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新たな地へ②

「お土産を買ってきますよ」

「おみやげ……。すごくたのしみです」


俺の発言に、ルリア様の表情がぱあっと笑んだ。

思った以上に食いつかれてしまった。

俺は苦笑して、噛みしめるように声に出す。


「どんなお土産がいいですか?」

「えっと……ライルせんせいがえらんでくれたものなら、なんでもいいです」


お土産語りは深まる。

俺たちの他愛のない会話は、夕食が終わるまで続き、笑顔が絶えることはなかった。






その後、ルリア様のハープの先生の仕事を勤しみ、遠征の準備も整えてから……数日が経ち――。

スタン様たちとともに出発する日となった。


「うーん……」


重いまぶたをこじ開けて、ベッドから起き上がる。


「最初の難関は、魔力検査を受けずに、この街から出る方法だな」


寝ぼけ眼ながら、俺は今日の予定を思い返す。

スタン様が、俺たちに話してくれた魔力検査を受けずに、ネーア王国から出る方法。

それは、ダナー商会がこの国から脱出した手段を用いることだった。


「ダナー商会が利用していた隠し通路か」


俺は胸にわだかまる、複雑な感情に思いを巡らせる。

ダナー商会は、国の御用達商会だ。

それに、俺たち天使とも繋がりがある。

五年前、事実が公になる前に。

彼らは秘匿されていた、この隠し通路を利用して、ネーア王国から脱出を図ったのだろう。


「だけど、この移動手段を確立させれば、いつでも街を出入りすることができるはずだ」


複雑な心境になる一方で、そんな期待も抱く。


ダナー商会が利用していた隠し通路。


ミカエル兄様に知られている可能性が高い、危険な場所。

たとえ、そうであっても、重たく立ち込める曇り空は少なくとも、俺たちの内から晴れていくだろう。

魔力検査を受けずに、ネーア王国から出ることができる、確かな方法なのだから。


「俺たちは、戦闘には参加しないけれど、みんなが無事に戻れるように、サポートを徹底したいな……」


スタン様の護衛騎士たちや雇われた冒険者たちが、戦闘面を引き受けてくれる。

俺と母さんは基本、安全な場所で後方支援、みんなをサポートする演奏をしていくことになるのだが。

うーん。

支援魔法で、どんな効果を付与していくのかが悩みどころだ。

相手はダナー商会だ。

魔法で強化したり、『物理攻撃無効』や『魔法攻撃無効』、あとは『状態異常無効』の効果を付与したらいいかな。

いや……それは少しやりすぎかもしれない……。

そこまで整理して気づいた。


「そういえば、街の外に行くのは久しぶりだな」


その事実に、俺の心臓はどくんと大きく脈を打つ。

物心ついた頃から、俺は母さんとともに、ネーア王国の街々を転々としていた。

でも、こんなに長く、同じ街に滞在していたことはない。

それだけ、『魔力検査』という難関に、苦戦を強いられてしまったのかもしれない。

もしくは、この街に強い愛着を持ってしまったからなのだろう。

なにしろ、この街には、『グランジ公爵家』という、俺たちの帰る場所があるのだから。

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