正直でよろしごふぁぁぁぁっ!
ゆあんはいつも薫の肩に乗っている。
よほど仲がいいのか何なのか分からないがゆあんは兄である薫に四六時中、べったりなのだ。
180センチは確実に越えてる薫に無邪気に子供のようにゆあんが乗ってる様は兄弟というよりは怪物のようで実際、下野荘ではゆあん達は『怪物』扱いだ。
「おっかーは女心をもう少し知るべきなのだ! そうでなくても女の子にセクハラはダメなのだぞ!」
「……そういうゆあんちゃんは、いや仁井田さんはもう少し手加減というものを知るべきだと思うんだ」
ゴミ捨て場から帰路につくなり、丘夏はゆあんに説教を喰らっていた。
流石は怪物か、あの巨体から放たれる薫の回し蹴りはかなりの威力があり、丘夏の左頬は真っ赤に腫れ上がった。
それをおもむろにゆあんに見せつけてやる。
「うっ……それはすまなかったぞ。でも、おっかーがセクハラしたのも悪いと思うぞ?」
「セクハラ? 僕がいつセクハラしたって言うの?」
「ほ、本気で言ってるのか……?」
「うん」
丘夏が頷くなり、驚愕の表情を浮かべるゆあん。
どういう事だろう。まさか丘夏がゆあんと喋る事自体がセクハラなのだろうか。
それはおかしい。第一、喋りかけてきたのはゆあんの方だというのに。
「その……ぱ、ぱぱぱパンツの事……」
「パンツ? 今ゆあんちゃんが履いてる可愛いクマさんパンツがどうかしたの?」
「だからそういうのがセクハラなんだぞ!」
「クマさんパンツが?」
「おっかーの発言が!」
ここまで聞いても尚、丘夏にはどうしてゆあんがそんなにも怒っているのか分からなかった。
まぁ、とりあえずここは謝っておくかという気持ちで丘夏は頭を下げた。
「ごめんごめん。悪かったよ」
「まったく……おっかーは女の子なら誰でも見境ないなくセクハラするのか?」
「人聞きの悪い事を言わないでよ。確かに乙女ちゃんみたいな美少女だったらおっぱいを観察したり、尻を揉んだりするするかもしれないけど……セクハラなんて人として最低の事はしな」
「それ、セクハラだぞ」
「そんな馬鹿な⁉︎」
「というかおっかー、そんな事してたのか……?」
「ちょっ、引かないで⁉︎ 確かにしようと常々思ってるけどやった事はないって!」
ゆあんの丘夏を見る目が養豚場で戯れる豚を見るそれになっていたので、慌てて弁解する。
「……思ってるのか?」
「思ってない! 思ってないよ!」
「そうか、それならいいんだぞ。おっかーとの今後の付き合いを真剣に考えなければならないと」
「まぁ、いつもパンツを見てる乙女ちゃんなら多少のセクハラをしてもいいかな、って考えてはいるけどね」
「兄ちゃん」
「……」
「え、その、あの仁井田さん? なんで回し蹴りの構えをとるんですか? ゆあんちゃんからまだ何も言われてないですよね? それなのにどうして僕の前で足を振り上げごふぁぁぁぁっ⁉︎」
本日二度目の仁井田さんによる回し蹴りは一度目よりも数倍痛かった気がした。




