21記
「それで、ここまででわからないことは?」
昼間の柔らかな日差しが差し込む図書室。
ここ最近、空きコマの時間はこの幼なじみの男との補修に時間を割いている。
今まで勉強に興味がなかったこの男が雨後の筍のように、あるいはスポンジのような圧倒的な速さで情報を吸い込んでくれることに教えることへの楽しみを見いだしているためかもしれない。
「…うーん、そうだな。」
悩み抜いた末、今はないとの答えを返す。
本当は、悩んではいる。
彼女をこれ以上巻き込んでいいのか?
ヘタをしたら、いいや、確実にこれは国の歴史の根幹に関わる事態になる悩みだから…。
「兄上、義姉上、ご無沙汰しております。
さて、今年の夏の休みに久々にお顔を見たいので領地の館に帰ろうかと考えております。」
リードの家族の中で一番長く接している兄上。
今の悩みを打ち明けるには適当ではないだろうか。
そう考えを巡らせ夏季の休みの予定を決める。
「兄上、義姉上もお元気そうで…。」
一年と少しぶりに領地の領主館に帰ってきた。
兄上はお変わりは無さそうだけど、義姉上は…。
うん。まぁ、学園に戻ったらリリーに聞いておこう。
近況を聞きたそうな義姉上は少し外してもらって。
「義兄上、義姉上には俺がカイア=リードではないとお話しいただけているのだろうか?」
この世にカイア=リードが真実存在しないと一番によく知るのが義理の兄であり、このリードの跡継ぎたる兄上である。
リルアにはまだ話していないことをカイアは読んだのではないだろうか?
彼の目には僕の目は揺らいだように写っただろうから。
昔から、カイアにだけは嘘をつけないんだ。
「その反応は、話しては居なさそうですね。」
どう伝えたらいいだろうか?
伝え方によっては公爵家から離れようともしていると聞こえてしまうだろう。
そんなつもりはないし、悲しませたいわけでもなくて真実を知りたいだけ。ただ、それだけなんだ。
「これから話すことを聞いても悲しまないでくださいね。兄様。」
モランの結婚が決まってから、ずっとここに居て良いのか疑問に思っていた。
王宮火災の夜に王宮と通じる緊急時の抜け道となっているリード公爵家のタウンハウスの森へ置き去りにされていた赤ん坊。
どう見積もっても上位貴族の子供。王家と関係があるのではないかと推測するに都合が良すぎるぐらいの推測の材料が揃っていた。
「推測を確かめるために…王宮に忍び込みました…。」
絶句した…。今まで優等生で何でも卒なくこなしている印象だった弟がこんなことをしているなどと。
確かに、ドネイラ草の毒に充てられてタウンハウスに帰っていたことも聞いては居たけど、どういうことか理解が追いついてなかったけど。
これまでの弟の行動に理由がついた気がした___。




