……ううん、丘夏に話したい」


 今の乙女は丘夏に知ってほしいと思っていた。

 この事を、烏山と自分の事について話したかった。

 話してどうなるかは分からない。

 苦しくなるだけかもしれない。楽になるかもしれない。

 もしかしたら丘夏を嫌な気分にさせてしまうかもしれない。

 それでも……乙女は丘夏に知ってほしかった。

 烏山の事を、何より──自分の事を。


「……いいの? 話したくない事なんじゃ?」

「うん。丘夏こそ、嫌な話になるかもしれないけど……いい?」

「勿論。乙女ちゃんが話したいって言うなら聞くよ」


 胸を叩く丘夏。

 本当に頼もしく、カッコ良い。

 自身の胸が熱くなるのを感じながら乙女はありがとう、と丘夏に礼を言った。

 そして乙女は語り出した。

 烏山と、自身の過去話を。




 ※※




「急に烏山家について調べたいとはどういう吹き回しですか聖様?」

「どうしても気になる事があってな。それにこれは後々のために必要な事なんだよ」

「はあ……よくは分かりませんが承りました。烏山家、その当主について調べれば良いのですね?」

「ああ。よろしく頼むぜ」

「ちなみにどうしてかというのはお聞きしても?」

「超断る。特にテメェには教えたくねぇ」

「おや、手厳しい。しかも教えてはいけない、ではなく教えないというのが何とも……」

「今回の事に関してはテメェは信用ならないからな。そんだけの話だ」

「……ならばもう一つお聞きしても?」

「なんだよ?」

「先程、那須野さんの部屋を尋ねていたようですが……それと何か関係は?」

「あん? テメェ、見てやがったのか?」

「いえ、見ていませんがカマをかけてみました」

「……」

「……」

「……オレ、テメェの事嫌いだわ」

「わたくしめは聖様の事が好きですよ。……それでは話を聞かせてもらいましょうか?」

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