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世界最強リサイクル ~追い出された英雄達は新世界で『普通の暮らし』を目指したい~  作者: おおいぬ喜翠
第三部 ダンジョン編

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231 笛吹き男

 プレゼントが何とかなった為、デート場所は気にしつつもカイはアルパカ捕獲に着手する事にした。今居る地方は暖かいというか暑い位なのだが、牧場や農地などの他施設がある地方は気候も違って寒い地域もある。そして防寒具にアルパカの毛は最適だった。


「今日はアルパカを捕まえに行きます!」

「おお、ついに行くのか……!」

「ええ、ついにこの時が来ました。前の世界でも私アルパカを飼育しておりましたからね! 高地にある牧場も先日拡張した所なので、迎える場所もばっちりです!」

「おお、家畜が増えるのは良いの~!」


 カイはやる気満々で、最近家畜の世話をしているタツもテンションを上げた。


「そういや捕まえるとこ見た事ねえな。おれもついて行っていい?」

「良いですよ。ガンナーは動物に好かれそうですからね」

「おら! おらも行きてえ! おらも故郷でアルパカ飼ってたんだぁ!」

「では私とタツとガンナー、後はメイで行きましょう」


 真っ先に行きたい! と挙手しそうなケンが難しい顔で悩んでいる。


「ケンはいいのか? アルパカ好きなんだろ?」

「むう……! 行きたいのは山々だが、野生のアルパカは飼い慣らされた家畜と違って警戒心が強いだろう。奴らは怯えたり警戒すると臭い唾を吐いてくるのだ……」

「ケンは……気配で警戒されてしまうかもしれないので今回は止めておいた方が良いかもしれませんね……。人間に慣れてから触れ合いましょうか」

「うむ……」


 ケンが嫌がるという事は相当臭いんだなと理解した。ともあれ、この四人でゲートを開いて向かう事にする。場所は先日ケンとガンがデートをした南東にある山脈の辺りだ。


 

 * * *



 到着すると早速標高が高いので空気が薄い。体調を崩さぬように呼吸に気を付け、一行は辺りを見渡した。


「成る程、アルパカが好みそうな環境です」

「タツどん、此処は空気が薄いから鼻から吸って口をすぼめて強く息を吐くんだぞ。腹式呼吸だ!」

「分かった〜!」

「そうですね。いきなり高所に来ましたから、身体を慣らしてから動きましょう」


 アルパカを探すより先に、一行はまずレジャーシートを敷いてピクニックを始めた。脱水を防ぐ為に確り水分を取っておきたいのである。


「そうかァ、前来た時はオルニットで慣らしながらだッたし気付かなかったな。メイやカイは大丈夫そうだけど、タツ気を付けろよ」

「そうですね。高山病にならないようにしましょう」

「うんうん。高山病は辛いからなぁ……!」

「皆が儂に手厚い~!」


 メイがピクニックバスケットの中身を広げる。今日は水筒に入れたレモネードとナッツとドライフルーツ、後はおにぎりという持ち歩きやすい物ばかりだ。


「これメイが握ったろ、おにぎり。でけえからすぐ分かる……」

「ふへぇ、バレちまった! 具はガンナーどんの好きなツナマヨと煮つけた昆布になっとります!」

「儂昆布のが好きぃ~!」

「栄養補給も大切ですからね。先に確りしておきましょう」


 まだ着いて何もしていないが、和気藹々とひとまずピクニックをする。だけではアレなので、一応食べながら作戦も立てる事にした。


「具体的にはどうするんだ?」

「これまで集めた家畜もそうですが、私の場合は他と少しやり方が違います」

「これまで……羊や山羊や牛じゃろ~?」

「あれ全部カイどんが集めたのか? 野生の捕獲なんて大変だったろうに……!」


 こほん、とカイが咳払いをして胸元から一本の棒を取り出す。否、棒ではない。楽器のようだった。


「これは魔王秘密道具のひとつです」

「魔王秘密道具ってなに?」

「ですから魔王の秘密の道具です」

「笛じゃのう。横笛か?」

「ええ、そうです。これは魔笛まてきでして、音色に魔力が宿ってですね……」


 実際に音は出さないが、吹く真似の仕草をする。


「まあ吹く曲や吹き方によって対象は変わるんですけど、この笛の音を聞いた動物はふらふらと私について来ます。特にアルパカは音楽が好きですしね」

「少しっていうか大分やり方他と違うだろ」

「ハアァ、そりゃ便利だなカイどん……!」

「え、これ儂ら必要だった?」


 三人の脳内では笛を吹くカイの後をメルヘンチックにアルパカがついて来る様子が浮かんでいる。


「必要ですよ。笛の音が届かなければ意味はないですし、まずはアルパカを見付けて私の近くに追い込んで貰う必要があります。それとついてくる時は夢遊病みたいな状態ですので、足場が悪くても気にせず進んでしまいます」

「成る程、じゃあまずアルパカを見付けてカイの方に追い込むんだな」

「で、移動中はアルパカが崖から落ちたりしないように見張って助けると……」

「そうですそうです!」


 それは確かに人手が必要だ。納得した所で、メイが不思議そうに首を傾げた。


「カイどん、前の世界でも手広く牧場やっとったのかな? そんな便利な笛……」

「あ、いえ。家畜は寧ろ応用でして……私はやりませんでしたけど、先代とか先々代の魔王はこれで人間の子供を攫ったりなんだり……」

「この笛の音を聞いた“動物”はッつってたもんな……」

「カイ殿が平和に使っとるだけで結局魔王の持ち物じゃわい……!」


 あまりよろしくないので今のは聞かなかった事にした。少ししたら大分身体も慣れたので、今度こそアルパカ捕獲に乗り出す事にする。ガンが戦闘機に乗って辺りを探し回り、アルパカの群れを見付けるとカイが居る方向へと追い込んでいく。


 ガンが追い込んだアルパカを、またメイとタツが更に追い込んでゆき――その先にはフルートよろしく魔笛を構えたカイが居た。アルパカが視界に入った途端、ふっと目を細めて吹き始める。聞いていて何だか楽しくなるようなクラシック調の曲だった。そして、その曲を聞いた途端にふらふらとアルパカがカイへと集まっていく。


「うはは、本当にアルパカがカイ殿に捕まっとる!」

「あの笛すんごい威力だな……! それにあそこまで毛が伸びたアルパカを見るの初めてだ……! 毛の刈り甲斐がありそうだな……!?」

「おれ気付いた。この捕まえ方ならケン来ても大丈夫だったな?」

「ままま、それは万が一があろうし~!?」


 十分アルパカが集まった所でカイがゲートへ向けて歩き始めた。慌てて三人も後を追い、危ない道を進みそうなアルパカをぐいぐい押して軌道修正などをする。


「おれ昔読んだ話でこういうのあッたわ。笛で鼠を集めて川で溺れさせて駆除するんだよ。けど報酬をケチられて、怒った笛吹きが街の子供を攫っちまう話……」

「それカイ殿の父上や爺上の話じゃなくて~?」

「流石に世界は違うだろうから、どの世界でも割とある事なんだろかぁ……」


 三人は雑談しながらアルパカを押し込み、カイが直接牧場に繋げたゲートを潜っていった。最後のアルパカがゲートを潜ったのを見てから、三人も後を追う。全員潜ったのを確認すると、ゲートを閉じてカイが魔笛を口から離した。


「皆さん、ありがとうございました! 今日はひとまずこれで……!」

「あれ、毛刈りは今日やっちまわなくて大丈夫かカイどん? おら達まだ全然元気だし、出来るけども……」

「毛刈りすんなら手伝うぜ?」

「儂も儂も~!」

「いえ……」


 何故か青褪めた顔のカイが膝を付く。その周りを『此処どこ~?』みたいにアルパカが物珍しそうにきょろきょろしていた。小屋に隣接した牧場の柵内にゲートを繋げたので、ひとまずこのままで大丈夫なのだ。


「毛刈りは重労働ですし、このアルパカ達はまだ慣れていないので、毛刈りの時も私が魔笛を吹く事になると思うのですが……」

「うんうん、その方が良さそうだぁ」

「今ので何というか肺活量を? 使い果たしまして……今日の所は……もう何時間も吹けないので……」

「あ、あァ……あんな標高高い所で盛大に笛を吹くから……」

「カイ殿頭痛とか大丈夫そ……?」


 全員大変納得して、毛刈りは明日行う事になった。ひとまずカイを休ませ、残りの三人で水や飼料の世話をして――後はアルパカ達の名付けで凄く盛り上がった。

お読み頂きありがとうございます!

次話は明日アップ予定です!

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