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頂点少女は全てを守る  作者: 奈坂秋吾
Episode:2 初めてのマルチクエスト
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2-5

 こいつも食料になるかも、とりあえず街に持って帰るか。そう思い超巨大ラヴァ・ボアを【風魔の傀儡糸LvⅢ】で鋼鉄の大樹から引っ張り出して地上へと下りる。するとボアの置き所がないほどに人が集まっており、大歓声を上げた。

 そんなに肉が嬉しいのかと思ったら、


「うおおおおっ! 成長したな、ミコナァ!」

「お前、周りに迷惑かけずにやれんだな! 感心したぞ!」

「まあ、崩れた【土霊】魔法で砂まみれだが……いつもと比べたらマシってもんだな!」

「ようやく【聖天使】の子である自覚がでてきたようだな! パーティ組んだおかげかぁ? 今後もぜひ俺たちに気を配って戦ってくれ! そして大いに街へと貢献しろよ!」


 冒険者たちは私を囲んで口々に言い、戦闘に参加していたらしいソウガおじさんが私の頭をぐしゃぐしゃと撫でてきた。


「ぬぁ!? ちょ、髪、やめ……肉! 肉の処理お願いします! 私、分からないんで!」


 超巨大ラヴァ・ボアを餌に集団から抜け出すと、ちょうどそこにルカとライア、リリンとその分身たちの姿があった。


「やあやあ、お疲れ様ですミコナさん!」

「すごいです、ミコナ先輩! あんなおっきな魔物をこんなに簡単に倒しちゃうなんて!」

「ただ者じゃないとは思ってたけど、まさかここまでとは驚きよ。規格外ね、あんた」

「ええっと……褒めてくれるのは嬉しいですが、倒せたのはみんなの協力があってこそです。ありがとうございました。それで、ボア・ジュニアはどうなりました? というか、はぐれてたのによく合流できましたね」


 私が訊ねると、「ああ、それはね、あたしと分身たちが思念で会話できるからよ。だからあんたの状況は断片的だけど把握してたわけ」とリリンがしたり顔を向けてきた。


「あんたが危ない状況に陥ってすぐにあたしはルカとライアを探すことに専念してたのよ。ボア・ジュニアはまだ残ってるけど、あんたのおかげでこれ以上数が増えないことも分かってたことだし、こっちの方がヤバいと思って駆けつけたってわけ」

「結果助かりましたけど……思念で会話してたのなら、私が逃げるように指示したことも分かってたんでしょう? なんで来ちゃったんですか」

「なんでって、そりゃ当たり前ってもんじゃない?」

「そうですよ、ミコナ先輩。ライアたちは仲間で友だちでしょう?」

「危ないのはミコナさんだって同じだったはずです。なのにワタシたちだけ逃げだすなんてありえないですよ」

「ありえないって……下手したら命を落としてたかもしれないのに?」


 その問いに三人は、「関係ない」とばかりに頷いてみせる。

 命よりも優先するのが、仲間……友だち……。その関係に、それだけの価値があるということなのだろうか? 相手がママなら私も命を捨てられるが、それと同等ということ? 

 そんな強い感情をどうして私に抱いているというのだろうか。ママが私にそうしてくれたように、私はみんなの命を救ったわけではないのだけど……不思議で仕方がない。


「ミコナちゃん、ねえミコナちゃん……!」


 不意に袖を引かれて視線を下ろすと、リリン(泣)の不安げな表情があった。


「ね、ね、早くアレ取りに行かないと誰かに見つけられちゃうよ」

「ん? アレって――はうあッ!? そうだ、みなさんついて来てください! とんでもないお宝が見つかったんですよ!」


 私は返事を待たず、風の翼を作って一気に古代遺跡へと飛んで行く。丘は超巨大ラヴァ・ボアが飛び出したことで吹き飛んでおり、隠されていた遺跡は丸出しになっていた。

 機械はめちゃくちゃに破壊されて『えーあい』も消滅してしまったらしく、何の忠告も聞こえて来ない。私は逸る心を抑えて辺りを見回し、ギフトカードのセットが破壊されずに転がっているのを見つけた。

 安心した私は脱力し、我慢できずにビニールを破ってしまう。早く一枚五十万円の美しきカードを拝みたくて、箱を開き中の一枚を取り出した。


「にゃは! ニャハ! ごじゅう万! ごっじゅう万! ……あれ?」


 今まで手に入れてきたギフトカードとは違い、金で縁取りされ、横長のガラスや金属板が埋め込まれている特別製だった。しかし裏を確認してみても、『アナザーアース』にチャージするためのバーコードがどこにも描かれていない。


「ミコナ、聞いたわよ! ものすごい高額のカードを見つけたんですって!?」

「あ、今ミコナ先輩が手に持ってるのがそうですか? ライアにも見せてくださいよ!」

「どれどれ……ん? あぁ、それ上位階級カードですね」


 追いついた三人は興奮気味に覗き込んでくるのだが、ルカだけはすぐにトーンを落とした。


「何ですか? 上位階級カードって」

「古代人のカースト上位にいた人間のみが使えるカードのことです。『アナザーアース』内で指紋認証って技術に触れたことあります? ほら、そこの金属の部分に指を押し当てて指の模様を読み込ませると、下部のガラスにバーコードが表示されるようになってるんですよ」

「え、指紋認証って確か……登録されている模様が合わないと起動しないんじゃ……」

「そういうことです。残念ながら、上位階級カードはワタシたちにとってゴミでしかないんですよ。だから世の中にも出回らないので、存在自体を知らない人が多いんです」


 リリンは「えー!? うそぉ、これ全部使えないのぉ!? ちょっとあたしの分身、期待させんじゃないわよっ!」とリリン(泣)に怒りをぶつける。「そんなぁ、何億円にもなったのにぃ……高すぎて手が出なかった高級ブランドの『ドレスセット』を買えるのかと思っちゃいましたよぉ」とライアはその真紅の眼下を禍々しく光らせた。

 だが私は、何の感情も何の言葉も出てこない。

 恐ろしい予想に血の気が引く思いになりながら、内なる黒助ドラゴンに問いかけた。

 今回の戦いで、どれだけの『出費』があったのか、と。


「――しめて、八百三十二万円だ。昨日の喧嘩を止めるために使った【氷精】魔法の二十万円を合わせて引くと、残高は四千百七十二万円となる」


 それを聞いた私はぶっ倒れてしまった。「え? ミコナさん?」「あん? ちょっとミコナ、大丈夫なの?」「ミコナ先輩? どうしちゃったんですか?」と三人が心配そうに声をかけてくるが、それに反応する心の余裕が私にはなかった。


 ただただ私は思う。

 魔法を発動するために『アナザーアース』のお金を使わなくちゃいけないだなんて……何て酷い制約なのだろう、と。

今後何作か完結作品を投稿予定。奈坂秋吾ツイッター(https://twitter.com/nasaka_syugo2)


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