大切な存在⑦
「ここがふんばりどころでしょう。課題はいっぱいだけど、私たち、家族みんなで頑張りましょう」
「……うん」
母さんの優しさに、俺はいつも救われているような気持ちになる。
母さんがそばにいると心地いい。
「大丈夫。あなたは一人じゃないから」
「母さん、ありがとう」
その信頼を、決意を。
俺はただ、受け止めることにした。
先程の本を読み終えて、再開するのは別の本探し。
どの書棚を探してみようか。
たとえ、目当ての本が見つからなくてもいい。
図書室の出来事が、俺たちの過ごすひとときを彩ってくれるだろう。
席と書棚の間を何往復かした頃、入り口のドアが開いた。
城にいる人間は利用できる場所なので、誰かが来ることは珍しくない。
いつもの文官さんたちかと思い、視線をやると、入ってきたのはスタン様と護衛騎士さんたちだった。
「ライルくん、アイリス様、待たせてすまない。ようやく、調査内容が纏まった。急ですまないが、これからのことを相談したいと思っている」
そう前置きして、スタン様はとつとつと語る。
「ここは人目がある。別の場所に移動してもいいかい?」
「は、はい」
「分かりました」
スタン様たちの後について歩き、俺と母さんは別の部屋に入った。
「どうぞ、かけてくれ」
「はい」
「ありがとうございます」
促されて、俺と母さんは応接セットにスタン様と向かい合わせに座る。
「今後の予定だが、明日から本格的に森の調査を開始しようと思う」
改めて、表情を引き締めたスタン様は本題に入る。
森の調査。
でも、ダナー商会の者たちは森の奥にはいない。
そのことを伝えた方がいいかもしれないけれど、信憑性が欠けているし、証拠もない。
それに重要な情報を知っていることを不審に思われ、追求される可能性もある。
今は伝えない方がいいだろう。
そう結論づけていると、スタン様はさらに踏み込んだ話を始めた。
「魔物については以前、話したとおり、地元の人間から見ても、昔より増えているという話だった」
スタン様はわずかに眉を寄せ、表情を曇らせた。
「……だが、突然、魔物の数が急激に減ってきたという話がある。何故なのかは分からないのだがな」
その理由は分かっている。
俺が浄化魔法を使って、瘴気を一気に祓ったからだ。
魔物はこれ以上、増加しない。
あとは残った魔物をすべて倒せば、この地は安全になるはずだ。
「ただ、問題は森に出る魔物の強さだ」
俺が思案に暮れていると、スタン様は再度、異変について触れた。
「魔物の数が減っているとはいえ、森にはドラゴンを始め、手強い魔物が出る。慎重に事に当たるつもりだが、遭遇すれば、怪我人が多く出る可能性がある」
そこで、スタン様は不安を募らせるように言葉を止めた。




