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陰キャな僕は義妹を寝取ることに決めた。  作者: リンゴと蜂ミッツ
第1章 陰キャな兄とギャルな妹
24/53

第23話 噂ってものは

 カレー大好き『リンゴと蜂ミッツ』と申します。いつも読んでくださっている方は、大変ありがとうございます。

 10万字を目指して(完結目指して)頑張ります。モチベーション維持のために感想を頂けると大変嬉しいです。

 放課後になると、さすがに左ほほの痛みは消えていた。

 それでも昼休みまでは小さな痛みと違和感があり、だからあの時の加藤さんがどれだけ本気だったのかがわかる。


 水曜日の今日は図書委員の活動があった。

 だけど、その前にどうしても寄るところがあった。


「よ、来たか」


 パソコン部の部室を訪ねると、椅子に座った宗助が液晶モニターに向かってカチ、カチとクリック音を響かせながらマウスを操作していた。

 横目でちらりとこっちを見てからモニターに視線を戻す。


 纏う雰囲気や喋り方から付き合っている満月さんが指定したイケメンキャラをまだ続けているみたいだ。

 いまだに信じられないけど、この男は告白された側だったはず。それなのにいつのまにやら調教され、今では完全に立場が逆転していた。

 僕に将来彼女が出来たとして―――陰キャ仲間の宗助は僕の反面教師となるんだろう。


 狭い部室には相変わらず他の生徒の姿はない。

 なんで部活動として存続できているのかが不思議だった。


 その陰キャ仲間の宗助があまりにも真剣な様子だったので後ろに立ってモニターを覗いてみた。


「‥‥‥エロゲかよ」


「ある意味な」


 意味深な言い方の宗助が真剣にプレーしているのは、オーソドックスなADV(アドベンチャー)ゲームに見えた。画面の端にイケメン主人公の画像が表示されている。


 宗助は画面下のテキストをマウスのクリック連打で読み飛ばしていた。

 鬼クリックのおかげで場面はどんどん切り替わるんだけど‥‥‥登場するキャラはどいつもこいつもイケメンぞろいで。


「CGギャラリーと回想シーンを今日中にぜんぶ回収しろって」


「あぁ、満月さんの‥‥‥」


 哀愁漂う宗助の背中―――僕はこれ以上話しかけるのを止めた。


 と、ここで待ち人来たり。


「お待たせ。久しぶりね、百崎くん。ここ最近、プライベートが忙しくって」


 満月さんと話をしたのは新しい髪型で登校した日が最後で―――廊下ですれ違うことはあっても、みんながいる前で『寝取り計画』に関わる話なんて出来るわけがない。

 今日は彼氏の宗助にお願いして、なかなか会えない満月さんにわざわざ時間を作ってもらった。


「で、その後はどう? 妹さんとはヤレた?」


「‥‥‥‥‥‥」


「あら、言葉の(あや)よ」


 衣替えしたモデル体型の満月さんは、長袖の真っ白いブラウスに丈が長めのスカートを履いていて、花に例えるなら凛とした美しさを持つ白百合のようだった。

 でも、それはやっぱり見た目だけで‥‥‥真面目そうに見えたメンヘラ学級委員長の加藤さん然り、今日だけで女性不信に陥りそうだ。


 だから、さっそく本題に入ることにした。


「あんまり進展はないよ。でさ、これなんだけど」


 井上さんにパンケーキランチをご馳走になった日、僕についてきた妹が電車の中で見せたメモ紙を取り出して満月さんに手渡した。


「そう‥‥‥で、どうだった?」


 メモ紙を一瞥した満月さんは、整い過ぎた顔でこっちを見た。

 反応からとぼけるつもりはないようだ。

 

「満月さんが書いたものだよね。もしかして『寝取り計画』に関係が?」


「その通りよ。計画の第4段階―――名付けて『燃えよジェラシー大作戦』ってとこかしら」


 妹の嫉妬心を煽るって、少し前に満月さんが言っていたけど‥‥‥やっぱりそういうことだったのか。

 妹を巧みに誘導し、僕の人間関係を利用して焚きつけようとした―――。


 仮に僕と井上さんの関係に妹が嫉妬したとして、それで何かが変わるとも思えないんだけど‥‥‥満月さんが考えた作戦には大きな欠陥があった。


「満月さん、少し誤解があるようだけど‥‥‥僕と井上さんはそもそも妹が嫉妬するような関係じゃないんだ。たまたま学校の外で会って、その時には妹も一緒にいたんだ。今回のランチだって、井上さんがお礼したいってことで‥‥‥」


「ふっ、あなた本気で言ってるの? だとしたら―――わかってないのは百崎くんの方よ!」


 嘲るような笑みを浮かべた満月さんが、ピシャリと言ってこっちを指差した。

 そのまま話を続ける。


「百崎くんの反応から義妹はランチに同席したのね? 様子は普通だった?」


 たしかに妹の言動を思い返すとおかしいと感じる部分が多々あった。

 井上さんに対して僕たちが血の繋がらない兄妹だと告白もした。あれが嫉妬からくるものだったとしたら‥‥‥母さんの言葉を借りれば妹としての幼いヤキモチな訳で。

 でも本当にそれだけで僕の予定についてくるんだろうか? 考えが纏まらない。

 

「ジェラシーとかそう言うのじゃなくて‥‥‥」


「どうやら心当たりがありそうね。この作戦はある程度時間が経ってから効果が現れるわ。その時は遠慮しないでガブって食べちゃいなさい」


「ガブって、食べる‥‥‥」


 満月さんの瞳が妖しく光って見えた。

 彼女はどこまで本気で言っているんだろうか? 


「それはそうと、(うわさ)になっているわね」


「もしかして朝の件か? それなら俺も聞いたぞ」


 満月さんが唐突に話題を変えた。

 噂と聞いて宗助がマウス操作を止める。

 

 噂とは今朝起こった武波先輩と加藤さんの一件のことなんだろうけど、2人の反応からすでに学校中に広まっていると考えられた。


 武波先輩はこの学校の有名人で超モテる。そんな男子が朝っぱらから人前で女子生徒にビンタされたんだ。噂にならない訳がない。

 事情を知っている唯一のクラスメイトとして加藤さんのことが心配になった。


「実際に見ていた奴に聞いたんだが、チャラ男に言い寄られていた(れん)ちゃんを王子様が助けに入ったらしい。同時にモモッチのクラスの学級委員長が現れてそのチャラ男をビンタで退治したとかなんとか」


 兎角噂には尾ひれがつく。今回はそれ以上、虚報と言えた。

 一見して痴情のもつれの場面に、第3者の僕が突然現れて平手打ちの2発目をもらう。

 その後、平手打ちされた僕が平手打ちした相手に肩を貸してその場から退場すれば、遠巻きにしていた生徒たちはさぞ混乱しただろう。


 どこかの段階で真実が大きく捻じ曲げられていた。当事者にとっては都合がいい。

 大粒の涙を見せた加藤さんの顔を思い出して、ほっと胸を撫で下ろした。


「チャラ男って誰のことだったのかしら?」


 でもここに真実を見極める女子がいた。

 満月さんは意味深な笑みを浮かべこっちを見てきた。


「さあ‥‥‥」


 誤魔化すように言った僕の右手は自然と左頬を撫でていた。


「学級委員長も参戦ね」


 そう呟いた満月さん。

 この後すぐにその意味を知ることになる。

 読んで頂きありがとうございました。

 平日は最低でも2話以上(毎日が理想(無理です))の更新ができるようにと考えています。

 もしよかったらリンゴと蜂ミッツを推してくださいね。ブクマ、評価をよろしくお願いします。


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