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玩具寵愛  作者: 海華
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やっと、やっと会えたのに。


しくしくと泣いていると、いつもの私のベッドに転がされる。

そして怒り狂ったご主人様が私の上に覆いかぶさってきた。


強い怒りを宿した目に間近で睨まれてひゅっと涙が引っ込む。


『なんでアイツの名前を呼ぶ!私の名前も呼んでくれないのに!』


怒鳴られて身が竦む。怖い。こんなに怒りを私にぶつけてくるご主人様は初めて見た。


『真珠は私の特別だ!なのに何故甘えない!頼らない!名前も呼ばないし喋らない!私の方が、君の傍にずっと居るのに…!』


動揺しているとまた頬が熱くなった。ポタリポタリと落ちてくる、涙。


『くそっ!』


ガンッと頭の横のベッドを殴られて飛び跳ねるとご主人様は身体を起こして乱暴に自分の涙を拭った。


ぱちぱちと目を瞬かせる。

私に落ちた涙はそのままで。



とても熱く感じた涙は、触れるともう冷たかった。


『どうすれば、真珠は私を見る。私を呼ぶ。君と恋人に…家族になれるっ』



そんなに求められているとは気づかなかったし、興味も無かったけど。

お世話になっている身だし、大の大人なのに涙まで零されると申し訳なく感じてしまう。



率直な感想を述べるなら。


「………ニコル?」


『っ!!』



絆された。

それしか無い。


『真珠っ!』


即座に抱きしめられて頬にまぶたに額に鼻に、顔中にキスをされて


当たり前のように唇にもキスをされて。


ちゅ、ちゅと数度触れ合っていると、唇の中に舌が入り込んできたーーーーーーーーー。



『愛してるよ真珠』


その言葉を聞いて私は目を見開いた。











『お父様は回りくどいのです。好きなら好きと、スパッと告白して外堀を埋めれば良いじゃないですか。外堀だけ埋めて落ちてくるのを待っていたくせの、中々落ちてこないのでキレて八つ当たりするなど愚の骨頂です』


『……ルピア、人の傷口を抉るのはやめなさい』


『今回の件で私がどれだけ骨を折ったか。真珠様を実際に目にしたマダム・オランジュは未だにランカとの交配を諦めておりませんよ』


『悪かったよ。私が全面的に悪かった』


ニコル様の膝の上で、青い服の女性…ルピアさんに淡々と怒られるニコル様をじっと見上げる。


ルピアさんはニコル様をお父様と呼ぶけれど彼と彼女は血の繋がりがない。歳もそんな変わらないらしい。


ルピアさんはニコルの最高傑作の奴隷だった。

と言ってもその優秀さを認めて買い戻し自分の養女にしたらしい。


『まさか私の愛がこれっぽっちも伝わってなかったとは』


『お父様のソレは人形を愛でているようにしか見えません』


その通りですルピアさん。

同意するように何度も頷くとニコル様は溜息をついてガックリと肩を落とした。


『……好きにしていいって言われてたし、ペットみたいな扱いだったから…』


『ペットなら私はきっちり調教するよ!?』


『そんなこと言われなきゃ知りませんよ』


甘やかしていたのは、好きになって欲しかったから。

奴隷女性を抱いていたのは妬いて欲しかったから。

シャインを甘やかしたら、私が少しくっついてきて喜んだのにシャインとくっつけようとしてきたからプッツン来たらしい。



ルピアさんの言う通り。

言われなきゃ知りませんて…。飼ってる猫が中々懐かないな程度に思われていると思っていた。





ニコル様の気持ちを知ったところで、何も私を取り巻く環境は変わらないけれど。

日本はもう無いし、日本人どころか東洋人も日本人と偽って奴隷として乱獲されてその数を多いに減らしたらしい。


『真珠、真珠は私の嫁にするんだからね!?』


『言えばいいってものでもありません』



でも、それでも。

健康と引き換えに家族も友人も何もかも失ったわけだけれど。



ニコル様が泣きながら本気で家族になりたいと言ってくれたから、少しだけ。ほんの少しだけ前を見て生きる気にはなった。




『ほら、真珠。真珠ももっと喋りなさい』


『……畳は土足厳禁ですよ』


『ええっ!?』


『本当ですかっ!?』


思い出を守って

日本と言うものを忘れないで。




私はこの世界で生きてみようと思う。




~完~



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― 新着の感想 ―
[一言] 現実になるかもしれませんね。
2021/11/07 07:48 退会済み
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