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悪役令嬢様は婚約者のダメ王子を捨てられない!!  作者: 加藤チョコミント
Episode2  暗雲
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12/27

揉め事③




「ヴェロニカ、どうかしたの?」



その場に立ち尽くす私にベネディクトが声を掛けてきた。




「あ…いえ…別に。」




「僕、あんなに誰かに強く言ったのは初めてかもしれないよ!

なんだか緊張しちゃった。」




そう無邪気に笑うベネディクトに対して、ハハ…と引きつった笑顔を向けるほかなかった。





―――――――ハンナと二人だけでずっと一緒にいて、

       ハンナのためにはじめて強く怒って、

          ハンナと結婚したいとまで思ってるんだ…。




軽いパニックでなにも考えられなくなってきていた。

今すぐこの場を去りたい、ココにいたくない。


「と、とりあえずこの場が一旦収まってよかったです。

私はもういなくても大丈夫ですね!では私も用がありますので失礼いたします!」



ハンナとベネディクトの返事を聞くこともなく、足早にその場を後にした。




二人からなるべく離れようと小走りで学園内を駆け抜けて、息切れしてきたときにちょうど足を止めたのがガーデンだった。



そこにあったベンチによろよろと倒れ込むと、自然と涙が出てきた。



私…ベネディクトにあんなに

なんとかする!とか

私が変える!

なんて啖呵切っておいて、まだなにもしてない。


まだなにもできていないのに…。

ハンナとあんなに仲良くなっているなんて…。


あんなに強く感情を出したり、

あんなにハッキリと意見をいったり、

なにか会った時に守れるように計画を立てたり。


そんなベネディクトは知らない。

全部私が見つけてあげたかった。

そんな秘められた部分を引き出してあげたかった。


そうするつもりだったのに…!!


そうだよね、彼女は主人公、私は悪役令嬢だもの。

逆立ちしたって敵わない。


やっぱりハンナは主人公だから、好きになっちゃうのかな…。

ハンナにだからこそ、心を開いたのかな。




グスグスと鼻をすすっていると、隣に誰かが座ってきて、ハンカチを差しだしてきた。

パッとみると、それはマティアスだった。




「ヴェロニカ様、大丈夫ですか?」




「マティアス様!こんな…お恥ずかしい…。

私、ちょっとお腹が痛くてですね!それであの…特になにかがあったとかではなくて…!」




慌てて取り繕ったが、どう考えても不自然な言い訳だ。




「兄と、ハンナ様のことではないんですか?」




「えっ…。」




「あの二人、最近すごく親密なんです。ハンナ様はよくうちにも来ていて、兄はよくつきっきりでなにかしらを教えています。


それが勉強だと言えばそうなのかもしれないのですが、なんだかそれだけの関係にも見えなくて。

ハンナ様も、ものすごく親しげにしているし…。


それに、俺と二人の時にはよくハンナ様の話しをしてくるんです。

どれほど優秀か、どれほど素晴らしい女性か、そんなことばかり。」



あぁ…やっぱり…。ベネディクトはハンナに完全に惚れてしまっている。



「兄は元々その…ヴェロニカ様の前で言うのもあれなんですが、女性の友人が多い方で。」



ものすっごいオブラートに包んでるなぁー。



「最近はそれも大分落ち着きを見せてきたといいますか。

でもそれはハンナ様といる時間が増えたからなのかもしれません。」




「マティアス様、もういいです、わかってます。

ベネディクト様は、ハンナのことが好きなのですよね。」




「っ…。」



マティアスは苦しそうな顔をしていた。



「私、ベネディクトにはしっかりしてほしいと思っていたんです。

きちんと王位を継ぐ自覚をもって、もっと慎重に行動してほしい。

ダメ王子だなんて周りから呼ばせないくらいになってほしいって。


でも、今日の様子を見てたら安心しちゃいました!

あんなにハッキリ自分の意見を言って、あんなにハッキリ計画的に行動して。そして、好きな人をちゃんと守っていました。


もう、私はお役御免ですわね。」





「ヴェロニカ様。俺の前で、そんな無理に強がらなくていいんですよ。」


マティアスが心配そうに覗き込んできた。




「強がらせてください!

一応、王子の婚約者なんですから。今は…もう違うかもしれませんが。」




自分で言ってまた涙が溢れ出しそうになり、クルッと後ろを向くと、手首を掴まれてマティアスの方に向き直された。




「俺では、だめですか。」




「えっ…?」




「俺は、王位継承権は2番目ですが…兄に負けないようがんばります。あなたが王妃になってくれると言うなら、頑張ります。

あなたのそんな辛そうな顔は見ていたくないんです。」




えっ?えっ?今私、告白されてる?


「あ、あの、マティアス様?どういう…?」




「俺はずっとあなたに憧れていました。兄の…婚約者だと思って、今までずっと我慢してきました。

兄がどんな行動を取ろうとも決して見捨てず、逃げないあなたを見ていて、兄が羨ましかった。

それと同時に、本当はずっと怒っていたんです。」




「兄はダメなところも多いかもしれませんが、本当は優しくて、親切で、誇れる人です。

あなたもきっとそれがわかっているから、見捨てないんですよね?


でもあなたのことに関して、俺は兄を許せない。

だっていつもあなたを傷つけるから。」



マティアス、そんなふうに想ってくれていたんだ…。




「だから、俺にしませんか?」




マティアスの真剣な瞳に、思わずドキドキしてしまう。

どうしよう…私は……。



マティアスの瞳に吸い込まれそうになる。




―――――――――その時、ベネディクトの顔が頭に浮かんだ。




思わずバッと手を振りほどいた。




「ご、ごめんなさい……!!!

私…どうしても……!!」



「ヴェロニカ様…!」




「私、ベネディクト様から婚約破棄だと言われるまでは、やっぱりベネディクト様の婚約者です!!

私がそうしていたんです!!!だから、ごめんなさい!!!!」



そう言って、その場からすぐに離れた。

呆然と佇むマティアスを残して。

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