~緩やかな時~8.
ネタ紛失部分が終わらない……。
も少し続きます。
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パチパチパチッ
時折、外から聞こえる風の音と、焚き火のはぜる僅かな音がする。
それ以外は静寂に包まれた、穏やかとすら思える時間が過ぎていく。
前触れはなかった。
突然、彼は音もなく飛び起き、まるで見えているかの様に、マリエッタの背後から、彼女を羽交い締めにしたのだ。
同時に、
「お前は誰だ」
と、言う言葉も聞こえた。
そしてそのまま硬直する。自分が後ろから抱き締める形になっていた者は、明らかに自分より華奢で小さく、やわらかかったからだ。
そのまま、意識を失う前のことを徐々に思い出す。最後に見た顔と言えば……。
「マリエッタ、なのか……?」
ウィルのその問いかけに、彼女は答えた。
「んーっ、んんぅ」
……一瞬で動けない様に拘束されて、口も塞がれていたのだった。
「あっ、ごめん」
パッと拘束を解くと、マリエッタがぷはぁと息を吸った。
「ちょっと、ずいぶんご挨拶ねっ」
変な空気を吹き飛ばすように、わざとぷりぷり怒った風に言う。
「本当にごめん。ちょっと混乱していて……」
ウィルはおろおろして、先程までとは一転年相応な雰囲気になっていた。
そのまま後退りしようとした彼が、
「あ、痛うっ」
と頭を押さえた。
今度はマリエッタの方が慌てて、
「駄目よまだ動いちゃ!頭を打ってるのよ?」
と、抵抗がなくなった彼を、元の場所に横になるよう促す。
「ここは何にもないから、止血しかしてないの。目はごめん、視界を妨げないやり方はできなくてそんな感じに」
「ああ、うん。大丈夫。煙にやられて、目も霞んでたから」
横になっても頭の傷に障るのか、うつ伏せの体勢になって頭を上げて落ち着いたようだ。
「ウィル……、大きくなったね」