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ライトインフリゲート  作者: ああ
第2章「新部隊の始動 ~舞台は宇宙へ~」
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第11話 青い海に集うもの……

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!」


エンペラーサウルスの甲高くそして不快な鳴き声が辺りに響き渡る。

その鳴き声に釣られたのかUMAが一匹また一匹と数を増やしてゆく。


「まさか、違う種類のUMAまで呼び寄せるなんて、でもやるしか……」


流石の柊も疲労の色を浮かべる。


「柊、マリアが到着するまで持ちこたえて、もう少しで来るはずよ」


飛鈴はそう言いながらフェニックスのミニガトリングガンでイワシスと呼ばれている大型のウチュウトビウオを撃墜する。

とはいえいくら撃墜しても、あまりにも数が多く総数は減ったようには見えない。


「みんな、無事か?」


「これまたごった返してるな」


そこに崎村とジョセフも空に上がり、戦列に加わった。


「してやられたよ、エンペラーザウルスの特徴を利用されるとはね。さっきの砲撃でUMAの群れは完全にこちらをターゲットにしたようだな」


「エンペラーザウルスの特徴?」


「ああ、エンペラーザウルスは火炎弾で群れの攻撃対象を指示するんだが、さっきの海賊の砲撃はまんまとこれを真似してたという訳さ」


柊にエンペラーザウルスの特徴を説明すると、崎村は次の指示を出した。


「それと、奴には一瞬で移動する能力がある。目の色に気をつけるんだ、それが奴が瞬間移動を行う前の兆候だ」


「そう言えば……」


先ほどエンペラーザウルスが消えた時の事を八重咲は思い出した。

たしかに目の色が青色から緑色に変化していた様に思う。


「皆、俺が奴に近づくまでの時間を稼いで貰えるか?」


「何か良い作戦を思い付いたんすか?」


翼雷が尋ねる。

柊も近くにいたエニーヤを牽制しつつ話に耳を傾けた。

当の崎村はエンペラーザウルスの方に視線を向ける。

当のエンペラーザウルスの方はと言うとまるで観客の様にこちらと他のUMAの戦いを傍観していた。

開戦当初はかなり暴れていたのが嘘のようだ。


「ああ、俺が奴を惹き付けてゲートに誘導する、これにはレギーネ、君の協力が必要なんだが、頼めるかな?」


「撃破が難しい今、それが一番の策でしょうね……分かりました、レノン様のご意向もありますし、あなたのご要望に添いましょう。とはいえゲートを開くまでしばらく時間がかかりますが」


レギーネはあまり納得していないようだったが、そう言うと再びウィンドウファルコンの方へと戻って行く。


「崎村少佐、切り込み役なら私もやりますよ」


「いや、その役は俺一人だけで大丈夫だ。柊は周りのUMAを頼む、ジョセフ中佐も柊の援護をお願いできますか?」


「おうよ、任せておけ」


ジョセフが答える。


柊もエンペラーザウルスへの攻撃に加わろうとしたが却下されてしまった。


「それと、あれは後ろから回り込む様な真似を見せたら怒りだす。注意してくれ、では……行くぞ!」


崎村はそう言うと自身の機体「レイゼン」で自ら突っ込んでいく。


「あまり使いたくは無かったがやむを得んな」


レイゼンのセーフティを外すと機体下部が変形しチェーンソーの様な形をした刃が出現する。その刃の部分が加熱され、赤みを帯始める。


「連動ビームエッジ」、レイゼンの専用武装であり、本来は機銃と連動してビーム刃が形成されたチェーンソープレートを打ち出す武器なのだが、そのまま近接用として付けたまま使用する事も出来た。


「消える兆候を見逃したら終わりと言う訳ね」


楊はフェニックスのミニガトリングを4つ共全て展開させる。

4つの銃身から放たれた銃火が周囲のUMAを次々と落としていく。


「翼雷、初撃は頼んだぞ」


「分かってます」


翼雷はゼロの青い機体をロールさせ、UMAの間を抜けるとターゲットであるエンペラーザウルスに専用機関銃「HANABI」で撃ち込む。

発射された弾丸は通常の機関銃の弾丸よりも小さいが目標に当たると自動的に爆発するようになっている。

弾丸はターゲットの周囲にいたUMAに誘爆した。

エンペラーザウルスもこちらが動いた事に気づいたのか四枚羽を羽ばたかせながら崎村の紫色の機体を睨み付ける。

爆風の中を飛び、崎村はレイゼンの連動ビームエッジを展開させ

一閃が走る。


「グュオオオ!?」


「やった!」


八重咲が感嘆の声を挙げる。


エンペラーザウルスの翼がビームエッジの刃によって切り裂かれていた。

しかし、体勢を崩すが3枚翼になっても飛行能力は失っていない。

不意を突かれた暴風竜は体勢を整え、自身に傷を付けた機体に向かって反撃の姿勢を見せる。


「食いついたな、俺がゲートに入ればこいつも必ず付いてくる。ゲートを進行方向に開……」


その時、エンペラーザウルスの眼が傍観者から狩人の目付きに変わる。

その燃えるような俳色の眼とは裏腹に周囲の空気は一気に凍りつく。

呼び出されたUMAでさえも動きが一瞬止まった。


「……!!」


鋭い牙がレイゼンを襲う。

崎村は機体を反転させるが、ビームエッジごと捕まれてしまい、機体を持っていかれそうになる。

一瞬の判断で武装をパージすることで難を逃れた。


レイゼンの前方に黒い光の輪が出現する。

崎村は機体のスピードを上げる。エンペラーザウルスがそれに続く。

徐々に間の距離が縮まっていく。


「まずいこのままだと追い付かれるぞ、奴の注意を他にそらすんだ!」


「この距離だと子機を飛ばしても……」


「また俺のスピードでも追い付けそうにないか……?」


ジョセフの指示で飛鈴と翼雷が援護に回ろうとするが、間に合いそうにない


青海と八重咲に至っては状況を見守る事しか出来なかった。


「いくらあの二人でも……」


「あれ、そういえば柊中尉は?」


ここで八重咲がある事に気づく


「柊、下がれ!巻き込まれるぞ!」


「下がりませんよ」


既に柊はエンペラーザウルスの眼が変わった瞬間から行動を起こしていた。

エンペラーザウルスに並行する形で飛行していたのだ。

一瞬、柊はエンペラーザウルスと眼が合った気がした。

眼の色は俳色からエメラルドを思わせる緑色に変わっていた。


「目が緑色に?」


柊が眼の色が再び変わったのを確認した直後、柊、崎村とゲートの間を防ぐ様にエンペラーザウルスがその体躯を移動させる。


皇帝は獲物と言えども後ろからでは無く、正面から捕らえる。

そう言いたげな姿勢であった。

喉元から光が漏れ出す。


「正面から撃ち落とそうと言う訳か、好都合だ、このままレイゼンごと奴を押し出して……!!柊、なぜ前に出る!?」


「崎村少佐、ここは私に任せて下さい」


崎村がそう思案するのも束の間、柊は機体を更に加速させる。


エンペラーザウルスが光線を吐くために首をもたげたのを見計らい、加速されたスターダンサーから喉元に向けてミサイルを発射する。


「柊!」


「崎村!?」


誰もが固唾を飲んで見守っていた直後、エンペラーザウルスの周囲で爆発が起きる。硝煙が吹き飛ばされた後にはエンペラーザウルスの胴体の至る所にワイヤー付きの銛が突き刺さっていた。

ワイヤーはあの海賊船と繋がっている。


「よし、大物がかかったな!」


「やりましたね!お頭!」


先ほどの爆発は海賊船からの砲撃であった。



「長居は無用だ、開いて貰ったゲートからスピルヴィアー星にずらかるぞ!」


コウケイはエンペラーザウルスを捕らえたまま、離脱しようとするが、そこに新しいゲートが開く。


「なんだ、もう帰りのゲートはいらんぞ?」


「お頭!あれも俺達が開いたゲートじゃありあせんぜ!」


中から白色の戦闘機が4機、アローヘッドの編隊を組んで飛び出してきた。

「なんだあの戦闘機たちは……?」


「あの黒い機体の群れとその機体についている翼のマーク……」

「間違いない!『ヴィルト』ダ!」


「ベルト?」


「なえちゃん違うよヴィルトだよ」


「ヴィルト……」

「崎村一体なんなんだよそりゃあ?」


「バルベア国の航空部隊の一つダ」

「だがただの航空部隊というわけではねえ……」

「ヴィルトに所属しているパイロットたちの操縦技術は全員トップクラスダ……」

「つまり彼女らが来てくれたからにはもう安心ダ……」

「すぐに片がつク……」


「すぐに片がつくだって……」

「一体どんな連中なんだ……」


柊たちが見守る中ゲートから飛び出してきた戦闘機たちはアローヘッドの編隊を崩し一気に四方八方へと散らばっていった。

そして散らばった後4機の戦闘機でエンペラーサウルスを中心に周囲を囲むような編隊へと変わり……


「「「「バババババンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!」」」」


一斉に海賊船に対しての砲撃が行われた。

一切の慈悲を感じさせない悲しい鉄の雨は海賊船の表面をエグっていった。

エンペラーサウルスに呼び出されたUMAやもちろんワイヤーに引っかかっていたエンペラーザウルスもその巻き添えを食らっていた。

無限のように沸いていたUMAの数も一気に減っていきエンペラーサウルスに関してはバタバタと水面に水しぶきを勢いよくたて苦しんでいる様子を浮かべていた。

そして体中が少しずつ削られていき最後には肉片が辺りに散らばり海の底へと沈んでいった。

皇帝の実に呆気ない散り際に柊らはポカンと口を開けていることしか出来なかった。

獲物の撃退に成功した4機の機体はウィンドファルコンに順々に着陸していった。

そして最後の機体が着陸したとほぼ同時のタイミングで柊らに無線が入った。


「こちらマリアだ!」

「おまえら大丈夫か!?」

「応援に来たからもう安心するんだ!」


柳川少将の野太い声がナディエージダのパイロットたち全員に無線越しに伝えられる。

それに応答したのはジョセフ中佐だった。


「少将こちらジョセフです」

「こっちはもうすべて片付きましたし応援は不要っすよ」


「すべて片付いただと?」

「……」

「よくやった!流石我ら東京支部が誇る精鋭たちだ!」


(((今の一瞬の間はなんだったんだ……)))


「とりあえず一旦こっちに戻ってこい」

「何やら色々と話がありそうな雰囲気のようだしな」


「「「「「ラジャー!!!!!」」」」」


騒動続きに見舞われていた柊たちらだったがやっと一旦休息が得られる。

パイロットたちはそのことだけを考えながらそれぞれマリアへと帰投してゆく。

1機1機一つずつ空から消えてゆく……

柊が自分が帰投する順番を待ちながらふと海賊船のある方へと振り返った。

海賊船……

その船体には大小さまざまな大きさの穴が無数に空いていた。


(もう一度飛ぶことは出来なさそうだ……)

(中にいた船員も恐らくは全滅だろうな……)

(しかしあのヴィルトとかいう部隊のパイロットたち……かなりやり手に見えるな……)

(連携がかなり整っていたしあのエンペラーザウルスを肉片にするほどの武装もかなりのものだった……)

(……)

(ここでマリアに戻ってもまだまだ今回の件で片付いていないことはたくさんある……)

(崎村少佐の件に私の件も……そして空のことも……)

(まだ私たちは序章を終わらせただけなんだ……)


「よし!まだ残ってるのは柊中尉と青海少尉だな」

「二人ともどちらから帰投するんだ?」


柳川少将からの無線がふたたび入る。

柊が考え事をしている間にどうやらほとんどの機体は帰投していたようだった。


「昴!先に帰っていいぞ!私はまだこいつ(スターダンサー)と飛んでいたいしな!」


柊は海賊船付近を飛行していた青海に無線で話す。


「でも中尉、私なんて今回の戦いでは何もできませんでしたし……」

「というかいつも私って本当に皆の役に立ててるのかなぁとか時々考えちゃうんですよ……」

「薄々気づいてたんですよ……」

「なえちゃんにはパイロットとしての才能はあるけれども自分には何もないんじゃないかって……」


「そんなことないさ!昴だってたくさん活躍してるじゃないか!」

「ほら今回だって私よりUMAを撃破してたんじゃないか?」


「ほ、本当ですか?」


「あぁ!」

「昴だってちゃんと上達していってるんだ!」

「これからもみっちり特訓してやっから覚悟しておくんだぞ!」



「は、はい……」

「頑張ります……」


無線越しだったため青海の表情まではよくわからなかったが彼女の声からは明らかに覇気がなくなっていた。


「とりあえず今日は疲れただろうし先にマリアへ戻っておきな」


「はい……」


どこか悲しげなその返事には流石に鈍感な柊も気づいていた。


(あぁ……やってしまった……)

(でも私って人を励ますよりも励まされる側だったわけだしいざこういう時になっちゃうとどうすればいいのかわからなくなっちゃう……)

(こんな時、空ならどうしてただろう……)

(っていかんいかん!)

(いつまでも空に頼ってちゃ……)

(私だって成長していかなきゃいけないんだ……)

(とりあえずマリアに戻って時間があったらもう一度昴と話見よう!)


まだまだ上官としては未熟な彼女だがいつかは一人前の上官へと……

そう胸に決心を決め彼女は前を向いていくと決めた。

そう前を向いていくと…………


「ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


マリアとは反対の方向……

つまり海賊船が墜落している場所辺りから大きな爆発音のようなものが聞こえた。


「なんだ?何が起こったんですか!?」


前を向いていこうとしていた柊の顔が後ろへと振り返った。

するとそこには衝撃のビジョンが柊の目に浮かんでいた……

柊の目線の先には……

その先には巨大な翼を広げたUMA……

エンペラーザウルスがいた!!!

そしてエンペラーザウルスの真下には炎に包まれたウンディーネ……

青海の搭乗していた機体が変わり果てた姿で落ちていくところが見えた。


「どういうことなんだ?」

「なんでおまえがまだ生きてるんだ……」


同様を隠せない柊だったがここで更に新たな事実が発覚することとなる。


「おまえ……」

「おまえは一体何を口に咥えてるんだ……」


エンペラーザウルスは少し細めの大木のようなものを

咥えていた。

だがその大木のような物体の正体は戦慄を覚えるようなものであった。


「離せよ……」

「今すぐ昴を放せーーーーーーーーー!!!!!」


柊の心の底からの吐き出した叫び声が周囲に響き渡った。

だがそんな声も虚しくエンペラーザウルスは口に咥えてるいるものをまるで小枝を折るように簡単にポキッと!真っ二つに割ってしまった……


「……」

「……」

「……」


その光景を見た柊の目の前は真っ暗になっていった。

何も考えられなくなり……

そして……


「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


発狂した……


このとき柊は、自分の迂闊さを心の底から悔やんでいた。

たしかにエンペラーザウルスが蘇り、再び攻撃してくるとは全く想像が及ばなかった。

しかし警戒を解かずもっと帰還を急いでいたら、せめて新米隊員を優先的に帰す原則を守っていたら

これからも共に闘っていくはずだった、大事な部下である青海昴も今ごろ無事マリアに着艦して

このような形で突然失うこともなかったと。


無意識のうちに出た悲痛な叫びが静岡の上空に響いた。

そしてスターダンサーの無線を通してマリアにいる全員にも、脱出艇に移動中のウィンドファルコンの船員にも、

ちょうど無人の格納庫に着艦したばかりのヴィルト隊員の耳にも届いた。

それは獣の咆哮のごとき慟哭であった。


(昴はこんなところで死んでいい子じゃなかった……もっといろいろな事を教えてやりたかった……)

(いつかは宇宙を見せてやりたかった……これからも早奈枝と一緒に成長していくのを見たかった……)


いま柊の脳裏には、これまで彼女と交わした会話や共に行動した思い出の数々が浮かんでいた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ……」


いつのまにか柊の叫びは悲しみから怒りへと転じていた。


「このクソ鳥がーーーーーーーーー!!!!! 何てことしてくれやがったーーーーーーーーー!!!!!?

皇帝だかなんだが知らんがもう許さねえ……生きて帰れると思うなよ……!!!!!!?」


そしてスターダンサーのリミッターを解除した柊は、エンペラーザウルスにも劣らぬ音速のスピードで迫ると

銃弾の雨嵐を浴びせ始めた。ナディエージダでもごく一部の者しか見たことがないバザーカーモードの発動であった。


ーーーーーーーーーー


マリアの滑走路に降りたばかりの同僚たちは直ぐに異変に気付いた。

特に八重咲は、あまりの凄惨さに自制が効かず楊飛鈴の腕にすがりついて泣きじゃくっている。

それを優しく抱きとめて慰める楊の目も涙が止まらなかった。

翼雷も彼女たちほどではないが、かなり強いショックを受けて固まっていた。

ここまで充分以上の働きをしてくれた若い兵を、もうこれ以上戦わせるわけにはいかない。

そう判断したジョセフと崎村は、自分たちだけで再び出撃する準備を始めるが

そこに太田司令と二人のパイロット……第6部隊の時野流と太宰煉が現れた。


「太田司令どうしてここに?」


「それに時野と太宰もどうしたんダ?」


「君たちの事態を知って駆けつけてきたんだ。心配しなくていい、今度の私は本物だよ」

「いまから出撃するのなら、この二人も連れて行ってくれ。彼らにはエンペラーザウルスへの秘策を授けておいた」


背後に控える太宰と時野も順番に口を開く。


「これまでの皆さんの活躍は、艦内の皆が合同本部のモニターで全部見ていたんです。

マリアに先行してたカメラ搭載のドローンテイマーが撮影してたんですよ。

もっとも撮れるのは外の様子だけで、敵艦の内部までは分かりませんでしたが」


「なにしろ偽風鳶の墜落から始まって、海賊たちやレベル5のUMAに、洗練された謎の戦隊と見どころ満載でしたからね。

思わずパイロットの血が騒いでワクワクしながら見てましたよ!?」


「不謹慎だぞっ、時野大尉! 彼らは敵の謀略に巻き込まれた上に同士を一人失っているのだぞ!?」

「はっ、申し訳ありません。失礼しました……」


太田司令は時野を軽く叱責した後、ジョセフと崎村に向き直って話を続ける。


「柳川少将は、君らを帰艦させてからマリアの武装でエンペラーザウルスを討ち取るべきだと主張していたが。

確かにそれなら安全に戦えるが、それでは君たちは気が済まないのだろ?」


「当然です! いま残っている柊と同じように、この手で青海の仇をとってやりたいんダ!?」


テンションの上がった崎村が片手の拳を硬く握り決意の強さをあらわにした。

無論ジョセフも腕組みをしたまま首を縦に振って同調する。


「よかろう……それでこそ君たちに任さられる。あのUMAの最大の脅威は瞬間移動能力と再生能力だが」

「それを無力化するための策を、畑中教授が移動中の会議で提言してくれた」


太田司令がそう力強く断言する様子に、ジョセフと崎村が光明を見出したその時……


「「待ってください!? 僕(私)もまだ戦えます、その作戦に加えてください!?」」


見ると楊と翼雷が縋りつくように太田司令に懇願していた。


ーーーーーーーーーー


「おいおい無茶を言うもんじゃないよ楊中尉に翼雷少尉。君たちはここまで立派に頑張ってくれた。

あとは大人たちに任せなさい」


太田司令はやんわりと諭すように説得に当るが、二人はまだ引き下がらない。

それをハラハラして見ていた崎村が、上官が業を煮やさないうちにどうにかしようとしたとき

いきなり両者はグラリと体のバランスを崩して、飛鈴はなんとか持ちこたえるが翼雷が尻もちを突いて倒れた。


「うわっ何だ、痛たっ……」


「時野隊長っ、今こんな悪ふざけしてる場合ですか!?」


いつのまにか二人の背後に回り込んだ時野が、膝カックンを仕掛けてこうなったのだ

直属の上司の子供じみた行動に呆れた飛鈴は当然抗議するが。


「こんな時だからですよ。普段ならこんな悪戯に引っ掛かるような君たちじゃないでしょ?

それだけ心身共に疲れ切っているという証左ですよ。これじゃあ戦えるわけがない」


と肩を竦めるポーズをとり飄々とした態度で時野は答える。

二人の心情は釈然としないものがあったが、ここまで来るともう引き下がるしかなかった。

またそれとは別行動で、いつの間にかフラワーデイズの傍で蹲り泣き崩れる八重咲に

太宰は穏やかに微笑みながら近づいていた。


「ひさしぶりだね八重咲少尉、いや早奈枝ちゃん」


「グスッグスッ……れ、煉さん……昴ちゃんが昴ちゃんがっ!? ここまでずっと一緒にやって来たのに……」


「うん、かけがえのない友達を失って辛いのはよく分かるよ。だから今日だけは思い切り悲しんでいい

でもいつかは立ち直らないといけない。なにより僕たちはUMAから民を守る兵士だからね!」

「八重咲少尉、いまの君は初めて会ったときとは比べ物にならないくらい成長して強くなっている。

そんな君なら必ずそれができると僕は信じているよ……」


親友の死で無力感に苛まれ打ちひしがれていた八重咲は、あまりに意外な言葉をかけられ

思わず顔を上げて太宰の顔を見つめてしまう。


「つ……強い? 私が強いんですか?」


「うん、そうじゃなければ太田司令からこんな機体を託されたりしないし。あの柊中尉にここまでついていく

ことなんて出来ないし、これはとても凄いことなんだ。君はもっと自信をもっていいんだよ」

「今まで君が頑張っていたのは皆が見てるから。あとは僕たちに任せてくれるかな?

君が尊敬する柊中尉は絶対助け出すし、青海少尉の仇も取ってあげるから信じて待っててね」


「は……はいっ……煉さん。柊中尉のことお願いします!?」


やがて八重咲は気力を振り絞って立ち上がり、深々とお辞儀しながら太宰の両手をガッチリ握りしめ

本来なら自分がやりたかった柊救援の役目を彼に託した。

そんな様子を見ていた二人からは対照的な反応が返ってきた。


「うわっ恰好いいなぁ、どうせなら私もあんな風に説得されたかったな」

「うわっキザすぎる……何かあいつは虫が好かないな。それにあの『大統領』と同じ苗字だし」

「あっバカッ、それNGワードだから。言っちゃダメ!」


翼雷の不用意な一言を、太田司令が当然聞き漏らすはずはなく目ざとく反応する。


「ん、大統領? それは何のことかね?」

「いや、まあいいか……それは後で改めて訊くとしよう。いまは作戦の方が重要だ」


そして作戦の全てを語り終えた太田司令は、これから出撃する精鋭たちを感慨深げに見つめる。


「4人ともこれでいいな」

「そう言えば……この組み合わせも久々だな。つい数年前までお馴染みの顔ぶれだったが

これほど頼もしい部隊は他になかった。それがここで復活とは何かの巡り会わせかもな……」

「では後は頼んだぞ……」


「「「「ラジャー(了解)」」」」


柊たちより遥かに付き合いの長い彼らにとって、これ以上の言葉のやりとりは無用だった。


海上、ウィンドファルコン


海上に浮かぶウィンドファルコンではレノン一行とヴィルトのメンバーたちがいた。


「あいつ(エンペラーザウルス)まだ生きていたの……」


レギーネは空に浮かぶUMA、エンペラーザウルスを見上げながら言った。


「エンペラーの奴め……まさかヴィルトでも撃破できなかったというのか……」


レギーネに続きレノンも空に浮く皇帝について一言呟いた。

すると傍にいたヴァイスの口元が少し緩んだ。


「ご安心くださいレノン様……」

「我々は獲物を仕留められなかったわけではありません……」

「わざと獲物を生かしたのです」


「わざと生かしただと?」

「何故そんなことをお前たちが?」


「彼女たちの力を実際この目で確かめて見たかったのです……」

「いや……彼女と言った方が私にとっては正しいでしょうね……」

「そう彼女……ミスヒイラギ!」

「彼女の操縦技術は美しい……」


海上、柊……


「くそがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


「ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダ!!!!!!!!」


「ぶっ殺してやる!!!」


海上では柊とエンペラーザウルスによる交戦が行われていた。


「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね……」

「おまえなんて死んじまえぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


一方的な攻撃……

エンペラーザウルスには冷たくも熱いスターダンサーから繰り出される弾丸が何発も着弾してゆく。

だが決して悲鳴を上げるようなことはなく空を飛行している。

柊に近づいてこようとはせずにずっと弾丸を避けながら飛行を続ける。

まるで何かを待っているかのように……


「ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダ!!!!!!!!」

「ドーーーーーーーーンドーーーーーーーーーーーーーーーーン」

「ビューンンンンンンンンンンンンンンンンンンンン!!!」


機関砲、小型ミサイルをありったけエンペラーサウルス目がけて発射してゆく。

だがエンペラーサウルスは怯むことなくその場で柊からの攻撃をよけ続ける。

しかしこんな戦闘の終わりは意外にも速く終わりを迎えることとなった。

青海の死亡から5分後のことだった。


「!!?」

「弾切れ……」


青海の死のことばかりで頭がいっぱいだった柊は弾薬やミサイルの数が残り少なくなっていることに気がつかなかった。


「くそ!くそ!」

「ふざけやがって!」

「だがなプテラノドン!弾が切れてもまだこっちにだって攻撃手段は残されているんだよ!」

「あの子は優しい子だった……」

「自身のことよりも人の為に動くような子だった……」

「そんな子の命を奪ったおまえのことを私は絶対に許さない!」


柊は強力なレーザー砲をエンペラーサウルスに撃ち込む為に強く握る。

だが……


「消えた……」


弾切れに気を取られ一瞬だけ目を離した為にエンペラーサウルスを見失ってしまった。

そして次の瞬間だった!!!


「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」


エンペラーサウルスは柊の目の前に急に姿現す表したのだった。

そして……


「ドン!」


周囲に鈍い音が響き渡った……


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