【第八章】私と何も知らない総大将【七十一話】
「で、誰が戻って来ないと?」
そういえば、最近、この妖怪連合、その総会の顔ぶれも随分と減ったな。
それでか……
しかし、そうか。
それはそれで、いいのかもしれんな。
いや、そちらのほうがワシにとっては好都合ではないか?
「ですから、豆腐小僧、唐傘お化け、スネコスリ、西瓜侍、小豆洗い、油すまし、ヌリカベとなりますデス! 戻って来ないのは」
そんなにも多くの妖怪達が戻ってこんのかい。
何か凄腕の妖怪ハンターでもいるんじゃないのか?
いやいや、そんなものは存在しない。
そもそも、妖怪など昨今は見向きもされないのが実情よ。
「そうそうたる顔ぶれではないか。そのいずれもが戻って来ないとな?」
だが、そんなにも戻って来ないとなると……
少々危険か? 危険なのか?
うーむ。
「はい」
「ふむ、ではワシが直々に様子を見に行こうではないか」
ついそう言ってしまったが、大丈夫か? ワシで?
ワシ、あまり戦うのとか得意じゃないぞ。
ワシにできることと言えば、素知らぬ顔して家に忍び込んでくつろぐくらいじゃからな。
「妖怪連合総大将自らデスか?」
うーむ、それ、やめてくれんかのぉ。
ワシ、好きで総大将をやっているわけではないんだぞ?
なんか知らんが妖怪の集まりがあるからと顔を出してみれば、いつの間にか総大将に担ぎ上げられて溜まったもんじゃないわい。
なら、妖怪連合などさっさと解散してしまったほうが、ワシにとっては都合がよい。
それに、そこが本当に危ないというのであれば、そのまましばらく人間達からも妖怪達からも身を隠してしまえばいい。
うむ、そうしよう。すべてを投げ捨ててとんずらしようではないか。
これ以上よくわからない妖怪連合とかいう組織の総大将をやらされていても困るだけよ。
そもそも、ワシは総大将っていう器じゃないんじゃ。
「幸い、ワシはそういうことに長けた能力を持っているのでな」
まあな。
勝手に家に上がり込んでくつろぐのがワシじゃ。
そういう意味では偵察や情報収集が合っていると思うんじゃがな。
なんでワシが総大将なんだ?
「そ、それは…… 確かに…… そうデスが? 総大将まで帰って来なかったら、それこそ妖怪連合は終わりデスよ?」
「そうか? そんなこともないだろう」
終われ終われ、そんなどうしようもない組織は。
だって、ワシ、総大将として何もしてないぞ?
総大将に担ぎ上げられはしたが、何一つ仕事はしてないし、それらしい発言もしていない。
ワシ、ぬらりひょんぞ?
ワシが仕事をするわけなかろう?
「いいえ、妖怪連合をまとめられるのはぬらりひょん様しかいないんデスよ!」
なぜそうなっているんじゃ?
そもそも、おまえ誰よ? おまえみたいな妖怪はワシ知らないぞ?
最近生まれた妖怪なのか? そうなのか?
そもそも、なんで室内でマスクしているんじゃ?
あれか? 妖怪の間でも風邪かなにかが流行っているのか?
ハサミとか持って何なんじゃ?
この危なそうな妖怪は。
「ふむ…… まあ、見ておれ。ワシの能力を見せてやる」
とくとワシの逃げ足を見るがよい。
このままとんずらじゃ。
これで総大将ともお別れだ。
担ぎ上げられるのはいいが、ワシではその重圧に耐えきれん。
「は、はい! 総大将のお力! とくと見させていただきますデス!!」
勝手に見てくれ。
そして後は頼んだぞ、名も知らぬ妖怪の女よ。
ワシはすべてをうやむやにして逃げるからな。
「うむ……」
さあ、まずは荷物をまとめるところからじゃな。
だが、一応その妖怪達が姿を消したという場所を調べるだけ調べておくか? 知らぬ場所でもないのよのぉ。
他の妖怪達に怪しまれんようにな。




