第4話 ラブコメのテンプレにも負けない
じわじわ行きます
バサバサバサバサ
クラスの提出物を集めて職員室に運ぶ途中で、思いっきりぶちまけてしまった。
そもそもこの量を女の子1人で運ばせるとか酷いよね?
とにかく拾わないと…
ささっ、さささっ
まるで分身の術かと思うほどの素早い動きで見る見るノートやプリントが集められていく。
「これで全部かな?」
ニコッと微笑んでいるのはまたしても紅雄兄さん。
何この人、私のストーキングしてるの?
…なんて思いたかったけど、紅雄兄さんに助けられている生徒って男女問わず沢山いるのよね。
「ありがとうございます」
とりあえず礼を言って受け取ろうと思ったら、
「沢山あるから手伝うよ」
とか言ってきた。
「結構です。私の仕事なので」
なるべく冷淡に言ってみる。
だって、関わりたくないし。
バサバサバサバサ
階段から降りたらまたぶちまけてしまった。
そしてまた助けに来るのよね…
…
…
来ないの?
そうよね、叫んだりした訳じゃないし。
仕方なく1人で集めていると、向こうから箱を持った紅雄兄さんがやってきた。
「あ、やっぱり」
なによ、やっぱりぶちまけると思っていたならついてきてくれても良かったじゃないのよ。
って、どうしてその箱に入れていくの?
「これなら持ちやすいよ」
「そう。ありがとうございます」
それだけ言うと私は紅雄兄さんの顔も見ないでさっさと立ち去った。
な、何よそれ。
私が持ちやすいように箱とか探してきたっていうの?
どれだけお節介なのよ。
実の兄でなければ少し心が動かされるところだったわ。
とりあえず、この空き箱はどこに返せば…
『風紀委員会』
こんな箱にまできちんと名前を書いてあるとはさすが風紀委員会ね。
私は風紀委員会室に行くとノックをした。
「どうぞ」
中に入ると紅雄兄さんと風紀委員らしき人達が4人。
「これ、返しに来ました」
「あっ、わざわざありがとう」
いちいち笑顔なのが何だか軽薄な感じで嫌だわ。
「じゃあこれで」
私は風紀委員会室から出ていこうとすると、
「君、ちょっといいかな?」
3年の風紀委員長に呼び止められたのだった。
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