第8話 明かされる正体と疑惑の再開
特殊大型輸送機「風鳶」内 応接室
「お前は誰だ?」
「ちょ、ちょっと柊中尉何言ってるんですか!?」
柊は上官である太田司令に対して反抗的な発言をした。
それに慌てたのか八重咲はハラハラした様子であった。
そんな八重咲には目にもくれず柊は更に太田指令に対して反抗的な態度で話してゆく。
「あんたは太田司令じゃない」
柊はもう一度そう言い放つと太田司令を睨み付けた。
八重咲と青海は「えっ!?」と驚いたようだったが、当の太田司令は落ち着いた様子で少し首を傾げる動作をすると……
「ふむ、これでも色々と君達に配慮していたつもりだったのだがな、『おもてなし』が足りなかったと言うことかな、もうこの変装も必要無いだろう」
そう言うと偽太田司令は両手を頭に当てて少しずらすと、黒いカツラが持ち上がりその下から紫色の髪が現れる。
続けて指を伸ばし口元の付け髭も取り素顔を晒すと制服の上着を脱ぎ、その下に着込んでいた肉襦袢も外した。
太田司令に扮していた時は身体を屈め
ていたのだろうか、完全に変装を解いた今は背丈も10cmほど高くなっている。
そして最後に左目の眼帯を外した。
すると左目からは深緑色の目が現れた。
「私は、バルベア国の諜報機関の一員でレノン・ゲーテルという」
「階級は一応准将でここの機長を任されている者だ」
本物の太田司令なら絶対やりそうにない、執事のように優雅にお辞儀をしながら
片手を振って胸の辺りで掲げる恭しい礼をして名乗り始めた。
「どうかね? この素顔の方が良い男じゃないかい?」
不敵な笑みを浮かべたレノン・ゲーテルの表情は、悪戯好きの少年がそのまま大人になったような小狡そうな印象だが、それを見た柊は、顔付きや背恰好が身近な誰かによく似ていることに気付いた。
「太田司令って宇宙人だったんですか!?」
八重咲は思わず言ってしまった。
「なえちゃんそういうことじゃなくってこの太田司令は偽物ってことだよ……」
すると青海が親切に八重咲に教えてあげた。
そんな二人の隣で柊はやはりと歯噛みしていた。
「見かけは似ていても普段の太田司令とは何か違うと思っていたら……」
「もっと早く機内に入る前に気づくべきだった」
「そこはこちらを褒めて欲しいものだがね、突貫工事にしては機体の外見は実物とほぼ変わらんだろう?」
「あんたもグラッシュと同じスピルウィアー人か?」
「何で私達をここに連れ出したんだ!?」
柊の問いにレノンは少し苦笑いしながら答える。
「グラッシュ?」
「ああ彼のことか!」
「確かに私と同じスピルウィアー星の者で所属する国も同じバルベアだが、彼は仲間と言うよりは競争相手と言うのが正しいだろう、同じレースに参加するね」
「興味だのレースだの、そんな好き勝手をされてたまるか!」
柊は脱出口を探そうと部屋を見渡すが、出入口は既に二人の警備兵で固められている。
仮にこの部屋を出られたとしても格納庫にある機体にたどり着くのは容易ではないだろう。
「まあ、立ち話もなんだから椅子に座ったらどうかね?」
「私は柊君、君を人質として扱う気は無いのだよ」
「何で君達を連れ出したのはそれから話そう」
そう言うとレノンは自らティーポットでコップにお茶を注ぎ始めた。
「そして君がここにいる限りは君の要望にも出来る限り誠意を尽くそう」
「だったら私達を早くここから出せ!」
「自分の為にではなく人の為にか……」
「よし!いいだろう!」
君の部下二人に関しては解放しよう」
「ヤケに素直だな?」
柊が怪しみながらレノンに言った。
「元々この二人をこちらに連れてくる予定ではなかったのだがやはり君だけ連れ出すのは怪しいと思ってな……」
「そこでこの二人も共に連れ出すことにしたのだよ」
「そんなことの為に連れ出したってのかよ……」
柊は元々柳川少将らにスピルウィアー星へと行くことを引き止められていたのに対して腹をたてていたと言うのにこの事実を聞き更に腹を立てた。
そんな柊を横目にレノンは手で出入口の警備兵に合図したすると一人が近づいてきた。
「彼女に部下二人の機体が置いてある格納庫まで案内させよう」
「おいお前もしこの子たちに何かあったら許さないからな!」
柊は警備兵の女性に対し噛み付いた態度を取る。
すると……
「ご安心ください……」
「彼女たちに関しては今迎えがこちらに向かっています」
「ですので問題はないかと……」
「迎え?なんのことだ?」
柊が警備兵に聞き返すと警備兵は軽く頷いた。
すると部屋の壁が突如モニターに変わった。
「フェニックス!、楊さんが助けに来てくれたんですよ!」
画面にはこちらに迫ってくる紅い機体が見える。
それは飛鈴が搭乗しているフェニックスであった。
それを見た八重咲は思わず声をあげる。
「君たちのところにはいいパイロットがいるものだ」
「後続も集まって来ているようだし君の部下も安心して帰れるだろう」
「でもなんで……」
「どうやら君以外にも誰か私の変装に気づいたものがいたようだね」
「私以外にも誰か?」
(柳川少将かそれかもしかして崎村少佐か?)
柊は様々な思案をしたが隣で不安そうに外の映像を見ていた八重咲と青海のことを見て今は二人をここから最優先に解放しないといけないという考えが浮かんだ。
そして柊は八重咲と青海の方を向くと諭す様に言った。
「早奈英と昴は先に「マリア」に戻ってて、私も必ず戻るから」
「え?、柊中尉を置いていけませんよ!」
「そうですよ、私達だけ逃げるわけにはいきません」
八重咲も青海も反対するが、
「良いから二人とも先に行って、こいつは私だけに用があるようだし」
二人ともまだ納得しない様子だったが、最後は警備兵に先導されて部屋から出て行った。
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レノンと二人になった柊はいよいよ本題に入っていくのであった。
「そろそろお前の目的を教えろ」
「何故私をここに連れてきたんだ?」
「私の目的ですか……あなたを連れ去ったのは私の独断ではないですよ」
「ある人物の命を受けての行動なのだよ」
「ある人物?ここに居るのか?」
「ならさっさと話を付けるから早く連れてこい」
「無茶を言わないでくれ、彼はとても忙しい身の上でね、とても連れてくるなんて無理だよ」
「なにしろ我が国の最重要人物であるからね」
「さ、最重要人物?」
「どういうことだ?」
「まあ私から話を聞くよりも実際に話をした方が早いだろう」
そう言うとレノンは車の鍵のような小型リモコンを手にして、画面を変えた。
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・追跡中の面々
追跡中のナディエージタのパイロットのなかで、風鳶に偽装したバルベアの輸送機に真っ先に追いついたのは、楊飛鈴が操縦するフェニックスだった。
異常事態を悟った柳川少将および、電話越しの太田司令からの指示により急遽マリアから飛び立ったのは他にはジョセフのブルーノート、崎村のレイゼン、翼雷懐の零-三七の計4機だ。
機体の性能と飛鈴の操縦テクニックにより僅かに早くフェニックスが敵機を発見していた。
『こちら第6部隊の楊飛鈴、柊中尉たちを拉致した風鳶を発見」
「至急応答願います』
『こちら崎村、現在貴機の500mほど後方にいるが、もう間もなく追いつく』
『『こちらも同じく、それまでマークを頼む(頼みます)』』
間もなく神奈川を通過し静岡上空に入ろうというところで、あとの3名も到着したがそれで直ぐに攻撃というわけにはいかない。
その気になればナディエージタ屈指のパイロットであり現時点で最高の戦闘機を与えられた彼らを以てすれば、機動力に大きく劣る巨大な的に過ぎない偽風鳶を撃墜するのは容易いことである。
しかし柊らがこの中に居る以上、絶対有り得ない選択肢だ。
この任務は戦う事ではなく、連れ去られた仲間を取り戻すことなのだ。
となればとれる手段は交渉しかない。
『そこの”風鳶”の責任者、こちらはナディエージタのパイロットだ応答を求む』
まともに通信できる確信はなかったが、まずはジョセフ中佐から呼び掛けてみた。
『こちらはバルベアの輸送艦”ウィンドファルコン”、まずは任務とはいえ勝手に”風鳶”を騙ったことをお詫びします』
『そしてナディエージタの皆様、お待ちしておりました』
『我々はあなた方と交戦する意志はありません』
『あなた方を丁重にお迎えするように、機長のレノン・ゲーテル准将より仰せつかっております』
意外にも応答は流暢な日本語によるものだった。
そして着艦を促すように、偽風鳶改めウィンドファルコンの格納庫に繋がる外壁の扉が開き始める。
『どうするんすか? 罠かもしれませんよ。僕らも一緒に連れ去られたりして……』
『そうかもしれんが、このまま追い続けるわけにもいかんだろ。いずれ燃料切れになってしまう』
『崎村少佐どうします? 一か八か入ってみますか』
『ああ……そうだな、柊たちの様子も気になるし……。ここは行ってみるしかないだろ』
ウィンドファルコンのオペレーターに着艦する旨を告げて、直ちにその準備に入っていた。
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ウィンドファルコン:応接室
レノンが画面を変えると柊は衝撃の光景を目にすることになる。
映像はどこかの官邸の様な豪華な作りの部屋が映っていた。
敷かれている絨毯はもとより、執務用のデスクや椅子に応接用のソファーや
テーブルなど室内の調度品はどれもが超高級品であることは、柊の素人目で見てもすぐに分かった。
そこで寛いでいる三人の男と一人の女は、調度品の重厚感に埋もれることのない存在感のある面々ばかりだ。
どこかの国の要人らしいことは、彼等の身なりや物腰から説明されるまでもなかった。
向かって右側に座るのは、30代半ば程の顔付きも体格も厳つい男で、紫色のアフロヘアというとてもインパクトのある髪型をしている。もしスーツが今着ているブラウンではなく派手な柄物だったりしたらマフィアのボスにしか見えなかっただろう。
一方の左側には紫アフロと同年代に見える、それなりに風格は感じられるが
目元は穏やかで育ちの良さそうな優男がいて、こちらは長身をライトグレーのスーツに包んだ金髪オールバック。
どちらもソファーに深めに腰を掛け、仲良さげに談笑している。
画面の正面横では、青いレディーススーツのいかにも有能な秘書と言う感じの金髪美人がデスクの脇に控えている。
ソファーの金髪優男と顔付きが似ているので、おそらくは兄妹なのだろうか。
なぜか柊は、この女性に先程から冷やかな目つきで見られているように感じられたが、初対面の異星人のキャリアウーマンに睨まれる覚えは全然ないので、これは気のせいだと思うことにする。
そして中央のデスクには、ネイビーのスリーピーススーツの50前後の男。
洒落たデザインのチタンフレームの眼鏡をかけ黒い長髪を後ろで束ねている。
そのまま日本に居ても違和感のない外見だ。
この人物はモニター越しに柊を見つめている。
それも何故か慈愛に満ちた表情をしながらだ。
「おい、、、こいつってまさか……」
「そうです……そのまさかですよ……」
「全地球の誰もが知るあの人物だよ!君にとっては特別な意味を持つ存在でもある」
これは悪い冗談だと柊は思った。
色んな意味で"全地球の誰もが知る人物”といえば思いつくのは一人しかいない。
柊も当然その人物のことをナディエージタニュースで頻繁に目にしているので
知っている。
いまだ世界中から糾弾の対象である2025年の動乱の張本人であり、その後一切行方が掴めなかったあの男がまさか地球ではなく遥か遠い宇宙の国で首脳をしているとは思いもよらなかった。
なぜそんな大物が一介のパイロットでしかない自分と会おうとするのか?
そして”特別な意味を持つ存在”とはどういうことなのか?
「さあでは、二人で感動の再会を楽しんでくれたまえよ」
「太宰弘様との再会をな!」
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・格納庫
そのころ八重咲と青海は、レノンの命令を受けた警備兵の案内で格納庫に移動していた。
前には戦闘用スーツの上に防弾チョッキとサンバイザーの付いたヘルメットという重武装をした案内役の兵士が、後ろには同じ出で立ちで大型の銃を持った二名の兵が控えている。
しばらく通路を歩いて扉の前まで到着すると、案内役の兵士は八重咲と青海に話しかける。
「お手数お掛けしました、こちらです」
その声は低めのハスキーなものだが、明らかに女性の声だった。
ヘルメットを外して見せた素顔は意外に柔和なもので、サンバイザーだけを持上げて同じように顔を見せる後ろの二名も女性兵士だった。
「レノン様のご配慮で、あなた方が極度に緊張しないように我々が任務を命じられました」
「失礼ながら、あなた方はまだ年端もいかぬ少女ゆえ、男性兵士に任せて怯えさせてもいけませんしね」
一見、気を使われているようで、実際は自分たちがまともに兵として見られていないことは八重咲と青海にはよく理解できた。
これが柊だったらこんな対応にはならないだろうと口惜しい気持ちに駆られた。
そんな二人の気持ちなど知る由もない女性兵士は、暗証番号を入力し扉を開けて彼女らを招き入れる。
そこにはもう数名の先客がいた。
「ちょうどお迎えが来たようですね」
既に格納庫に入室して、それぞれの機体から降りてくる味方のパイロットたちの姿が見えたことで八重咲と青海の緊張感はすっかり解きほぐれていた。
「「崎村少佐、ジョセフ中佐、楊中尉、それに翼雷くんも!?」」
「おう、嬢ちゃんたち元気そうで何よりだ!」
「八重咲に青海、無事だったか安心したゾ」
「早奈英に昴……良かった!!」
「…………(こんなとき何て言えばいいんだ?)」
空気の読めない一人を除いて、それぞれに再会を喜ぶ言葉をかけて二人を迎える。
八重咲と青海も礼を返し精一杯の笑顔を見せて応えた。
しかし間もなく女性兵士が割り込んでくる。
その声には有無を言わせぬ迫力があり、
八重咲と青海は今頃になって(この人は思っているより地位のある人なのかもしれない)と考えていた。
「二度手間となり申し訳ありませんが、ご帰還の前に皆様には当艦の応接室にお越し頂くことになります」
「お仲間の柊瑠湖さまが、そこでお待ちしております。そして………」
「ああっ!? そうっすよ、柊中尉ここに居ないじゃないですか。危うく忘れるところだった!」
「しっかりして翼雷、いちばん肝心なのはそこでしょ!?」
「じゃあ、そこの姉ちゃんたちに応接室まで案内してもらおうか」
「美女達のエスコート悪くないな!」
ナディエージタのパイロットたちは皆乗り気だが、崎村だけはこの先のことを考えると気が重くなっていた。
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・再び応接室
『そこから先は私が話そう。レノン君、ご苦労だった』
「ははっ、恐れ入ります閣下……」
レノンが一歩後ろに下がると太宰は柊に向かって話し出した。
『本当に久しぶりだなもう十数年ぶりになるか」
「君をここに呼んだのはこの私なんだ」
「言うまでもないかもしれないが、私は現在バルベア国の大統領を務めている太宰弘だ」
「私がそちらの人々にどう思われているかよく知っているが、これでも元地球人であり日本人だった。そして……』
太宰弘は一瞬涙ぐんだが、ハンカチを取り出して目を拭いさらに言葉を続ける。
『そして……生き別れた君の父でもある」「大きくなったなあ瑠湖……こうして再び会えて嬉しいよ』
それは柊にとって爆弾を落とされたような、思いもよらないあまりにも衝撃的な告白だった。
彼の言葉を受け止めきれなかった柊は、糸が切れた人形のようにその場に倒れこみ気絶してしまう。
そこに女性兵士の案内で、救出に来たナディエージタのパイロットたちが入室してきたのはほぼ同時のタイミングだった。
「「わわわっ柊中尉!? どうしたんですっ、大丈夫ですか!?」」
「瑠湖っ、何があったの? 怪我はない!?」
「そこの紫頭、てめえの仕業かよっ! 覚悟しやがれ!?」
「おいおい、気持ちは分かるが落ち着けよ!」
八重咲と青海と飛鈴があわてて柊に駆け寄り、翼雷に至ってはレノン・ゲーテルに殴りかかろうとしてジョセフに止められる。
むろん倒れた柊のことは心配だが、それは介抱中の三人娘に任せてこの気になる事だらけの状況を把握しようと、翼雷の襟首を掴んだままレノンとモニターの面々に問いかけた。
「それで、あんた等がこの機の責任者で、こんな真似をした張本人なのかい? 」
「どういうことか説明してもらおうか……」
いつものように飄々とした口調だが、その目は相手を射抜くように鋭く変貌していた。
歴戦の猛者でなければ出せない威圧感を剥き出しにしている。
「おおっ怖い……地球人ってこんな人ばかりなのか?」
「なあレゾン?」
ジョセフに睨まれても動じなかったレノンは、応接室の入り口に立ち尽くしたままの崎村に語り掛けた。
「え?」
「君がここに来ることをずっと楽しみに待っていたよ」
「お帰り我が弟よ!」
その言葉は、ちょうど意識を取り戻した柊を含めたパイロット全員の耳に入り、その視線が崎村に集中する。
なお想定外の事態が続出して慌てふためく、モニターの向かい側の要人たちはしばらくの間、蚊帳の外に置かれていた。
「おかえり兄弟?」
「何言ってんだおめえ?」
ジョセフが少し切れ気味にレノンに言った。
するとレノンはにやりと笑いその後少しの沈黙のあとにまたニヤリと笑いながら話し出した。
「何言ってんだと言われましてもねえ……」
「久々に再開した実の弟に対して挨拶することのどこにそんな疑問に思う点があるのやら……」
レノンは終始ニヤニヤとした不気味笑みを浮かべていた。
その時だった!
「ドーン!」
「そういうことを聞いてんじゃねーんだよ!」
ジョセフは腹を立て壁が吹き飛ぶのではないかと思うくらいの勢いで殴った。
そして殴ったあとは熱が冷めたのか声のトーンを落としゆっくり話した。
「崎村がお前の弟ってどういうことかと聞いてんだ……」
「どういうことかと聞かれましても……」
レノンは半笑いで答える。
「崎村!お前もなんか言ったらどうだ?」
「……」
「崎村……お前は今までスパイをする為に俺たちと一緒に戦って来たって言うのかよ……」
「いや……俺はスパイでは……」
「彼はスパイではない」
崎村の言葉を遮るように少し大きな声でレノンは言った。
「彼はとうの昔に私たちの元からは離れている」
「だから彼はスパイではない」
「スパイじゃなかったってのか……」
「ならなんで俺たちに話してくれなかったんだ?」
「上官たちにならまだわかるがせめて同じチームの俺くらいには話してくれてもよかったんじゃねーのかよ!」
「……」
この時のジョセフには先ほどまで出ていた威圧感を感じることはなかった。
そして崎村が口を開くこともなかった。
そんな最悪の雰囲気の中更に追い打ちをかけるようにレノンが話し出した。
「信頼できる仲間にさえも自分の身分を隠していたというのか……」
「つまり本当は彼らのことを信頼してなかったというわけだね……」
「「「「「!!?」」」」」
辺りにいたメンバー全員の顔色が一気に変わって行った。
スクランブル交差点で信号機が一気に青に変わっていく光景のように思えるがその場の空気はスクランブル交差点のように活気溢れている様子ではなかった。
まるで誰かの葬式をしているかのように皆の顔は青ざめていた。
ただ二人を除いてはだったが……
崎村は顔を下に向けた状態で表情がわからなかった。
また翼雷は状況がよく飲み込めていない様子で他のメンバーとは違い平然とした表情で黙ったまま壁にもたれかけていた。
そんなメンバーに対して面白おかしく様子を見ていたレノンは更に追い打ちをかけていく。
「パイロットはお互いの信頼がすべてだと言うのに……」
「黙れ!」
「もういい……」
「もうこれ以上話すな!」
「これ以上何かしゃべればお前の身の安全は保障出来ないぞ!」
「おぉ怖い怖い……」
「私も今回は出来るだけ平和に事を終えたいと思っていますしこれ以上この話題を掘り下げることはやめて起きましょうか……」
「では話を戻すとしましょう……」
そう言うとレノンはモニターの方を向き軽くお辞儀をした。
「お待たせしました太宰様……」
「太宰?」
崎村の話からずっと黙っていた翼雷が初めて口を開いた。
「太宰ってあの太宰だよな?」
翼雷が過激に反応を見せると周囲の目線も次第に床からモニターの方へと向いていく。
だがジョセフだけは下を向いたままでモニターに見向きもしなかった。
「そうですともあなた方の知るゲートを開きUMAをこちらの世界へと解き放った英雄……太宰弘だ!」
「「「「「!!!!?」」」」」
またしてもメンバー全員に戦慄が走った。
何故人類の宿敵太宰がいるのかその場にいるメンバーには何もわからなかった。
そしてその中でも最も一番頭を抱えていたのが柊であった。
(さっきこいつは自分が私の父親だと言っていたがどういうことなんだ……)
(崎村少佐に関してもだけど本当に訳がわからないことが多すぎる……)
「さあ柊君我々はもう邪魔しないから親子水入らずで楽しく会話を楽しんでくれたまえ……」
「親子水入らず?」
「どういうことだ?」
翼雷はレノンの言葉に反応し柊の方に視線を向けた。
それに続いて皆の目線が順々に柊へと向いていく。
「え?嘘そんな……」
「ああ……皆さんに紹介し忘れてましたね」
「柊瑠瑚と太宰弘閣下は正真正銘の血の繋がった親子なんですよ……」
「「「「「「!!!!!」」」」」」
皆の頭の中はパニックになっていた。
あまりにも衝撃的な事実が判明していき疲れた様子を見せていた。
脳みそをそのまま爆撃されたといったところだった。
だがそんな時であった!
「ドカーン!!!」
もの凄い爆発音と共に機内が激しく揺れる。
「なんだ!?」
レノンが少し慌てた様子で右にいた女性に聞くとすぐに艦内放送が流れた。
『ご報告いたします』
『現在宇宙海賊からの攻撃を受けています』
『繰り返しご報告いたします』
『現在宇宙海賊からの攻撃を受けています!』
『これ以上攻撃を受けると機体が墜落いたします!』




