【第八章】私と何も知らない総大将【七十二話】
さてさて、まさかあのアパートが妖怪達が姿を消したという現場だったとはな。
報告は受けているが、現場にたどり着けないとな?
報告を見るにヌリカベの仕業だろう? これは。
だが、そうであるならば、妖怪達が帰ってこないのはおかしいか?
ヌリカベの対処法くらい、皆も知っているはずじゃしな。
ふむ、このあたりか?
と、前に進めない、これはやはりヌリカベじゃな。
「おい、ヌリカベ。ワシじゃ、ぬらりひょんじゃ。妖怪連合の総大将だ。道を開けよ」
周りに誰もいないのを確かめてから、そう声を放つ。
いや、まあ、ワシが独り言を言ったところを目撃されたところで、ボケ老人くらいにしか思われないだろうがな。
これでヌリカベも道を開けるかと思いきや、通れないままだ。
ヌリカベではないのか?
いや、こんなことはヌリカベの奴くらいのもんじゃろう?
「おい、ヌリカベなのだろう? ワシのことが、このぬらりひょんのことが分からぬのか?」
そう声を荒げ脅してみるが、通れる様子はない。
ワシを、総大将のワシを通さない気か?
この先のアパートで何が起きているというのだ?
それにヌリカベがワシを通さないということは、ヌリカベの奴がワシらを、妖怪連合を裏切ったということか?
まあ、実体のしれない集まりだしな。忠誠心もなかろうて。
「通さぬ気なのだな? ならば実力行使あるのみよ」
所詮はヌリカベよ。
対処法など既に知っている。
この手に持つ杖で、奴の足元を払ってやれば、途端に奴は消え失せ……
ん?
払った杖に硬い手ごたえが?
それにヌリカベが消えないではないか。
なんじゃこれは? 本当にヌリカベではないとでもいうのか?
「ヌリカベではないのか? しかし、この様なこと妖怪、ヌリカベ以外に……」
何度か杖で何もないのに何かがある場所を払う。まるで石でも打っている感触はあるが、それ以外の反応がない。
なんじゃこれは?
ワシの知らぬ妖怪か?
妖怪連合、総大将のこのワシが?
そういえば、本部にいた妖怪も知らんかったな。アヤツは結局誰じゃったんだ?
なんか赤い服着て、デスデス言ってたが。
いや、そもそもワシも名ばかりの総大将ではあるのだが、ふむ。
いやいや、これはどう見てもヌリカベの仕業よ。
となると、奴が弱点を克服したというわけか。
しかし、ヌリカベがこうしてワシを通さないとなると、この先にはワシ、いや、妖怪連合に知られてはまずい何かが、いうなれば反妖怪連合があるというわけか?
その可能性は非常に高い。
そうではないのか?
うむ。帰るか。
そして、妖怪連合からも、反妖怪連合とも関わり合いにならずに、ひっそりと暮らし、時が過ぎるのを待とうではないか。
ワシはそういう妖怪じゃからな、本来は。
しかし、そうなるとアヤツのことはどうするか。
妖怪としてのワシの顔も、そして、裏の顔もアヤツは知っておるしな……
まあ、それは後々考えればよい。
今は帰って、夜逃げする準備を本格的にしなければな!!




