エピローグ その1 百崎恋
※エピローグですが、まだまだ続きます。お付き合いください。
カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。
10万字を目指して(完結目指して)頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。
初めて出会った時から彼のことを自分の兄だと思ったことは1度もない。
我儘でどちらかと言えば引っ込み思案だった私。
両親の離婚と大好きだった実兄との別れを経て―――お母さんの再婚や転校が重なって、当時の私の心はぐちゃぐちゃになっていた。
そんな私に彼は家族となった最初の日から、まるでぽかぽかの太陽みたいに温かく手を差し伸べてくれた存在だった。
突然できた義妹の私に対して、実兄のように振る舞おうとするその態度は、ものすごくぎこちなく不器用だったけど、それでも一生懸命で不思議と真っ直ぐな気持ちが伝わってきた。
だから彼のことを好きになるのにそんなに時間はかからなかった。
中学生になった頃、彼の部屋で衝撃的なものを見つけてしまった。
それはベッドの下に隠すように置かれていたエッチなDVDの数々。
入手経路は直感だけど西野入宗助という悪友だと思う。パッケージにはエッチなポーズの女性が写っていて、そのどれもがギャルだった―――。
そう言えば本棚に並んでいる小説―――たしかラノベってやつのタイトルにもやたらとギャルという文字が躍っていた。
―――ギャルが好きなんだ‥‥‥
当時の私は率直にそう思った。
県内有数の進学校に入学した彼。
その背中を追いかけるため中学3年生になってから遅れを取り戻すよう勉強に取り組んだ私は、この春無事に彼と同じ高校に入学することができた。
家でも学校でも一緒にいたい。
片時も傍を離れたくない。
私の気持ちは体の成長とともに大きく育っていた。
それなのに、私は彼のことを兄だなんてこれっぽっちも思ってないのに―――彼は役柄を演じるように兄として振る舞う。
―――彼の気持ちが分からない
―――彼の心を独り占めしたい
せっかく同じ高校に通うことができたのに、「なんで自分の想いは届かないんだろうか」なんて思い悩む時間が段々と増えていった。
そんな時、学校で噂の高身長でイケメンな王子様―――武波先輩に声を掛けられた。
ギャルな見た目の私なら簡単にヤレると考えて声をかけてくる男子も多い。身構える私に、武波先輩は懐かしい笑顔をのぞかせた。
その瞬間、心のどこかにあった壊れた時計の秒針が動きだしたような感覚があって―――気づけば溢れ出る涙を実兄の手が優しく拭ってくれていた。
両親の離婚で実兄はお父さんと、私はお母さんと暮らすことになった。
それでも離婚してすぐの頃は、月に1度の頻度で元家族が集まって食事をしていた記憶がある。
だけどそれも段々と回数が減っていき、お母さんから再婚の話を聞く頃には別れたお父さんとお兄ちゃんとは疎遠になっていた。
とても悲しかった。会いたいと毎晩泣いていた。
どうにか会う方法を考えてはみたけど、住所は教えられてないし、スマホなんて持ってなかったから実兄と連絡を取る手段がなくて‥‥‥。
お母さんが再婚して新しい家族ができると元家族の話はタブーのような雰囲気になっていた。
小学生の私でもその辺の大人の事情は理解していたんだと思う。結局、お父さんとお兄ちゃんとは会えない状態が当たり前になっていった。
実兄と私は離婚後の身の上話を互いにして、「今までどうして会えなかったのか」その理由について理解できた。
実兄の状況も私と同じだったみたい。実のお父さんは武波って女の人と再婚して、苗字が変わったとのことだった。
両親が離婚した当時の詳しい事情を私は知らない。
だから学校で実兄と再会したことについて、今の家族には知らせるべきではない、と直感的に判断してしまった。特にお母さんには言っちゃダメな気がした。
実兄もお母さんの事は聞いてこなかったし、私も実のお父さんについて聞かなかった。大人の事情ってやつ? だから人前では実兄のことを「武波先輩」と呼ぶことにした。
時間を忘れて色々な話をした。お互いというより私がほとんど喋っていた感じ。それなのに優しい目でずっと私の話を聞いてくれた。
そんな中で実兄が、「困りごとか? 話してみろ」って、久しぶりの再会にも関わらず思い悩んでいる私の心の中を見透かすように優しく言葉をかけてくれた。
だから思い切って実兄に彼との関係を相談してみた。
実兄に相談してすこし経ったころ、彼の周りに動きがあった。
その日は中間テストの最終日だった。
正門のところで彼と見覚えのある女子が話をしている場面を目撃した―――。
ただならぬ雰囲気に思わず隠れて様子を窺った。
相手は彼と同じ中学の同級生で、今は別の高校に通っている清楚系の綺麗な女子。当時、彼と同じ図書委員で私がもっとも警戒していた人物だった。
兄のスマホを時々こっそり確認しているけど、連絡を取り合っている気配は微塵もなくて、進学先が違うからてっきり疎遠になっているものだと油断していた。
何を話しているのかは聞こえなかったけど、普通じゃない雰囲気。あれは男女の空気感。
そんなものがひしひしと伝わってきて、頭の中が真っ白になった。
私は早速実兄に連絡を取った。
そして人目のないところ―――カラオケ店の個室で相談に乗ってもらうことにした。
「―――恋もそういう年頃か‥‥‥お兄ちゃんはちょっと寂しいしぞ。で、本気なんだな? 血は繋がってないけど法律上は家族だぞ」
「そんなん関係ない!」
「そうか、わかった。正門で見掛けた相手の女子が付き合っている彼女だったとして‥‥‥こんなことを兄として言うのはなんなんだが、手っ取り早い方法がある」
「それ教えて!」
「いいか、よく聞け」
「―――うん」
「兄の助言としてはどうかと思うんだが‥‥‥寝取ってしまえ」
「ネトッテ‥‥‥?」
「ああ、寝取るんだ。既成事実! 手っ取り早いだろ」
実兄が口にした言葉を聞いた瞬間、顔から火が出た。ものすごく恥ずかしい。
実兄が妹に対してアドバイスする内容じゃないけど、それだけ私が本気だってことを理解してくれたんだと思う。
鈍感な彼の気持ちを振り向かせるためならなんだってする覚悟がある。
色仕掛けだって構わない。
私は実兄に背中を押されて、彼を『寝取る』と心に決めた。
読んで頂きありがとうございました。
平日は最低でも2話以上(毎日が理想(無理です))の更新ができるようにと考えています。
もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。




