【第九章】私とお猫様と例のアレ【八十二話】
「おっ、猫じゃないか、野良猫か?」
人間の雌の声に驚いて振り返ると、そこには人間の雌がいたニャ。
驚かせるんじゃないニャ。
「かわいいですね」
と、もう一人の人間…… じゃないニャ。
人間の服を着ているが、コイツは妖怪ニャ。
妖怪連合で見たことがある…… と思うニャ。
何て名前だったか忘れたニャ……
とりあえず今は逃げるニャ!
「あっ、待て! 一回くらい撫でさせてからいけよ!」
後ろからそんな声が聞こえて来るけど無視ニャ!
咄嗟にうちは目の前にあった階段を駆けのぼったニャ。
そこにはドアが四つほど並んでいたニャ。
二番目と三番目のドアから妖怪の気配がプンプンするニャ……
なんなんだニャ、このアパートは。
でも、さっきの奴は妖怪連合の妖怪ニャ? なんで人間の服なんか着て人間と一緒にいるんだニャ?
とりあえず情報収集しないことには何もわからないニャ。
けど、なんなんだニャ、このアパートは? 複数の妖怪の気配が渦巻いているニャ……
危険地帯というのも納得だニャ。
すごい妖怪の気配がするニャ! それも一人や二人ではない複数の妖怪だニャ。
かなり大物の妖怪がいるはずだニャ!
それが妖怪連合の敵ニャ!
じゃあ、さっきの奴はスパイかニャ? 妖怪連合を裏切って妖怪連合の情報を敵に売っていたのかニャ?
その金で人間の服を買ったに違いニャイな。
奴のことはさておき、他にどんな奴がいるのか見極めて報告だニャ。
けど、うちはネコマタになったとはいえ、猫は猫ニャ。
アパートのドアを開けられはしないニャ。
「おっ、さっきの野良猫じゃん! うちよってくか?」
そう言ってさっきの人間の雌が二番目のドアを開けて、うちを誘ってくるニャ。
中に入るチャンスだけど、危険すぎるかニャ?
「カズミさん、うちにはすでにペットがいるじゃないですか!」
それをスパイの奴が止めたニャ?
うちが妖怪だと見抜かれているかニャ?
ま、まずいニャ、ピンチかもしれないニャ……
「あ、あー、スネカジリがいるもんな。なら、アライの部屋に連れてって猫カフェにするか?」
人間の雌はそう言ってドアを閉じてしまったニャ。
チャンスは失われたけど、閉じ込められる危険はなくなったニャ。
自由であれば、うちは逃げる自信があるニャ!
猫は何者よりも素早いんだニャ!
「猫カフェって何ですか?」
「猫がいる…… カフェみたいなふれあい広場だよ」
スパイが聞いて、人間の雌が答えているニャ。
それに、スパイにしては緊張感がないニャ。
どこか腑抜けている感じがするニャ?
「よくわからないんですけど?」
うちにも猫カフェというものはよくわからないニャ。
「まあ、そのうち機会があれば連れてってやるよ、トウフ。で、野良猫はここの部屋に入るか?」
人間の雌が三番目のドアを開いたニャ……
また潜入するチャンスだニャ。コイツ、うちを誘っているのかニャ?
人間の癖に妖怪と一緒にいるような奴だニャ。
危険かもしれないニャ。
でも、危険を冒さなければ情報は得られないニャ!
虎穴に入らずんば虎子を得ずニャ。
猫のうちがいうことじゃないかもしれないけどニャ。
「素直に入っていきましたね」
な、なんなんだニャ……
妖怪が四人も?
というか、ぬらりひょんがいるニャ?
なんで、行方不明になった総大将がこんなところにいるんだニャ?
監禁されて…… はないニャ。なんか、くつろいでるニャ。
暖かい飲み物と甘そうなパンを食べてくつろいでるニャ!?
このアパートで本当に何が起きているんだニャ?
「なんじゃ? また妖怪を拾ってきたのか? どういう運を持った人間なんじゃ」
ぬらりひょんが人間の雌に話しかけるニャ。
「ようこそ」
大きな顔の石のような妖怪がうちに挨拶をしてくるニャ。
コイツも知っているニャ。
妖怪連合の油すましとかいう妖怪ニャ!
コイツもスパイだったのかニャ?
「あら、ネコマタじゃありんせんか」
と、な、なんだニャ?
ピンク色でヒラヒラの服を着た傘がうちに話しかけて来たニャ?
こんな奴はうち、知らないニャ?
なんなんだニャ!?
でも唐傘お化けに少しだけ似ているニャ。アイツはこんなにケバくなかったけどニャ。
「なんだ?」
と更に人間の格好をした妖怪がうちを見てくるニャ。
コイツも知っているニャ!
妖怪連合の妖怪で、小豆の妖怪のはずニャ!?
というか、行方不明になったはずの妖怪がほとんどいるニャ?
「ネコマタ? この野良猫、妖怪なのか?」
人間の雌にそう言われて、うちも正気に戻ったニャ。
とりあえず戻って妖怪連合に報告だニャ!
「あっ、逃げていきましたよ!」
猫であるうちを捕まえられる奴なんていないんだニャ!!




