スローライフを謳歌したい⑥
ドラコンが森に生息している影響で、蜂蜜を採取できない。
蜂蜜は貴重品だ。
値段が高騰したせいで、店が回らなくなったところが多い。
特に人気のスイーツ店は、数が用意できないから、軒並みお休みしている。
休業、材料不足、しばらく閉店。
様々な理由で、お店は開いていない。
そんな中でも、この屋台では、蜂蜜を使ったお菓子を売っている。
俺たちは早速、目星のお菓子をいくつか購入した。
今食べる分とルリア様へのお土産用だ。
「これ、おいしいな」
俺は近くのベンチにつくと、お菓子を頬張る。
しっとりとした味わいで、蜂蜜の優しい香りがふわりと広がった。
絶妙なハーモニーが積もるだけで心が踊る。
「ほんとね」
隣に座っている母さんも、蜂蜜を使ったお菓子を存分に堪能していた。
屋台には、貴重な蜂蜜を使ったお菓子が豊富に売られている。
だけど、肝心の蜂蜜の入手方法が欠落していた。
だから、つぶやかずにはいられなかった。
「蜂蜜は貴重品だよな。どうやって、蜂蜜を使ったお菓子を作ったんだろう」
「不思議ね」
母さんがそう口にして、俺の発言に同意をした直後だった。
「実はここだけの話。とある商会が、貴重な蜂蜜などを安価で売ってくれたんだよね」
お店の店員さんが優しい眼差しで、そう教えてくれた。
安価……?
それって、もしかしてダナー商会なんじゃ!
「蜂蜜は貴重品だからね。安価で手に入るなら、それに越したことはないから」
思案に暮れる間もなく、店員さんは再度、その話題について触れた。
話の内容から判断するに、先程の俺たちの会話を聞いていたのかもしれない。
「……あの、安価で売ってくれた商会の名前って」
「ん? もしかして君たちは、その商会について知りたいのかい……?」
「はい」
店員さんの言葉に、俺は迷わずうなずいた。
この屋台で出回っている蜂蜜の出どころを探れば、ダナー商会について何か分かるかもしれないと思ったからだ。
すると何かをひらめいたように、店員さんはわざとらしい笑みを浮かべる。
「それはね」
「それは……?」
俺はその先の言葉をじっと待った。
だけど、店員さんは生温かい笑みを浮かべて――。
「かわゆす…………」
手で口を押さえ、腰砕けになった。
「相変わらず、その素直な反応、かわゆす…………」
店員さんは嬉しさ全開の顔でガッツポーズしている。
「これは前代未聞のかわいさ~」
「……は?」
一瞬、沈黙が落ちた。
呆気に取られたのは、俺だけでなく、母さんも同じだった。
何故なら、その店員さんはその後も慌てふためいたり、わめき散らしたりと奇行を繰り返していたからだ。
だが、俺はその言動と纏う空気に、心当たりがあった。




