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君を失う日  作者: 白昼夢
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プロローグ

ちょっと切ない物語に挑戦したいと思い、書き始めました。

つたない部分が多いですが、ぜひ感想・ご指摘をいただけると嬉しいです。

 あの時の君の笑顔を、一生忘れることはないだろう。


 僕の問いかけに対して、君は事も無げに大きく頷いたね。まるでその問いかけがどれだけ残酷なものだったか、気づいていないように。


 けれど君は誰よりもその質問の意味を理解していた。そして君の決断がどれほど周りに影響を与えるのかも知っていたんだ。


 君はそのために生まれ、生き方を選び、その時を待っていたのだから。


 どうしてそんなに笑っていられるのか。どうしてそんなにも他人のことばかり考えられるのか。僕の頭では君のその思考を完全に理解することは出来なかったように思う。嘆き悲しむだけの僕とは違う。予定された運命なのだと諦める僕とは違う。


 君はその小さな身体にとてつもなく大きな覚悟と勇気を抱え込んでいた。


 君はどうしてこの決断をしたんだろう。僕が悪かったんだろうか。僕が君に外の世界を見せてやりたいと願ってしまったから。いいや、僕が君と出会ってしまったから。僕が――。


 けれど君はそうやって責める僕に言うんだろう。それこそ、予定された運命だったのだと。


 きっと君は最初に出会った時からこの運命を予期していた。いずれは離れ離れになることを知りながら、僕と同じ時を過ごした。

 僕は君をこんなに想っているのに。君をこんなにも失いたくないと思っているのに。僕が、それでも君の手を離してしまうことを誰よりも分かっていた。


 でもね。僕はやっぱりこんな運命を受け入れることなんて出来ないよ。


 ねぇ、君は僕と過ごして少しでも楽しかったかな。少しでも本心から笑えたかな。僕と出会えて良かったと思ってくれたかな。僕は君にとって大切な人になれたのかな。


 僕の名前を呼ぶ時の、甘い声が脳裏に響く。

 

 泣き出しそうな僕の目を見つめた、青く澄んだ瞳。


 森の中で輝く白い肌。


 全部、大切な思い出となっていく。


 君なら僕がこの運命を憎むことを知っていたはずだった。けれどその決意を変えなかった。それほどに君の力は絶大で、残酷で、人々の希望だったから。


 ねぇ、この手を伸ばしたら君は付いて来てくれるかな。まだ君のことを思い出にしたくないと言ったら、君は喜んでくれるのかな。こんな残酷な運命を変えたいと願ってくれるのかな。


 僕の表情から全てを悟ったように、目の前に立っていた君は困った顔になって視線を逸らした。



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