22記
「と、言うわけでヴァンパイア語の読み書きができる信頼に足る人物を探しています。」
リルアにも口外不要で本題の事情を打ち明けて王宮の地下で見つけたノートについて解読がしたいのだと伝えているところだ。
リルアとモランが学園で知り合ったのはもう既にリード家の第二子として貴族たちの間にカイアが認知されたあとだった。
同い年に弟妹が居ることも当時の話題の1つだったと思い返す。
「どうりでカイア様との接し方を悩んでいらしたわけね。」
兄様が自分のことで悩んでいてくれたことは家族として受け入れられていると安心する反面でこの人を悲しませたのだな、と心苦しい。
元気をなくした兄弟を見て微笑ましいし、どこが血の繋がりのない兄弟なんです?と思うけど。
「私たちの代では学園のカリキュラムに入っていなかったけれど。
あなたのそばにいるリリーであれば、初等部の頃からその授業に出ていたのではなくて?」
確か、ノーザンバード辺境伯領で残されている歴代当主の政務記録や税務署類を読めるようになりたいって理由だったかしら?
どこまでも真面目な性格の妹は、母から領地のこと、先祖のことを知らされる機会を失ったからと。
名実ともに領主として領地に立った時に領民に落胆をさせないように。
「リリー、領地に帰っていたんだ。リルア様から預かってきたものがある。」
ついでに、内密での依頼というのでまだ生徒もあまり戻っていないことだし、といつもの図書室に向かう。
まさか、彼の人生に巻き込まれた初日が今日だと思わずに。
「そう。当代のリード公爵様は慈悲深い方であるから…。」
であれば、これまでのカイアのある程度の行動や態度に理由がつけられる。
リード公爵様には理想的と言えるほど息子として接しているのに、どこか空虚で。
まるで貴族としてのあり方を半信半疑で生きてるみたいな。
自分自身がわかってない空っぽな状態のような。
「このことは他言無用にしてほしい。
父上が貴族として国に虚偽をしたことになるから。」
一つ頷いて、カイアを見つめる。
彼と私はまるで正反対の生き方なんだと思う。
長い間、リード公爵様の実子として育ってきたカイアとアイリス公爵の実子として育てられなかった私。
「わかった。このノートの複製はきちんとヴァンプ語に翻訳する。」
原本は兄様でも読めなかった。
何かしらの魔術だったり、呪術がかけられているのであろう。
仕方がないので俺の手で1文ずつ書き写した複製。
全くの他の言語が作られたわけではなく、ヴァンパイア語を雛形にしてヴァンプ語が作られたと習ったことがあるけど。
所々の単語は読み取れるものの、意味をなす文章にならなかった。
そういう訳でそうそうお手上げである___。




