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しもつけそう。  作者: 白菜
第五話 出かけよう、そうしよう
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それでもいい、それでもいいからゲームしよう

 あれから三十分が経過した。




 丘夏の隣に座る乙女はずっと無言を貫いている。

 だから丘夏も何も言わなかった。

 ただ横にいた。何も言わずに、乙女のそばにいた。

 だが、それも限界だった。

 意を決したその場から丘夏は立ち上がる。

 そして部屋の奥へと向かうと──コントローラーを手に乙女の元へと戻った。

 手に持ったそれを丘夏は乙女に手渡した。


「はい、乙女ちゃん」

「……え?」

「少し遅くなったけどゲームしようよ。今日は朝までやるんでしょ?」

「……」

「今日は負けないからね」

「……うん」


 そして丘夏達はゲームを始めた。

 いつも通りに。何も起こらなかったように。




 ※※




 画面にK.Oの文字が出る。

 結果は分かり切っていたので丘夏は何とも思わない……というわけでもなく、負ければやっぱり悔しい。

 なんだかんだで丘夏は負けず嫌いなのだ。

 すぐに再戦を始める。


「相変わらず容赦ないね乙女ちゃん……」

「ガードが甘い。だからカウンターをすぐもらう」

「アドバイスありがとう。でも、言いながらコンボを喰らわすのは止めてくださいマジで」


 みるみる内にに丘夏の使うキャラの体力が減っていく。

 どうやら今回も丘夏の負けらしい。


「くっそ……もう一度だ乙女ちゃん! 今度こそ地に這い蹲らせてやる!」

「……丘夏、もう始まってる」

「え、嘘⁉︎ って、もう体力が……死んだー⁉︎」


 惨敗だった。というより乙女の体力を一ミリたりとも削れていなかった。

 あまりの結果に丘夏はベッドの上で転がる。

 気合を入れたというのにこのザマだ。穴があったら入りたいくらいだ。

 それを見た乙女がクスクスと笑った。


「やっぱり丘夏って、面白い」

「それってからかいがいがあるとかそういう意味じゃないよね……」

「ううん、本当に丘夏は面白い。それに……優しい」


 乙女はコントローラーを床に置くと、座ったまま天井を見上げた。


「丘夏はどうして何も聞かないの?」

「初めはそうしようかと思ったんだけどね。乙女ちゃんが聞かれたくなさそうだったから。なら嫌な事を聞くより、楽しい事をやった方がいいかなって」

「その考え方……嫌いじゃない」

「でしょ? よくある漫画だったら、ここで僕が乙女ちゃんに色々と聞き出そうとする場面なんだけど……僕、そういう柄じゃないしね」

「……」

「だからさ、話したければ話してよ。話したくなければそれでもいいからゲームしようよ。僕はただ乙女ちゃんと笑って遊べるんなら何でもいいからさ」

「……それでいいの?」

「勿論」




 丘夏はベッドから起き上がる。

 自然と乙女と目と目があう。

 丘夏は笑った。乙女も笑った。

 笑いながら涙を一粒流した。



「本当に……優しいね、丘夏は」


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